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0000 はじめに

聖地巡礼とは時空を超えて映画作品と一体化する行為である。

『駅馬車』『荒野の決闘』のモニュメントバレー、『王女メディア』のカッパドキア、『未知との遭遇』のデビルズタワー、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のマンハッタン橋、『ミッション』のイグアス滝、『ラスト・エンペラー』の紫禁城、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のペトラ、『ビフォア・ザ・レイン』のオフリド湖畔に佇む聖ヨハネ・カネヨ教会…挙げていたら際限が無いのですが、中学生の頃、映画なるものにめぐり逢い、いつしか作品本篇に登場した風景の虜となり、いつか自分も映画に出てきた場面を目の当たりにしたいなぁと、ほのかに考えていました。

モニュメントバレー ©2008 プッチー・ミンミン
カッパドキア ©1999 プッチー・ミンミン
デビルズタワー ©2007 プッチー・ミンミン
マンハッタン橋 ©2009 プッチー・ミンミン
イグアス滝 ©1994 プッチー・ミンミン
紫禁城 ©1999 プッチー・ミンミン
ペトラ ©1999 プッチー・ミンミン
聖ヨハネ・カネヨ教会 ©2004 プッチー・ミンミン

初めての海外旅行が1991年8月のソ連(←という国を知ってますか?)で見事にクーデターに遭遇してしまい、その後の人生が一変します。「行けるうちに行けるだけ行っておけ!」「迷わず進め!」の心意気で色んな映画のロケ地に出向くようになりました。作品の監督や出演者たちが立っていた同じ場所に自分自身が降り立つ感動は一言では言い表せません。フィラデルフィア美術館のロッキーステップを駆け上がってスタローンのようにガッツポーズ。パリの路地をジャン=ポール・ベルモンドのようによろよろふらつきながらぶっ倒れる。サハラ砂漠でマーク・ハミルのようにライトセーバー(のおもちゃ)を振り回す。映画本篇のアングルと同じフレームで自分が写真に収まると時空を超えて自身が映画作品の一部になれます。

ロッキーステップ ©2015 プッチー・ミンミン
パリの路地 ©2019 プッチー・ミンミン
サハラ砂漠(トズール) ©2018 プッチー・ミンミン

各地で聖地巡礼していると、別々の作品でロケ地が被ることにより「映画によくでる〇〇」が判ってきます。映画の舞台はやはり都会が多く、それもニューヨーク、ロンドン、パリが際立って多く、そうなると「映画によくでる川」は(ハドソン川では無くて)イースト・リバーとテムズ川とセーヌ川となり、更に「映画によくでる橋」はそれぞれの川に架かるブルックリン橋、マンハッタン橋、ウィリアムズバーグ橋、クイーンズボロ橋(以上イースト・リバー)、(背景にビッグ・ベンが写り込む)ウエストミンスター橋、タワー・ブリッジ(以上テムズ川)、でもって「映画に最もよくでる橋」がセーヌ川のビル・アケム橋となります。この橋のメトロ6号線高架と歩行者&自動車の二重橋構造とエッフェル塔に2番目に近い=エッフェル塔を背景に映画を撮影出来るという特殊性が、多くの映画作家たちを惹きつけます。

クイーンズボロ橋 ©2009 プッチー・ミンミン
ウエストミンスター橋 ©2004 プッチー・ミンミン
タワー・ブリッジ ©2004 プッチー・ミンミン
ビル・アケム橋 ©2019 プッチー・ミンミン

聖地巡礼の方法も時代と共にアップデートされていきます。90年代から2000年代前半は映画のロケされたであろう場所に映画のチラシとか(ポスターデザインの)ポストカードとかを持ち込んで、映画本篇はこんな感じだったかなぁと想像しながら聖地巡礼してました。帰国して映画本篇と見比べてみると教会や銅像の方向が全く違っていたりとか、映画に出てきた河川の対岸を巡礼していたなんてこともしばしばありました。2000年代後半からはIMDbでかなり細かいロケ地もリサーチ出来るようになり、2007年にスタートしたGoogleストリートビューのお蔭で事前に聖地の予習が出来るようになりました(←つまり実際の現地での聖地巡礼は今や復習というか確認作業)。2010年代中盤からはPCでDVDの映画本篇画像のスクショが落とせるようになり、現地に画像出力したペーパーを持ち込んで映画本篇と同じアングルの写真撮影が出来るようになりました。2020年代はiPadに本篇画像をアルバム化させることによって紙の持ち込みも無くなります。

また、本当に自分が大好きな映画はコスプレして聖地巡礼してたりしましたが、そこまでするほどでもない作品はかなりテキトーな格好でロケ地訪問してました。ところが、最近一部のキンコーズでTシャツプリントサービスが始まった事により、個々の作品のポスター(チラシ)デザインTシャツが作れるようになってしまい、直近の渡航では作品それぞれのTシャツを着用して聖地巡礼する事が可能になっちゃいました(←これはこれで紙は減ったものの現地に持ち込む衣類が極端に増えて荷物が嵩張るようになってしまいましたが…)。

縁あって「映画秘宝」誌に初期の頃からライターとして執筆させていただき、MOOKの別冊映画秘宝「ブレードランナー究極読本」では私自身の揺るぎないベスト・ピクチャーである『ブレードランナー』の6大聖地巡礼をお披露目する事も出来ました。他にも色々な作品の様々なロケ地を訪問してたりするのですが、なかなか皆様に紹介する場が無くて…一時は「映画秘宝」本誌に連載の話も出ていたのですが、2度にわたる休刊の為に頓挫してしまいました。

2ndストリート・トンネル ©2015 プッチー・ミンミン
ブラッドベリービルディング ©2015 プッチー・ミンミン
ミリオンダラー・シアター ©2015 プッチー・ミンミン

この度noteをお借りして「プッチー・ミンミンの映画紀行」を立ち上げることにしました。タイトルは自分を映画ライターとして鍛え上げてくれた「映画秘宝」に敬意を表してですが、これは別に「プッチー・ミンミンの映画をたずねて三千里以上」でも「プッチー・ミンミン 愛の映画世界旅行」でも「プッチー・ミンミン 387日間映画世界一周よりもっと周回してる」でも何でもいいんです。
※387日というのは「0000 はじめに」執筆日時点での海外滞在日数(日本出国日と日本帰国日は2分の1日として算出)。

という訳で、皆様には数多くの映画作品の聖地巡礼をご高覧いただければ幸いです。

プッチー・ミンミン


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