文献購読の授業でやったこと

文献購読の授業で何を行うのかは、講義科目と比べてあまり知られていないように思う。そもそも他学類生お断りの授業も多く、気軽に履修できるような科目でもないので尚更である。私が学群生のときに履修した経験をもとに報告したい。
ただし、ここで記載された内容が2022年度の授業内容と同一とは限らないので注意されたい。

対象科目

似たような科目名があり紛らわしい。地球学類の場合、

  • 「人文地理学・地誌学セミナーA」「人文地理学・地誌学セミナーB」

  • 「人文地理学演習A」「地誌学演習A」「人文地理学演習B」「地誌学演習B」「人文地理学・地誌学演習C」

という科目群がある。前者(金曜2限)が文献購読の授業、後者(金曜4・5限)が卒業研究に向けたゼミの授業に該当する。
比較文化学類の場合は、

  • 「比較文化地理学演習I」「比較文化地理学演習II」

  • 「文化地理学研究演習I」「文化地理学研究演習II」「文化地理学研究演習III」「文化地理学研究演習IV」

という科目群があり、前者(春学期の火曜日)が文献購読、後者(金曜2限)が卒業研究に向けたゼミの授業におそらく該当するかと思う(本当のことは比文の人に聞いてほしいが)。今回は文献購読の授業に該当し、私が履修したことがある、「人文地理学・地誌学セミナーA」「人文地理学・地誌学セミナーB」「比較文化地理学演習II」について取りあげたい。

人文地理学・地誌学セミナーA

(2019年度履修、担当教員: 山下亜紀郎先生)

地域調査ことはじめ』(過去の記事でも取りあげている)のうち、任意の1章と、そこで取りあげられている論文を事前に読み、レジュメ(それぞれA3用紙1枚、図表もそれぞれ全部をA3用紙1枚にまとめる)に整理したうえで内容を発表した。この本では、各章の著者が学生時代に論文を執筆したときの経験談(工夫や失敗談なども含む)などが記載されており、地域調査法を学ぶことができる。また、論文の読み方・ポイントなども討議・指導の対象となるだろう。1回の授業で2名が発表し、1人あたり発表時間15分、質疑応答で20分程度だった。私の学年は履修者が15名いたので、学期中の発表は1人1回だったが、履修者が少ない学年であれば、後述の図書とあわせて2回まわってくるかもしれない。別の図書は「シリーズ地誌トピックス」である。私の学年では期末レポートの課題となり、3冊のうち特定の1章の内容をA3用紙1枚に整理した。年によっては授業中に発表して期末レポートなしのような気もしなくはないが、どうなのだろうか。
専門書や論文を授業で読む経験をベースに、卒業研究に向けて自分の研究に関連する専門書や論文を読む能力を高めていくことになるかと思う。
ちなみに私は『地域調査ことはじめ』では「工業の地域調査」を、「シリーズ地誌トピックス」では「グローバル化時代の交通と物流」で発表・レポート執筆を行った。
なお、秋学期も含めてこの科目は事実上地球学類生限定になっており、他学類生の履修は困難である。

人文地理学・地誌学セミナーB

(2019年度履修、担当教員: 堤純先生)

地理学基礎シリーズ『地理学概論 第2版』の任意の章と、発表内容に関連した別の論文の内容を紹介し、議論する形式である。要領は春学期と大きく変わらないが、発表内容に関連した別の論文の内容を適切に選べるかも大きく問われそうに思う。私は「生産の地理」の章を担当したので、農業や工業の経済地理学の話がメインであった。都市の章ではないの?と思う方もいるかもしれないが、その章の執筆者が授業担当教員という場面であり敬遠してしまった(他の人が担当はしている)。とはいえ、発表内容に関連した別の論文のほうで都市の内部構造に関する論文を選んだ。一見意味不明だろうが、農業立地論で必ず出てくるチューネンモデルの現代的応用の1つが都市の内部構造モデルであり、関連性は持たせている。
春学期にせよ秋学期にせよ、日本語文献で人文地理学・地誌学全般にわたる基礎的な図書が対象となった。

比較文化地理学演習II

(2020年度履修、担当教員: 久保倫子先生)

地球学類とは異なり、英文の教科書の購読となる。課題図書は主にUrban Geography: A Global Perspectiveであった(本当は他に1冊あるが省略)。都市地理学の教科書であるが、この教科書の任意の章の内容を整理して日本語で発表する形となった。英文の教科書なので、日本語の教科書と比べて分量が多い。人によっては1人30ページくらい担当することもあった。履修者数が多く、30名程度いた年だったので1コマで3人発表、1人あたり15分くらいとかなり時間的制約が大きかったが、その分要領よく整理することも大切だろう。ただ、2022年度は履修者は減るのではないかと予想している。
私はNational Urban Systemsの章を担当したが、英文で15ページくらいある。ページ数が少ないところを狙ったところもあったが、事前準備の作業量は地球学類の科目よりも多い。
この授業自体は履修制限自体はないので他学類生でも履修できる。とはいえ地球学類生は私だけで、他には日日から1名いたのみであった。ハードルは高いだろうが、個人的には、都市地理学で卒論を書きたいと思う地球学類3年生も履修しても良さそうには思う(標準履修年次は2・3年次)。