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【SUNTORY】響(ひびき)

日本国内におけるブレンデッドウイスキー全ての破壊者であり、統べる存在であるサントリー『響』ブランド。

壽屋の創業年の1899年から90年目の節目である1989年に「壽屋創業90周年記念ウイスキー」として誕生したブレンデッドウイスキーが「響」です。
響というブランドは単にサントリー創業90周年記念のために作られただけではなく、サントリーが一般販売する国産ブレンデッドウイスキーの中では最高位のフラッグシップブランドとして開発され、現在に至るまで国産ウイスキー市場全体を牽引し続けているモンスターブランドでもあります。

国内のウイスキー好きであれば誰もが知っているであろう国産ブレンデッドウイスキーの傑作であるプレミアムウイスキー「響」。
そのブランド名はサントリーの掲げる企業理念「人と自然と響きあう」から名付けられたと言われています。
外身のボトルを形成する美しく気品に満ちた24面カットは、日本の季節の移ろいを表す24節気、そして1日を刻む24の時間をイメージしたデザインで、中身のウイスキーはブラームス作曲の「交響曲第1番」の第4楽章をイメージして作られており、長熟モルト原酒は30種類以上使用され、長熟グレーン原酒も数多くブレンドし、調和を尊しとしたブレンド構成となっています。

では、『響』ブランドはどのようにして誕生したのでしょうか?
先ずはそこから掘り下げ、響というウイスキーへの理解を深めていきたいと思います。

1989年(平成元年)、酒税法の改正で等級表記が廃止され、これまでの特級・1級・2級ウイスキーの表示義務がなくなり、ウイスキーを製造していた各社が一気に次の一手を打つべく、商品の改廃を行います。
当然サントリーも例外ではなく、同業他社に負けじと攻勢をかけ、歴史が動きます。
サントリーがウイスキーを造る上で培ってきたすべての技術・ノウハウに加え「日本の伝統や自然に対する敬意」と「ものづくりに対する日本人の美意識」を融合させた自信作「響17年」が発売され、後に連綿と続く「響」ブランドが生まれました。
その開発計画は酒税法の改正前より始まります。

1980年代後半、2代目マスターブレンダー佐治敬三はそう遠くない未来において高価格帯のプレミアムウイスキーや長期熟成された高級ウイスキーの時代が到来すると予測していました。
その理由としては関税の緩和による長期熟成された良質なスコッチウイスキーの台頭などもあり、消費者がエイジング(熟成年数)をより一層意識し、長期熟成のプレミアムウイスキーが愛される時代が到来するのは時間の問題であると市場を先読みしていました。
そこで自らの審美眼を証明すべく稲富孝一チーフブレンダーを呼び、こう告げました。

「創業90周年の節目に、サントリーの粋を結集した傑作を世に出したい」

そして自身のマスターブレンダーとしての集大成とも言える大仕事、ローヤルを超えるフラグシップブレンデッドウイスキーの開発計画をスタートさせます。
佐治敬三より特命を受けた稲富孝一チーフブレンダーは自身が長年ヴィオラを嗜んでいたこともあり、新しい長期熟成ウイスキーのイメージをクラシック音楽より想起して「ブラームスの交響曲第一番第四楽章の様なハーモニー」と定め、山崎と白州両蒸溜所が生み育んだ原酒を厳選しました。
稲富は山崎と白州の数多くの原酒の中から、新しい長期熟成ウイスキーの中心となる重要なキーモルトにミズナラ樽の長期熟成モルトを選びました。
キーモルトとなるミズナラ樽はホワイトオークと同じ系統の北海道産ミズナラ材で作られた逸品で、モルト原酒をミズナラ樽で長期熟成させると香木の伽羅(きゃら)を思わせる芳香を湛える日本ならではの原酒で、その原酒は何より佐治敬三お気に入りのひとつでもありました。
こうして数多くの長熟モルト原酒と長熟グレーン原酒が絶妙にブレンドされ、日本ならではの風味を内包した新たな傑作、高級ブレンデッドウイスキー『響17年』が発売されました。

1989年(平成元年)佐治敬三が70歳を迎える年の春、響17年の誕生はモルト原酒造りと匠のブレンド技術が、一つの頂点に達した瞬間でもありました。
発売後の響17年の評判は上々で、味わいは勿論のこと高級感溢れるボトルデザインにより一般的なバーだけでなく、高級ホテルや料亭、レストランなどにも珍重され好評を博しました。

1994年(平成6年)『響21年』、1997年(平成9年)には『響30年』が発売され、佐治敬三が想い描いていたプレミアムウイスキーの世界が『響』ブランドを通して結実し、その鮮やかで豊潤な世界観を愛好家は極めて高い評価をもって迎え入れました。
こうして『響』ブランドはローヤルを超えるフラグシップウイスキーとして認知され、現在に至るまで他のブレンデッドウイスキーの追随を許さない王の中の帝王として君臨し続けています。

佐治敬三の死後、2009年(平成21年)には『響』ブランドをより手頃により多くの人たちに味わってもらいたいとの想いから、響の世界エントリー商品として「響12年」が発売されました。
従前の響シリーズとは異なり、「響12年」では12年熟成以降のモルト原酒やグレーン原酒を用いる手法は勿論ですが、それらを梅酒の熟成に使った樽でマリッジし、そこに30年以上熟成させたモルトをブレンドして厚みをつけ、単なる12年ブレンデッドではない圧倒的な商品力で攻勢をかけ、国内のウイスキー市場に衝撃を与えました。

しかし、盤石の様に見えた『響』ブランドにもある問題が浮上します。
それは「原酒不足」でした。

2010年代のジャパニーズウイスキーブームによる原酒不足により生産数量と実際の需要が見合わなくなり、熟成させた原酒が不足して製造が困難となった結果、2015年2月に「響12年」が販売を終了。
同年3月「響12年」と入れ替わる形で「響ジャパニーズハーモニー 」が新商品として登場。
レギュラーラインナップの『響』ブランドでは初のノンエイジタイプの商品となり、使用されている原酒の酒齢が平均およそ10年と言われています。
「響ジャパニーズハーモニー 」は、現在に至るまで「響12年」に替わるエントリー商品となっています。

そして「響12年」に続いて、2018年には響シリーズでは初代である「響17年」も販売を終了。
そして「響17年」に代わり「響ブレンダーズチョイス」がプレミアム・ノンエイジタイプの主力商品として登場。
「響ブレンダーズチョイス」にはワインカスク熟成原酒が使用されていて、ノンエイジでありながらも使用原酒の酒齢は平均15年とされています。
こちらも響ジャパニーズハーモニーと同様、現在に至るまで「響17年」と交代する形で主力商品となっています。
名目上は国内業務市場専売商品のため、一般消費者向けの酒販ルートには流通せず、一般消費者は購入できないということになりますが、何故か一般の酒販店の店頭でも見かけることができます。

誕生から現在まで酒齢のある「響12年」「響17年」「響21年」「響30年」の各銘柄に加え、酒齢のない「響ジャパニーズハーモニー」「響ブレンダースチョイス」などを輩出し、これからも『響』ブランドは国産ブレンデッドウイスキーの頂点として君臨し続けることでしょう。

サントリーは現在、国内に山崎蒸溜所と白州蒸溜所というモルトウイスキー蒸溜所を二つと、グレーンウイスキーを専門に生産する知多蒸溜所を擁し、世界的にも類を見ない繊細な原酒の造り分けを行っています。
それぞれの蒸溜所で造り出される膨大な数の樽からタイプの異なる原酒を選び、香りや味わいといった「響」の品質を維持し続けるのもブレンダーの大切な役割です。

「しっかりとした熟成感と華やかさをもち、さまざまな香りが美しくバランスよく響き合う。それが我々の継承する"響"のイメージ」

現在、当代となる4代目のチーフブレンダー福與伸二はそう語ります。
歴代のマスターブレンダーやチーフブレンダーと共有した時間のなかで培われた、ブレンダーとしての知識や技術を総動員し、何度も原酒のテイスティングを行い、慎重にブレンドを重ねていきます。
ジャパニーズウイスキーの新たな歴史を創造した、日本が世界に誇るブレンデッドウイスキー『響』ブランド。
中味にも装いにも全てに贅を尽くした最高峰のブランド「響」が奏でる繊細な味わいと香りのハーモニーは、これからも人々の心を震わせ続けることと信じています。

名称:響
種類:ブレンデッドウイスキー
販売:サントリー株式会社
製造:サントリー株式会社
原料:モルト、グレーン
容量:700ml 43%(現行品:響ブレンダースチョイス)
所見:ジャパニーズブレンデッドウイスキーの頂点