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水戸巡検のまとめ~自分で企画した巡検~(3)当日

(2) 事前準備 からの続き

当日は参加者5名であった。内訳は比較文化学類3年が2名、地球学類3年が1名、人文学類2年が1名、日本語・日本文化学類2年が1名。

今回は私が企画・行程作成・現地解説等を行ったので、都市地理学的なテーマがメインとなっている。また、午前中は郊外、午後は都心という対比となっている。

移動経路は下図の通りである(地理院地図を加工して作成)。茨城県庁を起点に午前中は郊外を、午後は水戸駅を起点に都心を対象とし、偕楽園まで歩いた。

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茨城県庁

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集合は10:30頃に茨城県庁とした。つくばセンター9:20発のTMライナー水戸駅行に乗って行ける時刻である。

行きのバスが10分ほど遅れたため開始も10分ほど遅れた。まずは茨城県庁の25階展望ロビーに行き、地域を概観した。高い建物がある場合はまず登ってみると、地域の全体像をつかめるので良いだろう。鹿行のときも鹿島港のタワーに登っている。

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展望ロビーでは、その後訪問する国道50号バイパス沿線が上からよく見えるうえ、中心市街地も遠望することができる。この他、東側では大洗マリンタワーのほか太平洋が、南側では牛久大仏も見られた。

1階の生協で茨ひよりのグッズを購入した参加者もいた。その他、茨城県関係の土産物も販売されていた。

そもそも茨城県庁自体が水戸の郊外化の象徴の1つであることも踏まえれば、職員の方への聞き取り調査などがなくとも茨城県庁の訪問に意義は見いだせるだろう。

茨城県庁周辺

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県庁を出て、県庁の西側の通りでは自動車のディーラーの店舗が多くみられた。「集積の経済」が脳裏に浮かぶ。なお、佐藤ほか (2002)によると、ディーラーほか自動車関連会社では、自動車の長所を生かして早期に郊外移転が進んだようである。

国道50号バイパス

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国道50号バイパス沿いに、茨城放送のビルとタワーが見られる。茨城放送も中心部から移転した企業である。

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国道50号バイパス沿線には、広い駐車場を持つロードサイド型の商業施設が多く立地している。道路の通行量も、歩行者・自転車より自動車のほうが圧倒的に多い。しかし、国道50号バイパスから1本離れた隣の道を見ると、住宅が多く立地している。

卸売団地

その後、卸売団地に少し立ち寄った。卸売業の業者と思われるビルや倉庫も確認できる。ただし小売店や飲食店も少なからず見られた。佐藤ほか (2002)で指摘されている流通革命の影響なのだろうか。ただし県庁での見学に時間がかかっており既に時間が押していたため滞在時間が短かったのが残念であった。

米沢工業団地

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米沢工業団地のバス停周辺からも、工場と思われる建物が複数みられた。佐藤ほか (2002)によると、米沢工業団地は工業の振興のために水戸市が主導して整備された工業団地のようである。

そして、つくばでもよく見かける青色と灰色のバスに乗って、水戸駅まで向かった。ここも関東鉄道の営業エリアなのである。なお、水戸駅到着後に周辺で昼食とした。時刻は13時頃である。

水戸駅北口

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昼食後は中心市街地を歩く。水戸駅北口には水戸黄門像もある。

まず大型商業施設の現状を確認した。兼子ほか (2002) 第10図に1998年時点での大型店の分布が示されている。しかし駅前の丸井は撤退している(ただし2020年に新たな商業施設がオープンするらしい)。

さらに西武も撤退し空き地となっていた(ただしこの区画は現在再開発事業中で、壁画プロジェクトも同時進行中)。

地方都市での駅前百貨店の撤退は水戸でも例外ではないようだ。経済地域論の授業で扱われた前橋の事例とも似ている。

水戸城跡

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次に水戸城跡を見学した。水戸は城下町であり、舌状をなした台地の先端部に城が存在した。三の丸、二の丸、本丸の間には堀がある。以下の写真は二の丸と本丸の間の堀で、現在はJR水郡線が通過している。

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この地域では、現在は教育機関が多く立地している(茨城大学附属幼稚園・小学校、水戸市立第二中学校、茨城県立水戸第一高等学校)。なお現存している水戸城の薬医門は水戸一高の敷地内に所在している。

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中心市街地

その後、三の丸の、かつて茨城県庁の所在地付近を通った。現在は茨城県立図書館などとして利用されている。この付近には毎日新聞水戸支局があり、情報機能の中心地としての性格も感じられてくる。

兼子ほか (2002) 写真5の場所から国道50号に合流し、北西部に向かった。しかし、少し歩いても兼子ほか (2002) 第10図に記載されていたダイエーの店舗は確認できない。

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この周辺に19階建てのマンションが見られる。久保 (2008) 図1 にはこのマンションは載っていない。後で調べると、このマンションはダイエーのビルの跡地に建てられたものだそうだ。1階にはカスミの店舗がある。

道を挟んだこのマンションの反対側には常陽銀行の本店がみられる。この付近には金融業や保険業の会社のビルが複数見られる。地代付け値曲線を考えてみると、おそらくこの辺りが水戸の都心となるのだろう。

そして、水戸で現存する唯一の百貨店、京成百貨店がみえる。京成百貨店はかつては道の反対側にあったが、伊勢甚の跡地に移転している。なおかつて京成百貨店があった場所は解体工事中で、劇場もある市民会館が建設される予定だそうだ。ここで国道50号線から離れ、水戸芸術館に向かう。参加者の希望により水戸芸術館タワーに登った。ただし、タワーの上では、タワーの壁にある穴の部分からしか覗けない。景観観察には工夫が必要である。

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泉町には地下駐車場も整備されており、兼子ほか (2002)では中心市街地での駐車可能台数の問題はないと指摘されている。この地点を通過したときにも駐車場に入る車があった。

偕楽園へ

その後は偕楽園に向かった。既に16時をまわっており、帰りのバスの時刻を考えると時間があまりない。

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偕楽園に向かう道では、電線が地中化されている。さらに地上に設置されている機器には、水戸市街地の古地図と現在の地図を重ね合わせた案内板となっている。なおこの案内図の制作には筑波大出身の歴史地理学者が関わっている。

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そして、偕楽園に到着した。兼六園(金沢市)、後楽園(岡山市)とならぶ日本三名園の1つであり、春の時期は梅で有名である。今回の巡検の目的の1つには偕楽園の梅の観賞を挙げていた。

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梅は開花したばかりであり、まだ満開とはいえない。しかし、春の訪れは感じることができるだろう。

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最後は偕楽園の見晴広場から千波湖を眺めていた。下の方は常磐線が通っている。10両編成の普通列車と特急列車が通過していった。時刻は17時過ぎ。

偕楽園17:30発のTMライナーに乗り、つくばセンター19:10着。大きなトラブルなく終了した。一日で20 km歩いた巡検であり、地理愛好会の巡検・旅行の中で最も歩いた巡検であった。

なお、各自かかった費用はバス代2,282円(=TMライナー往路1,020円+米沢工業団地~水戸駅242円+TMライナー復路1,020円)、入館料等430円(=水戸芸術館タワー200円+偕楽園230円)、合計2,712円に、昼食代・お土産代などを加えた額であった。

脚注:
引用文献の書誌情報については (2) 事前準備 で提示した参考文献一覧を参照いただきたい。

(4) 成果と課題 に続く