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kona Unit X 2021モデルを事細かに解説する

 自転車旅用のチャリンコを買いました。
 konaというカナダのメーカーのUnit Xという、フルリジッドバイクです。

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フルリジッドとは?

 フルリジッド(リジッドフレーム)とは、サスペンション機構を持たない自転車構造のことを言います。自転車のフレーム構造は主に以下の3つに分類されます。
1. フルサス:フロント(前輪部)とリア(後輪部)の両方にサスペンション有り。
2. ハードテイル:フロントにのみサスペンション有り。
3. フルリジッド:サスペンション無し。

 つまりこの世大半の自転車(ロードバイク、クロスバイク、ママチャリ然り)はフルリジッドです。しかしこれらの自転車のことをわざわざ「フルリジッド」という名称で分類することはありません。それが普通ですからね。

 「フルリジッド」の言葉の裏には「このバイクはマウンテンバイク寄りに分類されるけれども、サスペンションは搭載していないよ」という意味が含まれています。

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衝撃を吸収するクロモリフレーム

 サスペンション機構を有さないため、衝撃はフレームと体で吸収します。

 Unit Xのフレームは「Reynolds 520」というクロモリ(クロムモリブデン鋼)のフレームで、鉄にクロムとモリブデンを添加した合金です。カーボンほど軽くはありませんが、頑丈で、弾性があり、そして安価です。

 サスペンションがないためゴリゴリの山道を下るのには適しません。一方で田んぼの畦道、林道、砂利道などなど。ロードバイクでは躊躇するような道は、Unit Xにとって大好物です。

12変速で高速巡航〜ヒルクライムまで楽々

 Unit Xのコンポーネントは「SRAM SX Eagle」です。
 スラムのMTB向け12変速の中で、最も廉価なコンポになります。

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 カセットスプロケットはフロントシングル×リア12の12変速です(11-50t)。
 フロントは32tのシングルなので、リアトップの11tで最大ギア比は2.91になります。2021モデルのUnit Xの標準タイヤはWTBの「Ranger TCS 29x2.6"」なので、タイヤ外周は29.69インチ(754 mm)とかなりの大径になります。
 計算上はペダル1回転で2.37 m進み、ケイデンス70 rpmの場合は時速28.9 kmとなります。
 逆にローギアは50tで最低ギア比は0.64。「勾配のキツイ坂道でも楽々」という触れ込みで、確かに楽な側面もあります。一方でバイクパッキングで荷物を満載にした場合、坂道では特に負荷がかかるので、「歩いて押した方が早いな?🙃」ということも多々あります。
 尤もこれは使い方の問題で、通常使用であれば11-50tで困ることは殆どないはずです。

標準ハンドルはフラットバー

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 MTBなだけあって、ハンドルはフラットバーです。
 特段使いにくい訳ではありませんが、ロングライドでは姿勢が固定されてしまうため、早々にSURLYの「Moloko Bar(モロコバー)」に換装しました。

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 クワガタのツノのようなモロコバー。
 少し前側を握れるようになるので、巡航時や坂道の登りが格段に楽になりました。

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 またバイクパッキングではハンドル周りにバーバッグやGopro、ボトル入れやスマホホルダー、ライトなど付けるため、モロコバーではゴチャゴチャさせながらもきちんと装着することができます。

タイヤはセミファット

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 標準タイヤはWTBの「Ranger TCS 29x2.6"」です。
 ブロックパターンで悪路でのグリップ性を高めていますが、舗装路をメインで走行していると、ブロックは結構な速さで削れていきます(写真は走行距離3000 km程度)。ブロックタイヤの宿命ですね。
 リム、タイヤともにチューブレスレディなので、リム側にテープを貼り直すことなくシーラントを入れるだけでチューブレス化が可能です(チューブレスバルブは付属)。
 規定空気圧1.0-2.1 barに対して、以下のような感覚で運用すると好印象でした。
・舗装路×クリンチャー:1.8-2.0 bar
・舗装路×チューブレス;1.3-1.5 bar
・未舗装路×クリンチャー:1.5 bar
・未舗装路×チューブレス:1.0-1.2 bar

 タイヤが大きいだけあってチューブもかなりの重さになるので、最初からチューブレスにしてしまった方が何かとお得かと思います。タイヤが太いからなのか、フロアポンプでもビート上がりましたが、できればコンプレッサーで上げた方が確実かと思います。

ブレーキはディスクブレーキ

 ブレーキはSRAMの「Level T」です。機敏な制動に応えてくれます。

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 注意点として、
・ブレーキディスク(タイヤホイール)を外した状態では、ブレーキ部分に必ずダミーバッドを挟み込む(これをせずにブレーキを握るとブレーキパッドが戻らなくなり、タイヤを装着できなくなる)。
・フレームを逆さに向けた状態でブレーキを握らない(容易にエア噛みを生じる)。
・ブレーキディスクに油分を付着させない(手の脂やチェーンオイルに注意)。

バイクパッキング

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 荷物固定などに使う2連ダボ穴はフロントフォーク×2、ダウンチューブ×2(上下)、シートチューブ×1。他にもフロントキャリア、リアキャリア用のダボ穴を設けており、積載し放題です。私はシートポストをドロッパー化しているため付けていませんが、サドルバッグも付ければさらに拡張可能です。
 今の時期は小さい寝袋で済むため、フロントフォークにスタッフサックをくくりつけてテント、輪行袋、クッカーなど。ハンドルバーバックはFAIRWEATHERの「Handlebar Bag+」に寝袋、着替え、レインウェア、カメラを入れて、この二箇所でまとめています。

輪行

 さて、輪行はできますが、ちょっと大変です。大変ですが、がんばれは特急列車のシート裏にスッポリ納めることが可能です。

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 Unit Xは市販の自転車の中でも最大クラスの大きさです。輪行袋に入れるための手順は、
1. 前輪と後輪を両方外す(必須)
2. エンド工具を取り付け、ブレーキにダミーローターを挟む(必須)
3. ストラップなどを使用してブレーキレバーを「ブレーキをかけた状態」で固定する(エア噛み防止)
4. シートポストを一番下まで下げる
5. リアスポークのキャリアベースを片方はずす
6. ハンドルを外す(一番面倒)
7. リアのエンド工具とシートポストを支柱として、タイヤとハンドルをストラップで中央部分に固定する(これで完成。下写真)
 慣れれば所要時間は15分ほどです。

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 私が使用している輪行袋はTIOGAの「29er ポッド」です。

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 この輪行袋ではハンドル外しが必須です。
 オーストリッチの輪行袋「E-11 29インチ対応」はこのTIOGAより少し大きいらしく、もしかしたら一番面倒なハンドル外しをしなくてもいい”かも”しれません。

 エンド工具はTIOGAの「リアエンドホルダー2」を使用しています。

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 なかなか悪名高いエンド工具で、リアのエンド工具の固定が甘く、輪行パッケージにした後の自立させ方が甘いと(リアエンド工具が地面に対してきちんと90°になっていないと)「グニョン」と曲がってしまい、一番保護しなければならないリアディレイラーが地面に接してしまいます。
 しかしUnit Xのハブ(フロント 110×15 mm、リア 148×12 mmでBoost規格)に対応しているのは実質コレしかありません。使い方のコツとしては、リアのエンド工具を固定する際に、タイヤを固定する時と同じように「ギュッ」としっかり締め上げることで、歪みを防止することが可能です。

総じて、良い旅バイク

 大口径タイヤと弾性のあるフレーム、幅広いギア比による高い走破性&走行安定性。バイクパッキングに適した拡張性。頑張れば輪行可能なサイズ。
 総じて、テントを括り付けて長旅をするようなバイクパッキングに適したバイクです。

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