「好きな人」には違いないのに

あなたのことが好きです、と軽々しく口にしてはいけない。私は女だから、男の人に対して、たとえそう本当に思っていたとしても、言ってはいけない。私の中の好きと相手の中の好きは9割9分異なっている。私はそこまで迂闊ではない。パンロマンティックなんて言葉、知らない人の方が多いし、私の中にある好きは1種類だけなんてことも相手は知らない。

それが、最近とてももどかしい。

彼に会いたいなとよく思うんだ、と私が言ったら、「彼のことが好きなんだ?」と言われるだろう。そうだね、好きだよ、と私が言ったら、「その人に彼女はいるの?」と聞かれるだろう。私が何も言わなくても、「好き」は「恋人になりたい」に行き着く感情だと思われて、最終的には「頑張ってね」と言われるんだろう。

「彼と付き合いたい訳じゃないよ」と言ったら、「友達として好きなの?」と聞かれるだろう。恋愛感情として好きなのか、友情の好きなのか、誰にでも表明できるように決めておかなければならないらしい。いや、ヘテロの人にしてみれば初めから「好き」の種類が違うから、決めるも何もそうでしかない、って感じなんだろうか。

会えたら嬉しいと思える人がいる。思いついたことを共有したいと思える人がいる。顔を見ない期間が長いと「会いたいな」と思う人がいる。
その人に対する感情が何かと言われたら、好意だと答えられる。「好き」だと思う。
でも、それはみんなが言う「好きな人」とは、たぶん、違う。みんなにいる「好きな人」は私にはいない。でも、好きな人はたくさんいるんだ。

全部同じなんだよなぁ。一種類なの。好きと大好きの違いはあるけれど、好きな人は一種類だよ。友だちとしての好きな人とか恋人としての好きな人とか、そんなん無いよ。分からんよ。

でもこれが伝わらないから、特に異性に対しては、誤解を避けるために、好きだと伝えられない。上手く伝えられる自信もないし、認識のズレが起きて関係が変になるのも嫌だ。でも私がこんなに相手を好きなのに、それを伝えられないことが少し悲しい。

もどかしい、もどかしい。あーあ。

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