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成人式バックれて夢を語ったら彼女ができた

20歳の時、成人式の通知が来た。

行く必要なくね?

これが僕と僕の友達が出した結論だった。

中高一貫で進学したため中高大と同じようなメンツとだけ関わってきたことも成人式に行かなかった理由の一つだ。
女子なら振袖を着て写真撮ってインスタに投稿するという使命があるだろうが、我らには無縁の世界ゆえ成人式に行かない選択は早かった。

そうして成人式をバックれて19時ごろから友達と向かった先は「夢を語れ」という二郎系ラーメンだった。
僕らは夢を語れに行くことを「夢語りにいく」と言っていた。
だが、大チキリなので夢を語れで夢を語ったことはない。
ただ二郎を食べただけである。

成人式をバックれ、二郎系に行く。なんて俺たちはロックなんだ!
俺たちはインスタ映えを狙うおもんない奴らとは違うんだ!
と本気で思っていた。(今でも全然思っている)

そして、僕とその友達にはもう一つルーティンを持ち合わせていた。
それが鴨チルである。
略さず言うと鴨川でチルする。それだけの話だ。
夜になると四条沿い以外であれば基本的に鴨川の河川敷は人が少ない。
たまーにチカチカ光る服を着てランニングしているおじさんがいるくらいだ。

だから、コンビニでお酒を買い、鴨川の河川敷のベンチに座る。
「結局鴨チルなんよな」
「まあ、一級河川やしな」
という謎理論が当時は成り立っており、新年が明けたら鴨川に挨拶に来なければいけない流れまで僕らにはあった。

その友達とは高校生の頃から一緒にバンドを組んでいたこともあり、誰もいない河川敷で音楽を流しては軽く歌ったりしていた。
andymoriのすごい速さを歌ったことは今でも覚えている。

「今ちょっといい感じの子いるんよね」

僕には同じバイト先で付き合えそうな雰囲気の女の子がいた。

「ええやん、見せてや」

そう言われLINEを見せる。

「これいけると思わん?結構自信あるんやけど」

「いけるやろ。いけよ」

そんな会話をしているとピコン!と新しいメッセージが届く。

(どんな人がタイプなん?)

「これなんて答えよ。この子に当てはまりそうなこと言う方がいいよな」

「コンビニでバイトしてて弓道部の子って返せばええやん」

「バカたれ、この子しかおらんやないか。俺のハートも射抜いてくださいってか?」

「全然おもんないで君」

そう言ってお酒片手にめっちゃ笑った。
そこから友達としょーもない話をしながらLINEを返し続け
「誰か付き合ってくれる人いるかな〜」
僕はスルーパスを出した。
「わたし」
付き合うことになった。

鴨川の23時ごろ2人の男が堅い握手をした。

「おめでとう」

「ありがとう」

「この子と話したいから帰るわ」
僕が半ば押し付けるように友達に言い、その会はお開きになった。

酔いが程よく身体を巡り、気分よく夜風を感じながら僕は走った。
大学生になり運動をしなくなった人間とは思えないほど身体が軽い。

おめでとう新成人!

おめでとう俺!

この時付き合った子とは本来もう少し先にデートする予定があり、こんなに早く付き合うことになるとは思ってもみなかった。もし成人式をバックれていなければ、二郎系に行っていなければ、付き合っていなかった可能性もある。

「色々考えたんやけどさ、やっぱり鴨川の力で付き合えたんかな」

「まあ、一級河川やしな」

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