【1日1事例】シームレスな医療と介護の実践 ―退院時住環境変更と訪問リハビリテーションの効果― #訪問リハビリテーション #住環境設定 #医療と介護の連携

参考文献:シームレスな医療と介護の実践 ―退院時住環境変更と訪問リハビリテーションの効果―
筆者:梅木 千鶴子, 斎藤 祐美子, 斎藤 和夫, 黒澤 萌, 森崎 秀子
発行日:2018年
掲載元:第53回日本理学療法学術大会 抄録集
検索方法:インターネット
キーワード:住環境設定, 訪問リハビリテーション, 医療と介護の連携

抄録:
【はじめに】
・病院から自宅退院したその日から、安全かつ快適な生活を送るためには適切な住環境整備が欠かせない。
・退院前に患者宅へ訪問し、家屋内・外の環境、患者の身体機能に合わせた諸動作の確認、家屋改修・福祉用具の必要性や介護力と介護方法の検討、患者・家族の意向確認、介護支援専門員や改修業者、福祉用具業者との情報共有等の家屋評価を行い、退院準備をすすめている。
・今回、回復期病棟入院中に担当した患者を訪問リハビリテーション(以下、訪問リハビリ)にて継続して担当する機会を得た。
・回復期から生活期に移行後、目覚ましい身体機能回復を目の当たりにし、住環境設定を変更することになった。
・そこで退院前の家屋評価による住環境設定を振り返り、その後の変化について報告する。
【方法】
・症例は、塞栓性脳梗塞により高次脳機能障害と左片麻痺を呈した80歳代の男性である。既往歴には糖尿病があり、脳梗塞発症前より認知症を発症していた。発症後およそ1ヵ月後に当院に転入院され、回復期病棟でのリハビリテーションが開始となった。
・開始時はJCSⅡ桁、失語症があり、経管栄養、立ち上がりは二人介助だった。開始後3ヵ月で、JCSⅠ桁、経口摂取、歩行練習が可能となるまでに回復した。しかし、覚醒の向上とともに、易怒性や暴力・暴言、介護拒否がみられ、退院時のFIM運動項目26点、認知項目11点と重度介助を要す状況での自宅退院となった。
・退院23日前に家庭訪問し、家屋評価を実施。覚醒のムラや介護拒否などから、屋内外とも車椅子移動とし、介護用ベッドをレンタル、入浴はデイサービス利用。玄関まで車椅子での移動が困難であり、スロープをレンタルし、居間の掃き出し窓から出入りを行うこととした。
・退院後はデイサービス、ショートステイ、福祉用具、訪問リハビリの介護保険サービスを利用した。
【結果】
・週1回の訪問リハビリでは、健康状態の確認、ストレッチや筋力増強運動、歩行練習に加え、自家用車の移乗練習等、生活で必要な動作練習、介助方法指導を行った。
・また主介護者である妻の不安を聴取し、対応について話し合った。
・入院中の不穏な面はみられず、動作練習に協力的であった。
下肢筋力および歩行能力向上し、訪問開始から4ヵ月後に屋内への出入りをスロープから据え置き型の手すり付き階段へ変更。
・8ヵ月後には屋内移動を車椅子から歩行へと変更し、車椅子を返却した。
・現在は、FIM運動項目56点、認知項目13点、床からの立ち上がり練習を行い、自宅での入浴を目指している。
【結論】
・介護負担が多く転倒の危険性が高い時期には安全に過ごすことを優先した。
・自宅は安心した環境であり、混乱少なく在宅生活に適応できた。
・定期的な訪問リハビリにより機能変化を捉え、適切な時期に住環境を変化させたことで、予想を上回る回復を遂げた。
・病院だけで完結させるのではなく、継ぎ目のないリハビリテーションを提供できるよう医療と介護の連携が必要である。


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_G-83_1/_pdf/-char/ja


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