【1日1事例】訪問リハビリテーション利用者における生活空間が狭小化した2症例について #訪問リハビリテーション #ADL #生活空間

参考文献:訪問リハビリテーション利用者における生活空間が狭小化した2症例について
筆者:石田 猛流, 楠原 剛, 桒原 眞樹, 原田 卓
発行日:2021年
掲載元:九州理学療法士学術大会2021
検索方法:インターネット
キーワード: 訪問リハビリテーション, ADL, 生活空間

抄録:
【目的】
・訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)は、在宅生活において日常生活の自立と社会参加を目的として提供されるサービスである。
・しかし、身体障害に問題を抱えている訪問リハ利用者は生活空間が狭小化しやすく、うつ状態などの精神機能低下を招く恐れもある。
・当事業所の中でも生活空間が狭小化している利用者がおり、訪問リハ開始時と比較しADL が向上している者もいれば、低下している者もいた。
・今回はその利用者間でどのような違いがあるのか明らかにすることを目的とした。
【対象者】
・利用者A(以下、A):80 代男性。要介護2 第1 腰椎圧迫骨折で当院に入院し自宅退院後、訪問リハ40 分× 2 回/ 週実施 室内は独歩自立レベル
・利用者B(以下、B):90 代男性。要介護1 心原性脳塞栓症で当院に入院し自宅退院後、訪問リハ60 分× 2 回/ 週実施 室内はシルバーカー自立レベル
【方法】
・後方視的に、日常生活活動としてFunctional Independence Measure(以下、FIM)の運動項目、生活空間としてLife space Assessment(以下、LSA)の訪問リハ開始時と6か月後の合計得点を比較した。
・また、生活状況として1 日の行動記録と家事の有無、臥床時間の把握として6つの質問をご家族または本人から聴取した。
【結果】
・A は、FIM56 → 40 点、LSA19 → 13 点とFIM の低下、生活空間が狭小化している。1 日の行動記録として、24 時間のうち21 時間はベッドまたはリビングのソファに臥床している。食事はリビングで自己摂取しているが、更衣・入浴は妻が全介助で実施している。したがって自分で行動することが極端に少ないことが分かった。
・B は、FIM69 → 73 点、LSA20 → 8 点とFIM は向上しているが生活空間の狭小化がみられた。1 日の行動記録として就寝時間は12 時間、食事・整容・更衣は自立、入浴は訪問介護を利用し見守りで実施出来ている。家事などは妻と2 人で協力していることが分かった。
【考察】
・今回の研究にて、A とB では生活空間に差はなかったが、日常生活動作において差がみられたことが明らかとなった。
・LSA に関してA・B 共に低下しているが、FIM に関してA は低下しB は向上している。A は家事やセルフケアを全て妻に〈任せている〉。そのため、A の自発性の低下に繋がり、さらに意欲の低下に繋がっていると考える。
・一方、Bは自ら進んで家事やセルフケアを〈しなくてはいけない〉と考えている。そのことから、B 自身の意欲・自発性の向上に繋がっていると考える。
・A の意欲・自発性低下の原因は過介助、環境面にあると考える。過介助に対しては、一度できるADL がどの程度かを本人・妻に理解してもらうことが重要である。リハビリ時間は限られているため、妻にも協力してもらいリハビリ時間以外でも本人にセルフケアを行うようにする必要があると考える。
・環境面に対しては、妻や本人に活動することの重要性を説明し、訪問リハ以外のサービスを積極的に取り入れる必要があると考える。また、本人が活動しやすいように自宅内に手すりを設置する等、福祉用具を利用する必要があるとも考える。環境面の整備により活動量が増加し、しているADL が向上すると、自然と過介助の減少にも繋がるのではないかと考える。
【まとめ】
・しているADL が増えることで本人の意欲・自発性が向上し、過介助の減少にも繋がる。
・また、通所サービス等を利用し外出頻度を増加させ他人との関わりを増やすことで、生活空間の拡大や精神機能向上も期待出来る。
・訪問リハスタッフが本人やご家族に対し日常生活をより良いものにするためにマネジメントを行うのも重要であると考える。

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyushupt/2021/0/2021_8/_pdf/-char/ja


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?