「幻滅」(トーマス・マン)

 妙な男が幻滅について話します。ひねくれた性格になるくらい幻滅が身近な男だそうです。語り口は全てに期待しすぎているところがあります。自分の人生や他人、自然現象など全ての物事に期待してしまっています。彼は世界よりも言葉のほうが豊かなものに思えるという、独特な価値観を持っています。今では現実から目をそらすために星空を見上げるくらいしか退屈しのぎにならないという残念な人生です。彼は、最後の希望のように死に期待していながら、おそらくまた幻滅してしまうのだろうと諦めつつあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?