見出し画像

愛しの黒猫

ウチの黒猫(雑種・♂・2歳)は、究極のツンデレである。

ウチの子になって3度目の夏を迎えるが、普段は抱っこしようとしても、さささっとすばしっこく逃げ惑う。
飼い主と言えども、腕の中に抱くことが難しい子なのだ。

私のそばを通り過ぎる時に背中をなでようものなら、私の手になるべく触れないように、背中を凹ませて、すーっと通り過ぎる。

唯一、寝ている時だけは、無防備。
そーっと近づき、ゆっくりと耳元、顔の横、顎下、と撫で、距離感を伺う飼い主。
気分が乗る時は、お腹を丸出しにして、逃げずに気持ちよさそうにマッサージを受け入れる。

お腹が空けば、餌入れに残ったカリカリを黙って食べる。
白猫と違って「遊んで!」のおねだりもほとんどしない、手のかからない黒猫。

そんな彼が、唯一、自分から甘えてくる瞬間がある。
それが、私の膝に乗りたい時。

私がいつものように椅子に座り、パソコンに向かって仕事をしていると。
私の足元にちょこんと座り、斜め45度の角度から私を見上げてくる。

にゃー・・・ん♡

自分が一番かわいく見える角度を熟知しているかのように、ちょっと首をかしげ、じっと私に向けられるつぶらな瞳。
そこに被せてくる少し掠れ気味のボーイソプラノが、飼い主を完全にロックオン〜♪

ああ、そうなのね。
お膝の上に乗りたいのね😚

鼻の下をびろーんと極限まで伸ばした飼い主は、椅子の上でいそいそとあぐらをかき、黒猫を迎える準備を万全に整える。

そしてここからがツンデレの本領発揮。

さぁ、おいで、どこからでも!と、両手を広げて待つ飼い主を弄ぶように、つぶらな瞳をプイ、と逸らして横を向く黒猫。

そして「別に膝に乗りたくなんか、ないんですけどね」と言うように、一旦私の足元から離れる。

ふふふ。そうだよね。
わかっているよ。
一度目は退くんだよね。
いいよいいよ、君の好きなタイミングで来たらいいよ。

いつもの儀式に心の中でニヤけつつ、ああ、今日はどのタイミングでくるかなー♡と、再びパソコンに向かって作業を再開したその時。

どすん、と心地よい重みが、足の上に着地する。
「なでれ」と言わんばかりにべったりと太ももの上にお腹をつけて、目を細め、背中を弓なりに反らせる黒猫。

もうここからは、アレですよ。
付き合いたての高校生カップルよろしく、人目を憚ることなく(というか、誰もいないけど)、イチャイチャする私たち。

そして黒猫は、ここでも期待を裏切らない、絶妙なツンデレぶりを発揮する。

一通り満足すると(というか、飼い主の撫で方が、だんだんエスカレートして荒くなるせいもきっとある)、プイっ、とまた私の膝から降りてしまう。

あーん。もうちょっといてくれてもいいのにー♡

そんな飼い主の思いもどこ吹く風。
黒猫は私から少し離れた床の上にどすん、と身体を横たえると、前足の上にちょこん、と顎をのせ、気持ちよさそうに目をつぶる。

男ってこれだからもう・・・。

欲求不満の飼い主は、黒猫の側に擦り寄り、彼の体毛に顔をうずめ、芳しい獣臭を胸いっぱいに吸い込む。

しつこい女はイヤなんだよね。

ちょっと迷惑そうに、上目遣いで見上げてくる黒猫には、そんなセリフがよく似合う。

多分、猫好きな人は多かれ少なかれ、Mっ気があるのかもしれない。
(あくまで個人の感想です)

そんなことを思いながら、満月の夜は静かに更けてゆく。

この記事が参加している募集

#猫のいるしあわせ

22,116件

いつも読んでくださりありがとうございますm(_ _)m あなたからのサポートが、日々の励みになっています。 もし私にも何かサポートできることがあれば、いつでもメッセージをください♪