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【不器用な癒しのお品書き。】recipe1.お風呂でアイス

【不器用な癒しのお品書き。とは?】
毎日自分なりに頑張る私へ、だらりとした癒しはいかがですか。明るく丁寧なひかりの癒しではなく、もっと温度の低い、影の癒しを。あなたの不器用に寄り添う癒しを、お店の「お品書き」にまとめご紹介します。


本日の不器用さん:インターン中のミスで、自分にがっくりきたHさん。

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どこか東南アジアを感じさせる陽気な赤い外観。夜中になると月明りとともにオープンする、知る人ぞ知る不思議なお店「ちゃんどら」。
今日も夜な夜な何故かたどり着いてしまった不器用さんが、ちゃんどらマスターに今日の出来事を話し出します。

マスター:
こんばんは、いらっしゃい。あらHさん、なんだか浮かない顔だね。どうしたの。

Hさん:
マスター、こんばんは。なんかこの店に行き着く気がしてた、はぁ。今日も自分が嫌になっちゃってたもんなぁ。

マスター:
ちょっと。まるで厄介者みたいに笑。まぁまぁ、来ちゃったんだから話してみなよ、今日のことをさ。

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マスター、この顔は面白がってるなぁ。カウンター越しにニヤニヤしてます。でもHさんにはバレてないみたい。今日のことがよほど心にきたのでしょうか。

Hさん:
ありがとうマスター。ちょっと前から始めたインターンのことなんだけど。私が社長に直談判して入ったやつね、本気でやってみたかったから。
はぁ、でも自分くそだなぁ。勤務が週6日の朝8時~17時で、かなりタイトなんだけど、私なら出来るって思ってたの。
でも私、自分を高く見積もりすぎてたんだと思う。

はぁ、とため息を付きうなだれるHさん。今日のことを鮮明に思い出しちゃったのでしょうか。

Hさん:
ギリギリの出社に、書類に記入する日付の間違い、メールの誤字脱字...。
注意しとけば防げたような、誰にだって出来ることができなくて。「私かこんなことも出来てないじゃん」って心で呟くの。本当に自分に落胆してる。こんなことも出来ないなんて、ただの給料泥棒だよ...

Hさんから、とめどなく自分を責める言葉があふれてきます。

Hさん:
インターンはバイトとは違うのに、私はちゃんとその価値出せてる?価値出すどころか、ミスばっかで社会人の基本すら出来てないよ...。いつまで学生気分でいるんだろう。あぁ、本当に社員さんに申し訳ない...。

マスター:
なるほどねぇ...。そんなことが。今日もなんかあったんだろうなとは思ってたけどね。Hさんのブログ荒れてたもん。

Hさん:
見てくれたんだ笑。あんな、暗くてドロドロした気持ちを書きなぐってるだけのブログなのに。でも読んでくれる人がいるから書き続けられてるんだろうなぁ。どこかの誰でもいいから、この気持ちを知ってほしいんだよねたぶん。私の存在を示したい、知ってほしい、みたいな。

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Hさんは、インターンの帰り道にバスの中で毎日ブログを書いています。不器用な頑張り屋さんゆえに日々の葛藤も多いHさん。ブログは、そんな彼女の「心の叫び」なのでしょうか。

マスター:
Hさんのブログ好きだよ。内容はまぁ暗いけど、読んだあとになんか元気出るんだよね。
でも今日は、ブログだけじゃダメみたいだね笑。そんなHさんにぴったりの「不器用な癒し」があるのよ。

ふふん、と自慢げに笑いゴソゴソと何かを取り出すマスター。そう!これが当店自慢の「不器用な癒しのお品書き」。沢山の不器用な癒しを取り揃え、マスターがその日のお客さんにぴったりな癒しを提案します

マスター:
話を聞いてて、これしかないと思ってたよ。Hさんに提案する不器用な癒しは…「お風呂でアイス」!


本日の不器用な癒し:お風呂でアイス

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マスター:
方法はとっても簡単、3ステップ。
まずは、アイスをコンビニで買う。MOWのバニラがおすすめだよ。たまには浮気して、抹茶とかストロベリーでもいいけどね。あ、棒アイスはリスキーよ。詳しくは後ほどだけどお風呂だからね、アイスが溶けだすと手に進出してきて危険なのよ。安全面は考慮しなきゃ。

なんだか、謎のこだわりを持つマスター。Hさんへの癒しですよ?分かってる??

マスター:
次は、帰宅してから。
冷蔵庫には行かずに、買ったアイスを持ったままお風呂に直行すること。
アイスは、1/3くらい開けたお風呂のフタに置いてね。お風呂を沸かし始めたら、先にシャワーをすましちゃおう。やっぱり綺麗にしてから食べなきゃね。それと、この間にお風呂の熱気でアイスがじんわり溶けて、食べるころには良い感じだから。

自分で想像しちゃったのでしょうか、ニヤニヤが止まらないマスター。

マスター:
ここまできて、やっと本番。
お風呂に浸かったら、フタを1/3くらい開けて肘が乗せるの。ちょうどお湯が見えないから「自分だけのお城」みたいな気分になるのよ、これが。アイスの落とす心配もないから安心だよ。もっとハイレベルな人はフタなんか使わずに、バスタブの角の小さいスペースに器用に乗せるんだけどね。あれは本当に尊敬。いつか僕もやってみたいねぇ。

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誇らしげに遠くを眺めるマスター。尊敬の方向性が謎すぎるところは、この際おいておきましょうか。

Hさん:
へぇ。ありがとう!すごく良さそう、やってみたい。「お風呂でアイス」を実践してみたら、明日も頑張ろう!って前向きに思えるかな。

マスター:
そうだねぇ。前向きになる訳ではないかもね。明日も頑張ろうとか、思えないときもあるでしょ。でも、それでいいと思うんだよね。ポジティブにはなれないけど、お風呂でアイスを食べたらトゲトゲしてた心がまあるくなるのよ。自分を受容は出来るっていうのかな。ちょっと落ち着いて「明日はこれ試してみようか」と思えてきたりね。

Hさん:
そっか。そうかも。前向きになれなくても「こんな自分でもいいか」って受け入れてあげたいなぁ。ありがとう、やってみるね。

心なしかちょっとだけ、すっきりとした表情で席を立ったHさん。カランカランとドアを鳴らして、お店から出ていきました。
自分への期待や理想が高く、さらに責任感も強い分、そんな自分を受け入れられず落ち込むことも多いのでしょう。
そんなHさんの明日が「お風呂でアイス」で、ちょっとでも良い日になりますように。
明日のブログも楽しみにしていますね。

さて、次はどんな不器用さんがいらっしゃるのでしょうか。
ご来店をお待ちしております。

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ライター:財前 穂波(zaizen honami)
ぼんやり考えることが好きで、夢見がちです。マイブームは「あの物陰から小人が出てきたら...」と考えること。とりあえずポッキーをあげようと思います。褒められたいタイプです。みなさんが私の文章いいな、って感じてくれたら月まで飛んで喜びます。

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