【1日1事例】健康格差社会と転倒予防 #健康格差 #ゼロ次予防 #転倒予防

参考文献:健康格差社会と転倒予防
筆者:近藤 克則
発行日:2019年
掲載元:日本転倒予防学会誌 6 巻 (2019) 1 号
検索方法:インターネット
キーワード:健康格差社会, 健康の社会的決定要因, 環境要因, 社会参加, ゼロ次予防

【抄録】
・「健康日本21(第2 次)」で「健康格差の縮小」が政策目標になった。転倒やその関連要因における健康格差を紹介し,環境への介入による対策の可能性を示したい。
・健康格差とは,「地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差」のことである。転倒についても,都市に比べて農村,高所得・高学歴者に比べて低所得・低学歴者に多いという健康格差がある。その生成プロセスは,地域レベルの因子や社会階層,社会参加,ネットワーク・サポートなどの社会経済的因子が,うつや歩行量などに影響を及ぼし,それらが転倒を増減するものである。
・社会参加を促す地域介入を試みると,社会参加は増え,参加群で認定率が低かった。今後,どのような環境への介入で,人々の行動がどのように変わり,健康指標まで改善するのかを検証し,効果的なゼロ次予防策を蓄積していく必要がある。
メモ
・スポーツグループに参加していない者に比べ,ス ポーツグループ参加者では,参加頻度が増えるにつれて 転倒経験が「何度もある」のオッズ比が小さくなってい た
・このようにスポーツグループへの参加は転倒リスクを 抑制するが,どのような人でスポーツグループ参加割合 は高いのか。要介護認定を受けていない78,002 人の高 齢者を対象に出現割合比(Prevalence Ratio:PR)を求めた。すると,教育年数が短い者,低所得者, 就業者,最長職が農林・漁業職で有意に低かった。つま り,社会経済的な集団間には,スポーツグループへの参加など健康に望ましい行動における格差もみられることが分かる。
・30 年ほどの間に,運動・スポーツを週 3 日以上する人の割合は 3 倍近くに増えている。これほど の差は,この 30 年間に運動好きな遺伝子などを持つ個人が 3 倍に増えたというよりは,社会環境の変化の影響 を受けたとみるほうが自然だろう
・つまり,転倒リスクにも,個人の持つ属性というミク ロの要因に加えて,暮らしている環境というマクロの要 因も関与しているとみることができる。
・都市的 / 農村的環境や,所得格差の大きさ,ソーシャル・キャピタル(人々のつながり)の豊かさなど地 域レベルの社会経済的因子から,学歴や所得などの社 会階層,社会参加とそこから得られる社会的サポート・ ネットワーク,うつなどの心理的因子や趣味・生きがい など外出目的や機会の多さなどを通じて,歩行量や運動 習慣に影響を及ぼし,それらが転倒を増減するというプ ロセスである。
・同じ運動でも,一人でしている人よりもグループで運動している人のほうが, 転倒リスクが 25 %(オッズ比 0.75)も低い 。つまり, 健康(行動)や転倒を,個人の行動(選択)によってのみ規定されているという個人主義的な健康観を超えて, 地域環境や社会経済的要因,人間関係や社会参加のしや すさの影響も受けているという生態学的な健康観,言い 換えれば「木だけでなく森を見る」健康観が必要である。
・健康を損なう「原因」 を知らないから行動できないのではない。運動不足など 転倒や生活習慣病の直接的な「原因」に目を奪われてい ると,健康教育や自己責任論に傾きがちである。
・しかし 社会的に不利な層ほど,健康を気遣う余裕や行動に必要 な資源が不足していて「わかっていても(継続)できな い」層が多いのだ。実際,システマティックレビューで も,生活習慣に関する情報を提供して健康行動の変容を 引き出そうという方法は,病気のない一般集団に対して はほとんど効果がみられなかったと報告されている

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tentouyobou/6/1/6_5/_pdf/-char/ja


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