[神経内科] 多発性硬化症 MS

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[1] 多発性硬化症の概念

Multiple Sclerosis; MSと略す。
時間的空間的多発がキーワード。
好発:15〜50歳の女性、高緯度地域(なぜか)

多彩な神経症状が寛解・再発を繰り返す = 時間的多発。
再発するたびに徐々に障害が重くなっていく。
中枢神経系の白質に脱髄巣が多発する = 空間的多発。
中枢神経系はやられるが、末梢神経系は正常。
高熱の影響(暑い天候、熱い風呂、発熱)によって症状と徴候が一時的に増悪することがある = Uhthoff現象。

[2] 症状

初発症状
   ・視力低下
   ・両眼性MLF(内側縦束)症候群
         内転障害があるにもかかわらず輻輳(より目)ができる不思議な病態
   ・対麻痺
   ・膀胱直腸障害
   ・多彩なしびれ(EGPAも思い出す)
   ・複視など

小脳症状
Charcot三徴
   ・断綴言語(とぎれとぎれ、話し始めが大きいなど)
   ・眼振
   ・企図振戦(指鼻指試験で手を伸ばしきったところで検出力が高い)

脊髄症状
   ・三叉神経痛
   ・Lhermitte徴候(頸部前屈で背部へ電撃痛が生じる)
   ・錐体路障害(場合によっては対麻痺)
   ・Brown-Sequard症候群 (脊髄半裁症候群とも)
         脊髄の半分のみ障害されるパターン
         → 障害部位と同側の錐体路障害と深部かく障害
         → 障害部位の対側の温痛覚障害

精神症状
   ・多幸感
   ・抑うつ
   ・無関心、判断力の欠如

[3] 診断

基本的には臨床症状とMRIで診断する。
T1WIでlow、T2WIでhighの散在性の脱髄巣が見られる。
空間的多発の画像が必要であり、1スライスのみでは診断とならない。
時間的多発のエピソードを問診で聞き出す必要がある。

画像1

画像2

▲ Fig.1 医師国家試験 108I-52より抜粋

[4] 鑑別疾患と検査

以下の二つは必ず鑑別する。
・clinically isolated syndrome
      MSに典型的な臨床症状が1回のみ認められる場合
・radiologically isolated syndrome
      臨床症状がない患者でMSに典型的なMRI所見が偶然認められた場合

MSの診断には時間的かつ空間的に分離した複数の中枢神経系病変が必要であることを用いて除外する。clinically isolated syndromeの患者は最終的にMSを発症することがあり、時間的に多発する前の初発症状で受診しただけの場合がある。

また、SLEやライム病がMSに類似することがあり、血液検査などで除外が必要。
視神経脊髄炎(NMO)や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との鑑別を要する場合もある。

髄液検査
   初圧、細胞数と細胞分画、タンパク質、糖、IgGを検査する
   教科書的には以下の所見が得られる
   ・タンパク細胞解離(+)
         細胞数は正常値なのにタンパク数が多い状態
   ・ミエリン塩基性タンパク(+)
   ・電気泳動におけるオリゴクローナルIgGバンド(+)

[5] 治療

急性増悪期と再発予防で治療が異なる。
急性増悪期には速やかにステロイドパルスを行う。
再発予防・進行予防にはIFN-β投与を行い、難治例には免疫抑制薬を投与することがある。

ステロイドパルスの例
mPSL   500~1000mg   q24hr   3~5日間 div

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