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ワインのあれやこれや

いきなりですが、
「自然派ワイン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

今、世間的には「ナチュラルワイン(Natural Wine)」とか「ヴァンナチュール(Vin Nature)」と呼ばれることが多くなり、
以前ほど「自然派ワイン」という言葉を見聞きしなくなった気がします。

これについて、あくまで私見ですが、
「自然派」という日本語と「ワイン」という英語の合わさった言葉が
なんかしっくりこないからなのかなあと。
だからと言って「自然派葡萄酒」では、全然キャッチーじゃないですよね笑。

なので、ここに来て「ナチュールワイン」という言葉が蔓延り始めていることからも目を逸らすことは出来ません。

「ヴァン」だと「ワイン」と分かりづらい。
「ナチュラル」より「ナチュール」の方がオシャレっぽい。
結果「ナチュールワイン」って言いたい。
そんなところなのでしょうか。

先の私見と同じ理由で
フランス語と英語からなる「ナチュールワイン」という造語は、やはり僕的にはしっくりきません。

それでも、今や「ナチュールワイン」という言葉はファッション性を帯び、
飲み手だけに留まらず、注ぎ手すら「ファッション」が増えてきたように思います。



その流れで言えば「オレンジワイン」というのも。
この言葉が出始めた当初は、同じ果物として勘違いが生まれないように
我々の周りでは「オレンジカラーワイン」と言っていた気がします。
今でも「アンバー」という言葉を好む作り手が多い印象も。

「ナチュールワイン」と同様に「オレンジワイン」というのもファッション性が強い言葉だなあと思っています。

Instagramの投稿では触れたことがありますが、液体の色がたとえ白くなくても、作り手たちが「Bianco(その他各国の言葉で白を表す言葉)」と表記し続ける限り、うちの店では「白ワイン」です。

作り手によっては「Bianco Antico」
つまり「伝統的な白ワイン」と表記したりも。

古い宗教画なんかで、「アンバー」な色合いの液体がグラスに注がれていることからも見受けられるように、
果皮などを除く機械が発達する以前には、
この色合いのワインが「白ワイン」として当たり前でした。


なので、プンテでは「色の濃いめの白ワインありますか?」って聞いてもらえると嬉しいし、「オレンジワインありますか?」って聞かれたら、黙って「色の濃いめの白ワイン」を注がせていただきます。

僕ら注ぎ手は、飲み手に、作り手の想いを伝えるアンカーなので、ご理解いただけると幸いです。


少し話を戻しまして。
僕はこれまでワインについての情報を発信しようという際に「ナチュラルワイン」や「ヴァンナチュール」という言葉を極力避けてきました。

それぞれの作り手の中にそれぞれの哲学や理念があるわけで、
我々注ぎ手や飲み手には『これはナチュラルで、これはナチュラルではない』という線引きが到底出来ないからです。

その曖昧さをいいことに
いわゆる「ナチュラルワイン」とは言えないのではないか
と思えるような代物すら「ナチュールワイン」の仮面を被り、
愛を込めて作られた素敵で偉大なワインたちと十把一絡げになっている現状は大変嘆かわしいことであります。


アルザスの生産者ジュリアン・メイエのパトリックの言葉で大好きなものがあります。

「添加物を入れることは、売春婦を金で買ってセックスをするようなもの」

つまり、あんちゃん的に言えば
「そこに愛はあるのかい?」
ということなんじゃないかと解釈しています。


大好きな作り手達は、それはそれは途方もない仕事を行い、
極力人の手が介入しないワイン作りをしています。

あの手この手(何かしらを添加したり)を使えば、ある意味で人の手をかけずにワインを作ることも出来てしまいます。

確かに出来上がるものは、どちらも「ワイン」には違いありません。

愛を育んだ相手との愛のあるセックス
売春婦との愛のないセックス

後者がいいという人もゼロではないかも知れませんが、
僕はやっぱり前者がいい。



愛のあるワインを、愛を込めて注いでいきたい。

愛のあるワインを、ファッションで浪費するな。

愛のないやつは、愛のないやつに、愛のないワインでも注いでやがれ。

とは言え、その愛に気づく人が増えていくことを願います。


さ、言葉が乱暴になってまいりましたね。
この辺で失礼いたします。

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