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年よりの独り言~若者たちへ

我々は急がなくてはならない、それは単に時々刻々死に近づくからだけではなく、物事にたいする洞察力や注意力が死ぬ前にすでに働かなくなってくるからである。

マルクス・アウレリウス「自省録」より

年取って思うのは、若い頃なるべくやりたいことをやってきたことが今も自分の中味になっているということであります。

ワシはとにかくやりたいことをやってきましたのじゃ。諸国放浪ということで世界中をまわり申した。独身時代にはたった一人で。カミさんと結婚したら2人っきりで。不幸にも(今となってはせんないことであるが)子どもが出来なかったので、そのお金を海外旅行につぎ込みましたのじゃ。

もしこれらの旅行をしなかったら現在の貯金は数倍ぐらい、
もしくは1桁違っていたかもしれんかの~。

だけど全く後悔はありもうさん。素晴らしい思い出ができましたからの。もし今そういったことをせずに貯金が倍以上あっても、これから海外旅行に行く気にはなれませんのじゃ。

毎年毎年今年はどこへ行こうかなと思っており申した。旅というのは企画と構想をしているときが一番愉快でありまするゆえ。いつもそれを年がら年中考え、カミさんと話し申した。しかし会社が潰れたり流石にお金がなくなり、できなくなりましたのじゃ。そしてある時からお金の問題ではなく、段々その気がなくなりましたのじゃ。

いつの間にか面倒になってしもうた。

外に向いていた自分の興味が、ある時自分の内側に向かっていることに気がついたのですのじゃ。
年齢を重ねるにしたがって人はそうなっていくものであり申す。年とっても外に興味を持ち続け内面を無視し続けると危機が訪れることになりますのじゃ。

ユングはそれを「中年の危機」と呼んでおる。それを理解せずに若気の至りを中年以降も続けているとストレスに耐えきれず鬱になったり周囲と摩擦を起こし、事故を引きおこしますのじゃ。くわばらくわばら。

私も旅という娯楽を続けている時は充実しておりましたが、仕事の上では常に落胆と失望を繰り返していましたのじゃ。本当はやりたいことがあったのにいつの間にか「お金」のためだけに働き続けて来た。そこで失ったものはもはや取り返しがつきもうさん。

若い方がもしこれを読んでいたら一つ言いたいことがあります、聞いてくだされ。

「本当にやりたいことをやってください。」

あなたは言うはずじゃ。「勝手なことを言うなクソジジイ。お金はどうするんだ。先々のことを考えずに好きなことをやっていたらどうなるんだ。」と。仰る通り。実に無責任な発言であり申す。ですが、

今やりたいことは今しかできない

                       のである。若さというのは失敗しても取り返せるだけのエネルギーと時間があるということ、無茶をできるということなのじゃ。

自分の至福に従えば、お金があってもなくても至福があります。しかしお金に従ったら、お金を失ってしまえば何も残りません。安全な道が実は安全ではなく、探求の豊かさが積み重なっていくような道が正しい道なのです。

ジョーセフ・キャンベル 「ジョーゼフキャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である」より

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