【1日1事例】自然環境や自然体験を活用した健康づくり、健康格差の緩和の可能性 #健康格差 #自然体験 #自然環境

参考文献:自然環境や自然体験を活用した健康づくり、健康格差の緩和の可能性
筆者:居﨑 時江
発行日:2021年
掲載元:野外教育研究 24 巻 (2021)
検索方法:インターネット

【全体】
・第一に、自然環境や自然体験と 健康の関連を成人期以降および幼少期に分け て概観する(2.1.)。
・第二に、自然環境や自然体験 の社会経済的状況による格差について成人期 以降および幼少期に分けて先行研究を整理す る(2.2.)。
・第三に、自然環境や自然体験が社会経 済的状況による健康格差を緩和する可能性に ついて成人期以降および幼少期に分けて先行 研究を整理する(2.3.)。
・ 最後に、上記(2.1.、2.2.、2.3.)を通観し、自 然環境や自然体験がもたらす心身の健康、健康 格差の緩和に関する研究結果の特徴から、どの ようにすれば自然環境や自然体験の恩恵が偏 りなくもたらされるかを、野外教育の視点から 提言する(3.)。

メモ
・自然の中での野外活動は、身体活動量を増や し、人や自然との関わりを通して子どもの脳の 健全な発達を助長するとされている
・所得や教育歴といった社会経済的状況が 異なるグループ間の健康状態の違いを示す“健 康格差”を自然環境が緩和しているという報告 がある。その理由の一部として自然環境が身 体活動の促進、人との関わりの育成に貢献して いることが挙げられている。
・健康格差を緩和させるために、健康づくりができる、持続可能な コミュニティー形成を目標にあげ、その目標の 達成するために、自然環境は重要であるとして いる。
・子ども の自然環境への接触や自然体験への参加にお いて所得や教育歴などの社会経済的状況によ り格差があるという注目すべき事態が報告さ れている 6
・本研究では、自然環境や自然体験を活用した 健康づくりを可能にする社会の形成に貢献す るために、まず、自然環境と自然体験がもたら す人間の心身の健康への効果を検討する。
・また、 自然環境や自然体験からの恩恵を受けること ができるかどうかについて社会経済的に左右 される状況を概観し、自然環境や自然体験を活 用した健康格差の緩和の可能性を、主に諸外国 の文献研究で検討を行う。
・これらを踏まえた上 で、野外教育の分野で自然環境や自然体験を活 用した健康づくり、健康格差の緩和に向けて何 ができるのかを模索する。
・自然環境が有する人間の心身への健康上の 効果は多く考察されている。例えば、Davern らは系統的レビューにおいて自然環境が健康や福祉にいかなる影響を与えるか様々な観点から述べている。
・例えば、身体的健康への効果と して、自然環境が身体活動を促進することによ る肥満の予防、罹患率の低下、ヒーリングなどが挙げられている。
・また、精神的健康への効果 として、ストレス軽減、リラクゼーション、攻 撃性、暴行、犯罪の軽減、社会性の形成が挙げられる。
・さらに、最適な気候の温存、水文学的 利益、受粉、二酸化炭素貯蓄、騒音緩和、空気 の浄化、暴風雨の防止、健全な土壌の保持、生 物多様性の維持、など、自然環境の保障、生態 系の維持に寄与することを通して人間に健康 上の利益が享受されるとしている。
・居住地の近隣に 緑地がある人では 5 年後の存命率は居住地近隣に緑地がない人の 1.13(95%信頼区間 1.03‐ 1.24)倍と高かった。
・自然環境や自然体験が精神的健康に効果的 であるもう一つの理由として、自然環境や自然 体験が、人との関わりの場を多様に提供できる ことが挙げられている。
・屋外の自然環境空間は子どもの成長発達のため だけでなく母親の気分転換の場やコミュニケ ーションの場として活用が期待できることを指摘している。
・自然環境、自然体験は子どもの 心身の健康に加えて子どもの保護者の精神的 健康ならびに子どもや保護者が活動するコミ ュニティー維持のため、必要不可欠である。
・日本でも経済力が乏しい家庭の子どもが獲 得できる体験の貧しさは課題の一つである。例 えば、国立青少年教育振興機構の報告書は、親 の収入によって子どもが参加する自然体験に 違いが生じていることを示している。
・子どもの 頃の自然体験への参加の頻度において保護者 の経済力による格差があるのである
・その中で 自然環境への接触による精神的健康における 格差の緩和について、自然環境への接触と、精神的健康への間には、一定の因果関係を見出す ことができるが、自然環境が身体活動を促進す ることによってもたらされる効果は測定上の 難しさからか必ずしも一貫した結果が得られ ないと報告している。
・また、自然環境が社会 的結束を促進することによる健康上の効果が得られているとも述べている。生活圏にある自然環境の規模は人々の健康状態に影響するだ けでなく、人々の孤独感の緩和、社会的支援の形成にも影響を及ぼすということである。
・加えて、地域のガーデンや構造化されたガーデニン グプログラムが栄養学的な知識や身体活動を増進させるという報告もされている。自然環境や自然体験が貧困層の食生活を向上させ、健康を維持増進する可能性を示唆していると言えよう
・幼少期の子どもの行動は保護者の興味や行 動に大いに影響されるため、より多くの子ども が自然体験活動に参加するためには保護者や 成人への働きかけが必要である 。また、保護 者や成人に対して自然環境や自然体験が心身 の健康の上で重要であることの理解を促す必 要もある
・一方で、自然体験プログラムの展開を通して、 参加者である子どもや保護者が人との関わりを充実させるためには、参加者が安心して仲間 を作ることができるようサポートすることも欠かせない。そのためにも、言語や文化的背景 による価値観の相違等に配慮しつつ、社会経済 的状況ごとの支援のあり方を模索するべきで あろう。
・さらには、居住地域の環境を整備することも 欠かせないと考える。自然環境との接触や自然 体験への参加は、遠方に赴き原生林とふれ合うものもあれば、家庭内の庭や近所の公園での身 近な自然に親しむものなど多様な展開ができる。特に都心部では身近な場所に自然環境を整備し、その身近な自然を活用する自然体験活 動の展開のあり方を模索することも意義がある。
・ そして、野外教育の分野における体験プログ ラムの多くは学校教育や社会教育の場で展開 されることが多い。社会経済的地位が低い子ど もが多く通う学校では、課外時間が少なく体験の乏しさが示唆されていた。学校や社会教育施設といったコミュニティーは、様々な事情を 抱える成長期の子どもや成人が集まり、かつ公 的資金を投じやすい場所である。そのため、公共の機関が率先して子どもの社会経済的状況を把握し、彼らが平等に自然環境に接触したり、 自然体験に参加したりできるような試みを行 うことが期待される。


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/joej/24/0/24_2021_0005/_pdf/-char/ja

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