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9 育児に参加しない

  おむつ替えの時、赤ちゃんがうんちをした時は当然のように妻を呼ぶ。そういう父親は意外と多いのではないでしょうか。しかしすべてのお母さんは最初からおむつ替えのプロではありません。ほかに誰もしてくれないから、どんどん経験を積んでいるだけなのです。寝かしつけも離乳食も子どもの看病も同じです。試行錯誤し、ネットや育児書などから様々な情報を収集し、眠くても腰が痛くても根気よく赤ちゃんのお世話をしている、その結果赤ちゃんとの信頼関係ができていくのです。


モラルハラスメントは妻に頼った先が普通とは違う

 元夫は努力もしないで「やっぱりママじゃないとだめだな」と簡単にバトンタッチしました。
「赤ちゃんはママが好きなんだって!」
を口実に遊び相手もしませんし、かといって家事もしません。ここまではよくある夫婦の風景かもしれません。(ドキッとした方、普通の範疇とはいえ、それではいけませんよ)モラハラ夫は、妻に頼ったその先の行動が、おそらく普通の人とは違います(ここでいう普通とは、モラハラしない人のことです)。毎日毎日、家事も育児もすべて妻に丸投げしているのに、

「どんなに呼んでも娘ちゃんは俺の抱っこを嫌がる」

と私に嫉妬していました。それは当たり前です。遊んでもくれない、面倒見てもくれない人ににわざわざこどもは寄っていきません。モラ夫は日々の態度を改めるどころか、娘が大きくなるにつれ、お菓子や炭酸ジュースで気を引くようになります。離婚した時もお菓子で子どもを釣ろうとしたのには心底呆れました。

おむつ替え

 娘が赤ちゃんの頃、ウンチをした時は、元夫は当然のように私を呼びました。誰だってウンチの処理は嫌なものです。料理中でもお構いなしです。

モラ夫「ママ!うんちしてんけど」
「悪いけど料理中。手が離せないからお願い」(二人の子なのになぜ私がお願いしないといけない??)
モラ夫「ウンチやから遠慮しときます!」
と平然と言うのです。言い合いをしている余裕はありません。一刻も早くおむつを替えてあげないと赤ちゃんがかわいそうです。赤ちゃんのお世話は最優先です。

普通の夫なら、ここで「ありがとう」と言うでしょう。しかしモラ夫は、遠慮したにも関わらず私がおむつを替えている私に横から指示を出します

モラ夫「ほら、そこ、まだウンチついてる」(眉間に皺をよせて言う)
「・・・わかってる」
モラ夫「わかってないやん!ほら!ひと拭きしたらもうおしりふき新しいのもう一枚出して」
「え?まだ隅の方しか使ってないよ。折りたたみながら使えば、ほらこの程度なら3枚もあればきれいにできるよ。大丈夫よ」
モラ夫「は?そんな汚いおしりふきで拭いて、かわいそうやろ。おかしいで。」
(言い返すのめんどくさ)「あ、そうやね。かわいそうやね。わかった」

 そんなモラ夫でも1か月に一回くらいはウンチのおむつを替える時があります。しかし慣れないため、恐ろしいくらいたくさんのおしりふきを消費します。10枚以上使います。たまにしか替えないから下手なのです。にもかかわらず、私が替えるときは必ず口出しします。おしりふきをふんだんに使わないと「汚い」と文句を言います。

 抱っこもお風呂も、自分は関わらずにやり方をじっと監視していました。そしてモラ夫のやり方と違えばすぐ文句を言いました。次第に、夫の前での育児は緊張するようになりました。この時は文句だけでしたが、数年後に息子が生まれた時は、モラ夫は抱っこをするタイミングや手をつないだり、離したり(小さい子の手を離すなんてありえませえんが)するタイミングまですべて指示しました。一貫性がないので今も意味不明です。

夫のことは感謝して褒める

 たまに手伝ってくれた時には(手伝う、というのもおかしいですが)感謝を表現し、夫の手先の器用さを褒めました。そうすれば嫌な気分にはならないし徐々に育児参加するようになるかもしれない、と期待もありました。夫の教育は妻の務めでもあると信じていたのです。  
 同時に、子どもが生まれても変わらず遊びに行き、家事育児はせず、時々不機嫌になる夫にいら立ちもありました。なぜ私だけが努力しないといけないのでしょう?私だって体はキツイです。夫ばかり不機嫌になることもズルいと思いました。


不機嫌になることの罪

 結婚生活が長くなれば、あ、機嫌が悪いなという空気はすぐに察知します。そしてモラ夫は拗ねてまともな会話もできなくなります。そうなると家にいるのは地獄です。不機嫌な人がいても、家事育児はなくなりません。モラ夫の機嫌が直るまでそっとしておく間ずっと、空気は重く、とにかく楽しくありません。物音を立てないように、子どもが騒ぎすぎて刺激しないように、細心の注意を払って生活します。こちらができるだけ気持ちを乱されないようにしていても、やっぱり気になるし悲しいし、何も手に付かなくなる時だってあります。

 その不機嫌な空気が去るまでになぜ私だけが気分を振り回され、我慢したり努力しないといけないのでしょう。そしてだんだん「え、今の行動がまずかったのかな」「私なにか気に障るようなことしたのかな」と理由探しをするようになっていきました。機嫌が直ったとき、「どうして急に不機嫌になったの」とか「私何か気に障ることしたかな」と聞けば、たちまちまた不機嫌になり「わからん」「知らん」「不機嫌になんかしてない!」と怒り出すので、聞くこともできません。新婚当初は、「どうして」「なにかあった?」と聞いては一方的に口撃(言葉で攻撃すること)されたので、これらの質問はタブーになりました。

 夫が不機嫌になる頻度はどんどん増えていきました。はじめはひと月に一度くらいだったと思います。それが気づいたら2週間に一度、結婚10年目にはたまに機嫌がいい。離婚寸前には、人といる時だけ機嫌がいい、という感じだったと思います。この頃は、夫の不機嫌以外は問題もなく、かわいい娘もいて、生活の大部分は楽しいものでした。

間違った対策 不機嫌の理由探し

 対策として、徐々に夫への期待のハードルを下げていきました。夫に期待しなければいら立ちもなくなる、元気でいてくれるだけで満足と自分に言い聞かせるようになりました。友人の前では、「夫は生きて健康なだけで価値がある」と言っていました。そう思い続けることが、うまく生きていく秘訣だったのです。夫の不機嫌は気にしないか、自分の中だけで処理するかしかありません。

 不機嫌に理由などなく、単なるモラ夫の気分です。そのことを知らなかった私は、離婚する直前までずっと、モラ夫の不機嫌の理由探しをしては、自分の行動を思い返し、どこが間違っていたのかを探し続けました。そして次第に病んでいきます。

 夫への期待値を下げ、不機嫌は追及せず自分の中で消化する。私に悪いところがあればそれを直して、不機嫌発動を防ぐ。これらの対策は、心に負担をかけ続けることになってしまい、結果的には間違っていました。そのことに気が付いたのは、離婚する直前です。ずっと辛かったことに、ふと気づくことができたのです。そして、不機嫌の度に元夫を観察し、本当に理由などなく発動するのだなという風に納得していきました。自分に悪いところはない、と思うことができて、本当に良かったです。かといって離婚を撤回する気にはますますなれませんでしたが。

 ここまで読んで、パートナーの行動に心当たりがある方、絶対に理由探しはしないでください。不機嫌の理由は最初からありません。「なぜ不機嫌なの」と聞いて、万が一答えが聞けたとしてもそれは「お前にイラつく」「ずっと嫌」「さあ、自分で考えたら」とあなたを攻撃し、自責の念を持つように仕向ける言葉ばかりです。

次回に続きます。

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