君のクイズ 小川哲
水上さんが卒業する頃の東大王から見始めて、水上さんの卒業スペシャルを観た日の夜からQuizKnockを見始めて、そこから1年くらい。そうだちょうどコロナ1年目とか…だった?いやそれよりちょうど1年前かな。まるっと1年くらいハマっていて、山本さんのファンになって大学とバイトの傍ら漢検の勉強を再開したりしていた。東大生が勢ぞろいの中 引けを取らない強さと人の良さが見えた同じ大学の先輩にすっかり夢中になったりして、テレビ出演なんかがあれば録画して齧り付いて観ていたり。そうだそうだもじぴったんとかコラボ?監修?していた頃ですよちょうど観てたの。既に懐かしいや…今でもちょくちょく動画観てますけれども。200万人おめでとうございます。
伊沢さんや山上さんがTwitterで推薦なさっていたので私も気にはなっていて、でも本屋さんで冒頭だけぱらぱらっと捲って雰囲気を見た感じ うーん…?という印象で即買い!って気に入り方では無くて、新書って安い買い物では無いのもあって そのうち今日買いだ!って日が来るのかなぁとなんとなく思っていたのだけれど、色々経てお友だちが買ったとのことで、有り難く貸してもらえた。
QuizKnockをよく視聴していたからだとは思うのだけど、冒頭の この物語の根幹になる「ゼロ文字押し」に大した違和感を抱かなかったために最初は話の展開が飲み込めなかった。座り込む…ストライキ…何?……あ、ヤラセ???って理解するまでに何度か最初だけで往復した。「クイズ」という競技を観覧するだけなら割と経験値を積んでしまった身からは一文字押しくらいならそんなに驚くほど魔法だとも思えなくて(読みあげでゼロ文字押しのそれも正解は流石に見たことがなかったけれど)こんな状態で読み進めていいのか?ってちょっと不安になりはしたけど、なまじの知識がある人間からしても聞いたことある話や観客側から体感したことのあるあれこれが散りばめられていてちゃんと楽しむことができた。クイズに情熱を持ってやってきた人たち 三島さんの言葉を借りるなら私たちが偶像を作り上げ崇め奉るところの皆さんはきっと こういう本を通して一般人のクイズへの認識が少しでも変わることが嬉しかったり感無量だったりするのだろうし 共感して貰えたようで嬉しかったりするのだろうなと思った。クイズ番組って昔から今までずっとあるコンテンツだけれど ファンの欲目かもしれないが伊沢さんや東大王やQuizKnockの影響力が「クイズ」に対して元々あった ちょっとした侮りや聞かれて答えるだけの取るに足らないもの、みたいな認識を少しずつ プロなんだ、スポーツなんだ、論理なんだって風に最近は変わってきているのかなと思ってしまう。そしてそれはずっとやってきたプレイヤーさん達にとっては良い変化なのではないのかなと。少なくとも私のように、クイズではないにせよ「学ぶことをただ答えるだけ」に見える問答の価値が上がって見えること、引いては学ぶことの楽しさが評価されることが嬉しい人間もいるので。
クイズは人生なんだ、って三島さん。
私はクイズプレイヤーでは無いけれど、学ぶことはつまりそれだと私も思っている。クイズの素敵なところは万物への興味が腕を上げることに直結させられることだ。私の好きなお勉強、座学はテストに使うとか世界が広がるとかちょっと曖昧な恩恵になってしまうけど、クイズという目的をひとつ持っているだけで何を勉強してもオールジャンル対策。言っちゃえば大義名分がたつ。それ何のために勉強するの?数検なんてなんのために受けるの?という一般の学業を終えたあとの人から見れば当然とも言える質問たちにも「クイズの対策してる」の一言で答えられる。それがクイズの素敵なところだと思う。
クイズを通して新しいことを知る、経験したものの中つまり知っているものの中から答えを見つける、だからクイズをすることは必然的に人生を振り返ることであり、クイズとは人生…
きっとそれはクイズに限らず。学ぶことは世界を広げること。自分の世界にそれまで存在していなかった何かを顕在させること、人生に加えること。かつて学びのなかで出会った知識と生活の中で再会することが学びの楽しさであり生きることの幸せのひとつだって私は思っている。子どもの頃は読めなかったカレンダーに英語で書かれた曜日と教科書の中で再会して初めて読み方を知り、もういちどカレンダーを見たときにまるで違って見える感動、めんどくさいと思いながらドリルに練習した漢字が、そのあと読んだ本に出てきてルビ無しで読めたときの嬉しさ。世界の資料集を捲っていてルネサンス期の絵画を見てサイゼリアの壁に掛かってる絵だー!ってちょっと笑っちゃった時も。関係無いと思って学んだことが生活の中に当たり前の顔して存在していたことに気が付く瞬間。もっと進んでそれが実際に役に立った!の瞬間の喜び。それがもっと増えて、世界が知っているものだらけになって、知識の網目を細かくしていく(この例え高校生の頃から世界史を勉強する時にイメージしていたことと全く同じ表現で文中に出てきてびっくりした&嬉しかった)過程が、そのまんま人の豊かさなんだって信じている。
知ること学ぶことは、世界を広げること。
世界の解像度を上げること。
解像度があがるほど。再会する相手が多いほど。世界に知り合いが増えるほど。それは生きることそのものを豊かにしていくことなんだと思う。だって楽しいと思えることが増える。なにか起きた時の解決策を知っている。沈んだときに起き上がるきっかけになるものをたくさん持っている、ということだと思うから。生きるのが楽しくなる、学ぶことは、生きることを楽しくすることなんだって、私は思っている。
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