それほどでもない

食べるのが好きだ。おなかがすくと集中力が目に見えてなくなるのが自分でわかるので、仕事のときは一時間に一回はお菓子をつまんでいた。三食もしっかり食べる。時間がずれたり、一食でも欠けようものなら機嫌が悪くなり、「おなかすいた……」を繰り返す自分が止められない。

会社などで毎日同じ人と食事をしていると、だいたい初対面から三日目くらいに「よく食べるね」と言われる。見かけですずめの涙くらいしか食べないと思われるらしい。体の中に栄養をたくわえられないから食べるのであって、私にとっては当然のことだと言われるたびに疑問に思う。

先日、ひとりでご飯を食べに行った。ライブ帰りで汗もかいたしビールが飲みたい、でもきっちり食べたい、とあまり広くない中華料理屋に入った。店内はすいていて、私の座ったテーブルのとなり一つ空いた先に、中年の会社帰りと思われる男性四人がいた。テーブルには瓶ビール何本かと、食べつくされたお皿が広げられている。おじさん達は「あーよく食べた」「食べ過ぎて苦しいな」などとわいわいしていて、宴はもうすぐ終わりそうな雰囲気だった。

私がこの店に入った目的は、一、ビール、ニ、ごはん(つまみでなくしっかりした食べ物)、三、ビールといったらギョウザ、だった。この三点は絶対頼む、という意思を持ってメニューを選ぶ。

皿まで食べたい! というテンションだったので、オーダーを言う声も、はっきりきっぱりとしていた。

「生中ひとつと、焼きギョウザ、海鮮五目汁ソバください」

その一瞬、おじさん達が静まり返った。ややあって、

「そういやギャル曽根ってよくテレビに出てる子いるだろ? あの子とか見かけは普通なのによく食べるよな」

おじさん、私のこと見て連想したでしょ、今! まさにそんなタイミングだった。

そういえば昔、ひとりで吉野家に行って牛丼大盛りをたのむという話をしたら英会話の先生に驚かれたこともある。なにせ英語なので、彼が「大盛り」に驚いたのか、それとも「ひとりで吉野家」だったのか、そこのところはよくわからないが。

しかしあの日のビールはうまかった。汁まで残さず食べ、おなかをさすりながら帰ったけれど後悔はしていない。ギャル曽根くらい食べられたら楽しそうだなぁ、と何十分の一くらいしか食べられない身で思った。

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食にこだわっていた30代前半の頃に書いたもの。いいなぁいっぱい食べられて。20代の頃は牛丼大盛食べてたなぁ。並盛ってごはん少なくないですか?肉が3分の1くらい余るので、肉の量そのままでごはんを多くしたら、ちょうどいいじゃん!って大盛を食べてた。いま(40代後半)は、小盛?とかいうニューフェイスばかり頼んでいます。牛丼自体食べなくなったなぁ、、、

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