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「天使の囀り」読了。


自分は本好きと言うには本をそれほど読んで無いのですけれど、運命的な一冊に出会った時の喜びは日常に支障をきたす程です。

貴志祐介さんの「天使の囀り」読み終えました。
何故このホラー小説を選んだかと言うと、タイトルの「天使」に惹かれたからです。

私は特に天使、キリスト教、聖書などに詳しい訳ではなく、機会があれば、調べようと思い立ったならば調べたいと思っていますが、天使というものにとても心惹かれます。

清純で無垢で愛らしい姿に嫌悪感を覚える人はほとんどいないのではないのでしょうか?
しかし、聖書?がキリスト教に関連の書物の何かで見た天使というのは、ひとつの大きな目玉に幾何学模様で象られたとにかく気持ち悪い!と思うようなものでした。(でも私は結構そういうのが好き。)

愛らしいというのは勿論そういうのではなく、子どもの姿で翼を生やした存在です。
ウィリアム・アドルフ・ブグローという画家の作品が好きなのですが、天使や少女の作品が印象的で清純で美しい存在の表現が素晴らしいと思っています。

とにかく、翼が生えているだけでなんでも可愛いと思ってしまうような私ですが、「天使の囀り」はホラー小説です。一見ロマンティックなタイトルに思えますが、グロテスクな描写が少なくありませんでした。

読んで良かった!と思いました。
ただの怖いもの見たさで読んだ作品でしたが、それ以上の感情を私に与えてくれました。

貴志祐介さんの小説を読んだのは2作目でした。
著書で映像化された作品で既に知っているものがいくつもあったので驚きました。
「青の炎」、「鍵のかかった部屋」、「悪の教典」。
初めて読んだのは「悪の教典」でしたが、その頃は貴志祐介さんのお名前を意識していませんでした。
たしか、高校生のころ、朝読書の時間に読んでいました。また読んでみたいです。

「天使の囀り」も来年になって記憶も薄れた頃に再び読みたいと思っています。

以下、ネタバレを含む感想になります




作品全体は前半はゆっくり話が進み、中盤あたりからどんどんページを捲る手が進む印象でした。
初めの高梨から早苗へのメールでは、作家という仕事柄か自分の興味を持つことのためには他のことは構ってられない、という性格なんだろうな、と思いました(恋人を置いてアマゾンに行くなんて普通じゃないですよね?)が、早苗への愛をところどころ伝えていて、愛していることを伝えられるなら堅物のような性格ではないのだな、と思いました。でも、クリスマスに早苗にケーキになってみることを提案するのは女心的には、こんなことを文字にするなんて、とドン引きです。
今(2024年)より少し昔1997年の年代設定なので、昔の人ってこうなんでしょうか?

私は詳しくないので分からないのですが、タナトフォビアなのにアマゾンに行くって知らない土地に行って病気になったり怪我をしたりして死ぬんじゃないか?と思わないのでしょうか?
私は神経質なところがあって起きて欲しくないことが起きたらどうしよう、、と不安になる時があるので疑問に思いました。

ゲームオタクの信一の章では、生物や医療の専門用語が並ぶ箇所もあるのに、ゲームオタクの習性まで描写が繊細なのが作者の博識ぶりに脱帽です。
蜘蛛を食べているシーンは気持ち悪くて共感しないように自然と思考が遮断されました。

依田が早苗にブラジル脳線虫の説明をしているシーンではブラジル脳線虫を気持ち悪いとか嫌悪感を覚えなかったのに、那須の大浴場のシーンではまたも思考がストップしました。自分の脳で文章から情景を作り出す昨日が事前に止まりました。恐ろしかった。

庭永が蜷川だったのはすぐに察しがつきましたが、これをどう照らし合わされるのか読みながら疑問でした。早苗と庭永の会話のシーンで、読者が分かっていることを想定して早苗が庭永を「蜷川教授」と呼ぶのは、「話を作る人というのはこういう所までドラマティックに書けるんだな」と改めて作家さんってすごい!と思いました。(そこ?という感じでしょうか)

私は人物の心理描写について察しが悪いのか、早苗と依田が恋愛関係になることは想像がつきませんでした。でも思い返せば、早苗が男性と初めて知り合うシーンは他にもあるのに、依田とのシーンは他とは違ってポジティブというか、手が綺麗だと思うことや、ドライアイスで火傷をしないように気遣ってくれたことが分かったことに早苗の恋愛的なアンテナが動いたのはわかりました。

終盤の依田と早苗の戦いのシーンは切なかったです。この作品を読む前にレビューを読んでいたのですが、「依田が最も恐れていたのは早苗がブラジル脳線虫に寄生されることだった」というレビューが気になっていました。まだ読んでない状態で登場人物の名前を把握できてなくて誰のことか理解せずに記憶していたのですが、当該のシーンを読んでいる時にそのレビューを思い出してこの事か!と胸が痛くなりました。

ラストシーンでは早苗は病魔に侵される康之をブラジル脳線虫に寄生させ楽にさせていました。依田の死と早苗への愛の衝撃がありながら、ラストシーンでも強烈な話を持ってくるのはやっぱり、作家さんってすごい、、と思わせられました。
後で調べると貴志祐介さんはラストを考えて、それから逆算してストーリーを考えられるみたいです。すごいなあ、、。

ラストシーンも胸に残りましたが、私はやっぱり依田の愛が分かったところが最も印象的でした。私が最も恐れていることは何だろうと考えます。
文字にしたくないけど、頭にはっきりとひとつ浮かびます。私がブラジル脳線虫に寄生されたら…
恐ろしいです。こんなことを考えるから不安症が加速するんですね、きっと。

早苗には依田と幸せになって欲しかったです。歳を重ねるにつれて辛い描写が受け入れられなくなる。本当に辛いことを経験していくからでしょうか。

読み終わった翌朝のインスタントのお味噌汁で、お揚げが虫のように縮まってるのを見つけました。食べれました。そうめんは、食べられるかな?ちょっとどきどき。

貴志祐介さんの著書、他にも読んでみたいです。
また読書したら感想文を記したい。
映画より文字を打つ手が進むのは私の脳が映像より文章を記録しやすいように設計されているからでしょうか?

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