【訳詩】夜が深まる
エミリー・ブロンテ
私のまわりで夜が深まる
荒々しい風が冷たく吹きつける
暴君のような天気が私をせかすが
私は決して、決して行けない
巨大な木が曲がっている
剥き出しの枝が雪で撓る
嵐が瞬時に近づいてくる
それでも行けない
頭上に雲が折り重なる
足元には塵芥が溜まる
でもどんなに荒涼なものさえ
私を動かせない
私はどうしても行きたくない
行けない
『嵐が丘』で有名なエミリー・ブロンテの詩を訳しました。短いし、特に難しい表現も使っていないのですが、解釈しずらいところがあります。繰り返される「行けない」(原文では I cannot go)は、どこに行けないのかと考えてしまいます。
絶対的な詩の解釈はないので、読んだ人が決めれば良いのでしょう。私はあの世に行けない、つまり死にたくない気持ちを表現しているのでは、と思います。彼女の作品からは書くことへの情熱が伝わってきます。
死んでしまえば、創作もできません。たとえ辛い世の中でも、この世にとどまって書き続けたいことをこの詩で表現したかったのかもしれません。でもエミリーは30歳の若さでこの世を去ります。それを考えると、この詩は切ないです。
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