中世の魔女裁判
まぁ、大体皆ファンタジー関係の知識がファンタジーではなくファジーであり、数多くの「中世ヨーロッパだと思い込んでる話」が近世の話だったりするのは前にも書いた。
で、今回も意外と知られていない中世ヨーロッパにおける魔女裁判について語って行きたいと思う。
でだよ。実は余り記録が残って無いの(ほんとう) これにはある衝撃的な事実が隠されているのだがそれは後に語るとして、記録に残っているガチモンの「中世ヨーロッパの魔女裁判」の事例を参照してみよう。被告は皆も良く知る女性であり、彼女はこの無茶苦茶な裁判で火刑に処されて死んでしまう……
うん、農家出身の割にお強いイギリス軍フルボッコにして歴史に名前を残しちゃったすごい奴さ。列聖されて聖人認定もされてるほんと凄い女子である。
知らん人は居ないと思うが軽く説明すると、フランスの東の方の国境近くで農家の娘として育ったジャンヌちゃんは、ある時大天使ミカエルと聖人2人を「見た様な気がして」更に「フランスを救え!」みたいな言葉を聞いて神の恩寵を得た気がした(さりげなく重要ポイント)
で、のこのこ王太子シャルルに会いに行き、奇跡的に面会が叶うと……軍の将として部隊を指揮し、戦争参加してしもたわけよ。普通農家の娘が戦争指揮してもダメに決まってんだが、何故か不思議なことに彼女は快勝を続けてしまう。
ここで中世ヨーロッパ警察記事の中で語られた「決闘裁判」を思い出して欲しい。古くからヨーロッパには「正しいものは神様が(正しいから)勝たせてくれる」と言うトンチキ極まる信心があり、勝った奴イコール正義であり神が恩寵を下さったと考える重篤な思考回路のバグがある。
つまり快勝を重ねたジャンヌちゃんは大正義であり神様が勝たせてくれてる。つまりジャンヌちゃんに就けば勝ったも同然!
イカれておる。
んでだ。当時フランスは王権継承で問題抱えてて、更にフランス王となるにはランスって街のノートルダム大聖堂で戴冠式やらないかんのだが、ここはイギリス側に抑えられてて戴冠式が出来なかったんだよね。しかしジャンヌがランス解放成し遂げてしまい、まんまと王太子シャルルはシャルル7世として戴冠してしまった。
ジャンヌちゃんはイギリス軍を全部ドーバー海峡に叩き落とすつもりだったみたいだが、シャルル7世はこの辺でビビり出す。ダメダメだった時はイワシの頭でも構わんと田舎も田舎、ど田舎ドンレミから来たちょっとヤバ目の少女に賭けてみたが、なんとこの大穴が万馬券! 皆もオルレアンの少女がおるから快勝じゃーい!と盛り上がってるし……ひょっとして、俺ジャンヌちゃんに人気や求心力で負けてね?
また、イケイケだったイギリス側もジャンヌちゃん来てから良いとこなし! 勝った方が正義理論で言うなら「イギリスは神意に反した」と言う事になってしまう……ので
ジャンヌが魔女で悪魔の力を借りたから勝った
と言う事にして落とし前を付けようと画策した。いやー悪魔が居るなら悪魔祓い師連れてこないとなぁ。ロングボウ部隊では悪魔に勝てなかったヨ……
この2つの想いが友情のバロムクロスを果たした結果、ジャンヌは魔女裁判に掛けられる羽目になったのだが……
実は魔女・異端判定にかなり手間取っている。
どうもジャンヌちゃん、文盲で文字を書くことも怪しかったみたいだが、なんか地頭良かったっぽい。そして妙にキリスト教教義に詳しい。実はまだ王太子だった頃のシャルルに会った時も「まさか魔女ではあるまいな」と審問してるのだが「まともなキリシタンですわ、間違いありませんわ」と判断されるぐらい教義を理解してる。同じ事が魔女裁判でも繰り返され、引っ掛けや誘導尋問華麗に回避してしまうのであった。
実は大天使を見ただの神の声を聞いただのもヤバ目な部分であり、ここをジャンヌはこう切り抜けた。
魔女裁判自体がかなりこじつけ気味に開催され、裁判官まで抱き込んでるのに異端であると結論出来ないイギリス側は、難癖極まる形で
「女性なのに男装してるから異端」
と言うダイナミック極まる判断せざるを得なかった。実際これは当時の判断としては妥当であり、男装している女性は異端なのだ。ベルばらのオスカルはどーなるんや……とお思いであろうが、流石のキリスト教カトリック派も「状況に依るだろ!」と例外規定を設けていて、戦場で自らの貞操守る為に男装するのはアリなんである。更に言うと常日頃から男装しててもだからって一発火刑台行きにはならず、改悛してゴメンねしたら【赦されて】しまうのだ!
基本的にキリスト教は赦す宗教ですからなぁ。間違ってた奴もごめんなさいして正統に向き直ったら赦されたんじゃ。また、その基本路線が無いとハナからキリスト教信じてないノルマン・ゲルマンの連中を攻め滅ぼさねばならぬ。異教徒だからって殺してたらキリがない!(寧ろ死ぬ)
この正しいキリスト教への向き直りをキリスト教教会側では回心と言う。
だから男装してたジャンヌちゃんも改悛して以後気をつけまーす☆したのだが、イギリスの連中は悪辣な手を用いた。
女性用の服を渡さなかったのだ。
小学生のイジメかな?
(呆れ)
この小学生のイジメじみた謀略により、改悛して回心するって言ったのに、また男装してまた異端に戻った!と難癖つけられて火刑台に送られたのであったー
と、割と無茶苦茶やられては居るが、極めて政治的要素が強く「何がなんでも異端にしたい」割には裁判自体は【割りかし】マトモなんですよ。皆も良く知る魔女裁判だと各種拷問器具で死んだ方がマシと言うダメージ与えられたり、簀巻きにして川や池に放り込み「浮いてきたら魔女だから死刑、沈んだままなら魔女じゃないから安らかに眠れ」みたいな両方バッドエンド確定2択やられると思っているだろう。しかし中世末期のイギリス・フランス辺りでは記録を見る限り無茶なことはしていないと言うか……体裁ぐらいはきちんと整えようとしているのである。
考えてみれば当たり前の話で、ある意味中世ヨーロッパって時代は「キリスト教がヨーロッパ大陸を染め上げていく期間」なんですよ。周りに異端がウヨウヨいて、この異端がバーサーカーみたいに襲って来る状況下で無茶な異端審問したらキリスト教徒は根切りされてしまう。
だから皆が良く知る魔女狩りみたいなのはキリスト教化がほぼ完全に完了して異端が絶対的少数派にならないとやれないのである。つまり、中世の後に来る近世という時代までそーゆー事はやり難かったのだ。
なお、100年戦争終了後ほど無くしてジャンヌちゃんの異端判定無効化裁判が行われ、サクっと彼女の名誉は回復された。死んで骨まで灰にされた(キリスト教的には最後の審判の後に復活出来なくなる最悪の死刑)後で名誉回復しても困るだろうにね。
で、こっから先がしんじつの中世ヨーロッパ魔女裁判話なんだが……
異端でも改悛して回心したらいいんやでされてた時代なので、実は拷問とかは無く、むしろ魔法や超自然的な力で被害を受けても「その被害に対して審理が実質される」程度なの。てーか決闘裁判アリアリなバルバロイ極まる地域だから、テメェウチの作物魔法でダメにしやがったな殺す! で、裁判なんぞせずに直接加害っスよ。裁判とかダルいじゃん。魔法使いや魔女でも頭に斧を叩き込んだら安泰じゃ!
中世ヨーロッパのバルバロイを舐めてはいかんである。よし分かった、殺す!がキリスト教が広まる前のヨーロッパでのデフォなんだから、裁判記録とかねーわけさ。そこまで行かない問題の拗れとかは民会という町内会での会合じみた話し合いの場で解決出来てたしね。
方針変えて、noteでの収益は我が家の愛犬「ジンくんさん」の牛乳代やオヤツ代にする事にしました! ジンくんさんが太り過ぎない様に節度あるドネートをお願いしたいっ!