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2023年ベストアルバム10選+α

毎年恒例のベストアルバム(AOTY = Album Of The Year)ですが、最初に断っておくと、今回はアルバムだけでなく、EPやシングルも含めて10枚選んでいます。厳密にはベストアルバムとは言えないのですが、アルバムを通して聴く機会が激減しているので、2023年にリリースされた10作品と、特別な思い入れのある2作品を加えた合計12作品(12曲)をご紹介します。

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(01)Nacho Casado - El Sonido Vibrante de Nacho Casado
スペインの男性SSW、ナチョ・カサドの過去3枚のアルバム+未発表曲をコンパイルした日本独自企画CD。タイトルは『ナチョ・カサドの鮮やかなサウンドにようこそ!』です。ポップス、ジャズ、ソウル、ブラジル音楽がミックスされた多彩な音楽性が楽しめる。

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(02)Laufey - Bewitched
米国を拠点に活動するレイヴェイ。去年出たデビューアルバムもベストアルバムに選びました。新作からの先行シングル「From The Start」は、爽やかなボサノヴァのリズムに、彼女の存在感のあるヴォイスが映える絶対の名曲。個人的には2023年夏のテーマソングで、繰り返し聴きました。

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(03)Giorgio Tuma - We Love Gilberto
イタリアの男性SSW、ジョルジオ・トゥマ。もう新作のリリースはないのかもしれない…と思っていた矢先の7年ぶりのリリース。しかも、アストラッド・ジルベルトやジョアン・ジルベルト、そしてブラジル音楽への愛情に満ちた4曲。全曲最高だった。アナログEPも買いました。

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(04)Wax Machine - The Sky Unfurls, The Dance Goes On
ブラジル出身のLau Ro率いる英国のバンド、ワックス・マシン。去年のベストアルバムにも彼らの前作を挙げましたが、この新作アルバムも素晴らしかった。ソフトロック〜サイケ~フォークが混在した内省的な作風。このMVも絶妙にオリエンタルで素敵です。

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(05)John Roseboro - Four Cantos
米国のポストボサノヴァの旗手、ジョン・ローズボロの新作EP。女性歌手メイ・セモネスとのコラボ曲が2曲収められていて、どちらも甘美で良かったです。二人は前のシングル「三月の水」でも共作していて、2024年はこの二人でフルアルバムを作って欲しいです。

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(06)Mitch & Mitch con il loro Gruppo Etereofonico - Una voce allo specchio
ポーランドの5人組、ミッチ&ミッチ。去年出たエンニオ・モリコーネのカヴァー集『Amore assoluto per Ennio』からのシングルカットです。原曲が発表されたのが1969年で、それから50年以上経ちますが、このファンタスティックなメロディはいつまでも色褪せないのです。

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(07)Hohnen Ford - Infinity
英国の女性SSW、ホーネン・フォード。ピアノをバックに弾き語るスタイル。この曲は2022年にリリースしたデビュー曲なのですが、この曲を含むEPが今年リリースされました。こんなに甘美で胸が切なくなるような名曲ってなかなかないですよ。

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(08)Sven Wunder - Late Night
スウェーデンの奇才、スヴェン・ワンダー。ジャズやソウル/ファンク、サントラやライブラリーの影響を受けつつ、今日的なサウンドを構築している。アルバムの前半と後半ではテイストが全く違っていて、前半のクールなグルーヴ感、後半の甘美で静かな曲への流れも良かった。

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(09)Lizzie Berchie - Am I An Adult Yet?
英国で活動するガーナ系女性SSW、リジー・ベルチエ。このEPに収められている「We Found Love」が素晴らしかった。柔らかくメロウなボッサフィーリングと淡く高揚するストリングス&ヴォーカル。まるでミニー・リパートンやロータリー・コネクションを思わせる極上の音楽です。

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(10)Minhwi Lee - Hometown to Come
最後はこちら。韓国の女性SSW、イ・ミンフィ(이민휘)の7年ぶりの新作アルバムです。ジャンルとしてはフォークにカテゴライズされるのでしょうが、甘く切ないメロディと存在感のあるヴォーカル、ジャズやソウルの影響も感じられる多様なアレンジで飽きることがない。傑作。

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ここからは特別編。今年も何枚か日本盤CDのライナーノーツを書く機会をいただきました。以下に挙げた2枚はアーティストのことを調べつつ繰り返し聴いて、とても思い入れのある作品になりました。

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(11)Magali Datzira - Des De La Cuina
Spotifyで僕が今年いちばん聴いたアルバムはこれでした。スペインの女性SSW、マガリ・ダッチラのソロデビューアルバム。なかでもこのタイトル曲が秀逸で、ナチュラルなサウンドと少し切ないメロディが印象的な曲です。特集ページも書きました。

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(12)Bruno Major - Columbo
思い起こせば、2021年、書籍『クワイエット・コーナー 2 ~ 日常に寄り添う音楽集』で、ブルーノ・メジャーに関する700文字ほどの文章を書いて、それ以降も彼の動向に注目していました。新作ではこれまでのモダンなR&Bサウンドはやや息を潜め、レイドバックしたサウンドに回帰している。

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以上、2023年のベストアルバムでした。僕が好きな音楽家は20歳の頃から変わってなくて、バート・バカラック、エンニオ・モリコーネ、ミシェル・ルグランと言い続けている。そして今年ついにバート・バカラックが亡くなって、3人全員が天国へと旅立ってしまった(涙)。でも、彼らが作った音楽の種は次の世代に受け継がれていて、上で挙げた楽曲にも彼らの音楽のエッセンスを感じることができる。これからも彼らの音楽を聴いていきたいと思います。

2023年12月28日 ワタナベトオル(pwm)

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2023年リリースで好きだった曲はまだまだあります。おまけで3曲ほどご紹介しています。

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