産後のからだと桃のはなし

桃の美味しい季節がやってきた。

今年も桃を食べたけど、昔に比べると食べる量はとても減った。
桃を食べると、のどに違和感を覚えるようになったから。

ことの始まりは妊娠中だった。
りんごを食べたときに、のどがイガイガするような感じがあった。
出産時の入院のために産婦人科で問診があり、アレルギーの有無を尋ねられた。
「アレルギーなのかわかりませんが、最近りんごを食べるとのどがイガイガする感じがありました」と答えると、
「のどに症状が現れるということは、呼吸困難になる可能性もあります。妊娠中はりんごの他に桃も食べないようにしてください」というようなことを伝えられた。
妊娠中はりんごと桃は食べないように過ごし、無事に出産した。

それから時は流れて、出産からずいぶん経った頃に、りんごを食べてみた。
桃も食べてみた。
食べたかったから。
そして、何も症状が出ないのではないか、と淡い期待もあった。
思った通り美味しかったけど、やっぱりのどはイガイガした。

症状が現れるなら、りんごも桃も食べないほうがいいのだと思う。
りんごは食べないようにしている。
けれど桃は食べてしまう。
たくさん食べるのはこわいなと思いながら、少しだけ食べる。
桃の吸引力たるや。

妊娠出産を経て少しからだが変わった。
子どもが無事に生まれてきて嬉しいし、
何かを食べられなくなるのは妊娠出産以外にも色々あるだろうけど、
昔、元気に能天気に桃をむしゃむしゃ食べていた自分と、
今の自分とを比べてしまう。
親という点で私と夫はいっしょだけど、夫は子どもの誕生によりからだが変わることはなくて、うらやましくなる。

桃の美味しい季節がめぐってくるたびに、
女性であることの理不尽さを少し感じる。
それでも、桃を少しつまんで「おいしいねえ」なんて言って、
笑ってやり過ごしていく。
桃だけじゃ足りなかったら、他の好きなものも食べる。
とりあえずは、それで大丈夫。

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