マンチェスターシティvsレアル・マドリード 1stleg

レアル・マドリーは大方予想通りのメンツ。怪我のアザールの代役として左サイドはヴィニシウスが務め、中盤はクロースを外してこの3枚を選んだ。一方のマンチェスターシティは、フェルナンジーニョを外して、オタメンディ・ラポルトの2CBを起用し、中盤は2ボランチを採用した。また、トップはアグエロではなく、ジェズスを選んだ。

前半の両チームの狙い

レアル・マドリー <前線からの激しいプレスと左右非対称の攻撃> 
前半のレアルの守備は、ベンゼマ・モドリッチ(バルベルデ)が2CB、イスコ・バルベルデ(モドリッチ)が2ボランチ、カルバハルが左SB、ヴィニシウスが右SB、カゼミロがトップ下を担当して、最終ラインでの数的同数のリスクをいとわない激しいプレスを行った。これによって、前半の多くの時間帯を敵陣でプレーすることに成功しシティの安定したボール保持を阻害することになった。

攻撃に関しては、左右で非対称の攻撃がみられた。
右サイドに関しては、モドリッチがビルドアップの中心となって、前進を行うパターンが主であった。具体的には、モドリッチがヴァラン・カルバハル間に落ち、それに応じてベンゼマかイスコが頂点に入ってくる形で◇形成し前進を行うパターンと、モドリッチがライン間(MF・DF間)で待って頂点となることで◇形成し前進を狙うパターンがみられた。また、カルバハル、イスコが裏を狙う形も何度かみられた。
左サイドは、サイドレーンにヴィニシウス、内側に偽SB化したメンディ、ハーフスペース・ライン間(MF・DF間)にバルベルデの配置がある程度決まっており、内側でもボールが持てプレス耐性が高いメンディが起点となってヴィニシウスを生かす形がうまく作れていた。またカウンターで、1回ベンゼマがサイドに流れて、ヴィニシウスが内側入ってく形がみられた(31分)。
その中で前半の決定機となった形(29分)は、リスタートの形から右サイドでモドリッチ→イスコ→カゼミロでレイオフの形を作って左サイドへ展開し、内側とっていたヴィニシウスのスルーから大外にいたメンディのクロスに、ベンゼマが中で合わせた形であった。押し込んでいた割には、決定機はこの1回であり崩しの局面でもう一つ踏み込めなかったといえる。

マンチェスター・シティ <442でのプレスの弱点と二人の偽CFの狙い>
前半スタート時の配置は、すでに示した通りだが、2分にB.シウバとジェズスの位置を変更した。また、33分にラポルトが負傷してフェルナンジーニョが入った。
そのうえでシティの守備は、デブライネとB.シウバの2枚で敵の2CBとアンカーを管理して、ギュンドアンとロドリは敵IHをつかむ形で守備を行っていた。しかし、クルトワから一発でカゼミロに通されて展開を許すシーンやSB経由で外からカゼミロに通されるシーンも多くみられ、その使われたカゼミロからサイド、裏へのボールを展開されていた。ただ、左サイドに入ったジェズスは、前半で2回ラモスからの長めの横パスを狙って奪うとこまでいっており、守備に関して非常によい働きをしていた。

シティの攻撃の狙いは、B.シウバとデブライネが、カゼミロ脇のスペースを使ってビルドアップとチャンスメイクを行うことだったと思う。実際、8分と15分にそのスペースで、B.シウバとデブルイネのそれぞれが受けるシーンがみられたが、どちらもラモスが出てきて対応している。ただ、このラモスをつり出すとこまでが狙いであったと思う。その後、16分、20分にも同じ形がみられ、20分のシーンでは前進とチャンスメイクの両方でカゼミロ脇のスペースを使ったうえで、最終的にはデブライネがチャンネル裏を取ったジェズスにスルーパスを送っており決定機を迎えている。36分にも同じ形で、B.シウバがシュートまでいく形を見せており、レアルの激しいプレスにボール保持率こそ47%で下回ったが、2回も狙った形で決定機を生みだしていた。また、攻撃時はジェズスがCFの位置まで入ってきて、メンディが高い位置で幅とっていた。そして、アディショナルタイムには、コーナーキックのこぼれからジェズスがシュートを放ち、決定機を迎えている。

前半においては、ボール保持率こそプレスで優位に立ったレアルが上回ったものの、決定機の数ではシティが狙い通りの形でチャンスを作り、上回る展開となった。

変化した後半の展開

レアル <システム変更の影響と得点後の守備の変化>
レアルは、後半開始とともにシステムを442に変更した。これによって、カゼミロ・モドリッチで2ボランチを形成し、右にイスコ、左にヴィニシウス、2トップをベンゼマ・バルベルデが務めることになった。これは、前半に多く使われたカゼミロ脇スペースに対して、モドリッチを並べることで解決しようとしたのだと思う。実際しっかり構えた時には、前半ほどライン間をとられてからシュートまでいかれるシーンは減り、53分にはモドリッチがライン間のデブルイネをにらみながら、ウォーカー→ロドリの横パスをカットしてヴィニシウスのカウンターに繋げている。ただし、このシステム変更でカゼミロが高い位置のライン間をとって、攻撃に参加するようになったので、シティのカウンターの形が増えたことも現象としてみられた。そんな中で、58分にロドリ→オタメンディのバックパスに対してプレススイッチを入れたベンゼマに合わせて、モドリッチ、ヴィニシウス、イスコが連動して、オタメンディのミスを誘発し、カウンターからのイスコのゴールに繋げることになる。得点後のレアルは、ゾーンを下げて守備を行いながら、バルベルデを中心にバックパスで狙えるとこはプレススイッチを入れてカウンターを狙う展開に変更した。

またシステム変更によって、モドリッチが左のボランチになったことで特に右サイドの攻撃が変化した。前半はモドリッチを中心に攻撃を組み立てていたが、後半はイスコかカゼミロがハーフスペースで頂点となると同時に、バルベルデ、カルバハルはサイドレーンで縦関係を作り、追い越す動きによってクロスまでいくシーンが増えてきた(65分、70分)。

シティ<引かれた相手に対する対応策>
先制点を許したシティであったが、それまではカウンターを起点に49分に決定機を迎えていると同時に、レアルのシステム変更もあってかロドリ、ギュンドアンがライン間で受けれる回数が増えて、ボールを持てる展開となっていく。ただ、失点後引いてきた相手に対して決定機をなかなか作れず、手詰まり感が出てきた時にスターリングを投入する(73分)。これで、左にスターリング、中央にジェズスが入ってく形に変更した。これによって、左サイドでは幅とったメンディからの低くて速いクロスに加えて、スターリングが大外取ってからのドリブル突破のパターンも増えて、レアルは対応が難しくなった。その後77分に、間で受けたギュンドアンから裏に走ったスターリングへパスが通り、折り返しに反応したデブライネが深い位置までドリブルで運び、切り返しからのクロスにジェズスがヘディングで合わせて同点に追いつく。さらに、81分にはロドリ→MF・DF間で受けたデブライネへパスが通り、左サイドのスターリングへ展開して、ドリブル突破を行った結果PKを誘発した。これは、まさに狙い通りの形であったといえる。このPKを沈めたシティが逆転に成功しゲームをものにすることになる。

総括

試合前半に関しては、レアルの前線からの守備によってシティ陣内でのプレーが多くみられたものの、チームの攻撃の狙いとしてはシティの方が明確に見られ決定機も多い結果となった。後半に関しては、レアルもシステム変更で対応策をとり、先制点を奪う理想的な展開となったが、スターリングの投入によってシティの左サイドの攻撃を活性化させ、2点を奪ったグアルディオラの采配は素晴らしいといえるのではないだろうか。
2ndlegもレアルは、前線からのプレスを行うと考えられるのでそれに対するシティの振る舞い(カゼミロ脇のスペースの狙い等)も注目されるが、それと同時にスタートからスターリングが出てきた時のレアルの右サイドの守備対応も勝負の鍵を握る展開となるだろう。


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