【1日1事例】健康格差縮小と21世紀型健康教育・ヘルスプロモーション #健康教育21 #健康格差 #ゼロ次予防

参考文献:健康格差縮小と21世紀型健康教育・ヘルスプロモーション
筆者:近藤 克則
発行日:2019年
掲載元:日本健康教育学会誌 27 巻 (2019) 4 号
検索方法:インターネット
キーワード:健康格差縮小, 健康教育21, ヘルスプロモーション, ゼロ次予防, 環境への介入

【抄録】
・日本でも「健康日本21(第2次)」で「健康格差の縮小」が政策目標となった.しかし健康教育は,深く考えずに推し進めれば,健康格差をむしろ拡大しかねない.低学歴,非正規雇用,低所得で困窮している人たちほど,健診や健康教室に参加せず,健康情報を得る機会が少なく,知識はあっても処理能力に余裕がない傾向があるからである.
・ではどうしたら良いか.その手がかりは,ヘルスプロモーションのオタワ憲章などで示された「健康的な公共政策の確立」「支援的な環境の創造」「コミュニティの活動強化」など環境への介入である.それを進めるためには,その重要性を健康・医療政策に留まらない公共政策,環境・コミュニティづくりを担っている人・部門に対して伝えることが必要となる.
・従来型の健康教育から「健康格差の縮小」に寄与する21世紀型の「健康教育21」にしていくには 3つの見直しが必要である.
1)生活習慣・行動変容を本人に迫る内容から,暮らしているだけで健康になる環境づくり「ゼロ次予防」への内容の拡大
2)ヘルスセクターや一般の人たちに留まらず,非ヘルスセクターや民間事業者への対象の拡大
3)教育方法の研究・開発・普及において,知識伝授型教育から行動経済学などの知見を踏まえた認知・処理能力を重視した方法への変革.
ヘルスプロモーションを実現するために,21世紀型「健康教育21」へのシフトが必要である.
メモ
・「ゼロ次予 防」とは「原因となる社会経済的,環境的,行動 的条件の発生を防ぐための対策を取る」ことと 「WHO の標準疫学」)の中で定義されている.言 い換えれば,本人が健康に無関心であったり,関 心を寄せる余裕がなかったりする人でも,そのコ ミュニティに「暮らしているだけで健康に(望ま しい行動をとるように)なる(社会経済的な)環 境づくり」「長生きできる町」)づくりがゼロ次予 防の目指すものである.
・ヘルスプロ モーションの定義「人々が自らの健康とその決定 要因をコントロールし,改善することができるよ うにするプロセス」)に則して言えば,決定要因で ある社会環境をコントールし改善することの重要 性が WHO の総会決議(2009))や「健康日本(第 2 次)」(2013-))で,保健医療専門職の間で は共有されるようになった
・欠乏・困窮状態にさらされる時,同じ人でも, ものわかりが悪く,遂行ができなくなってしまう. つまり,その原因は知識不足ではない.欠乏や困 窮が認知・遂行能力の低下を引き起きしていると 考えられる
・低学歴,非正規 雇用,低所得で困窮している人たちは,健康情報 を得る機会が少ないだけでなく,「 1 年後の健康」 よりも「今日の生活のやりくり」や「明日の生活 不安や心配」が頭を占めているために,知識は あっても処理能力に余裕がないことがあるからで ある.一方で,健康格差の縮小策として期待され るのも健康教育である.


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/27/4/27_369/_pdf/-char/ja


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