【1日1事例】慢性疼痛の恐怖回避モデルに陥った在宅高齢者の一症例に対する訪問リハビリテーションの経験 -訪問リハ開始後の変化について- #訪問リハビリテーション #慢性疼痛 #恐怖回避モデル

参考文献:慢性疼痛の恐怖回避モデルに陥った在宅高齢者の一症例に対する訪問リハビリテーションの経験 -訪問リハ開始後の変化について-
筆者:田中 陽理, 片岡 英樹, 岩佐 恭平, 山下 潤一郎
発行日:2018年
掲載元:第53回日本理学療法学術大会 抄録集
検索方法:インターネット
キーワード:訪問リハビリテーション, 慢性疼痛, 恐怖回避モデル

抄録:
【はじめに】
・今回,慢性疼痛の恐怖回避(fear-avoidance)モデルに陥った在宅高齢者に訪問リハビリテーション(訪問リハ)を行った結果,良好な成績が得られたので報告する.
【方法】
・症例は脊椎圧迫骨折(VCF)の既往をもつ自宅療養中の60歳台後半の女性で,生活機能低下からX年に週2回の訪問リハが開始となった.
・初期評価時の問診では,症例からは「自分はこんな体だから何もできない」,症例の夫からは「妻は何もできないから入浴や更衣の介助,家事はすべて私がやっている」との発言が聞かれた.
・姿勢は円背と左凸の側弯が著明で,背臥位が困難であった.
・腰背部痛(LBP)はNRS6,痛みの破局的思考を評価するPain catastrophizing scale(PCS)は27点,痛みに伴う運動恐怖を評価するTampa scale for kinesiophobia-11(TSK11)は41点と高値であり,転倒自己効力感(FES)は23点と低値であった.
・また,Timed up and go test(TUGT)は24秒と遅延しており,Functional independence measure(FIM)は107点,Frenchay activities index(FAI)は13点と低値であった.Life space assessment(LSA)は15点と低値であり,QOLの評価であるEuroQol5Dimension(EQ5D)の効用値も0.216と低値であった.
・一方,夫より聴取したZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI_8)は8点と低値であった.
・以上の評価結果から,強いLBPの継続に伴う痛みの破局的思考や運動恐怖といった認知・情動面の問題に加え,夫の過介助も相まって不活動状態が継続しているものと考えられた.
・不活動状態の継続は,異常姿勢,歩行能力やADLの低下,生活空間の狭小化といった活動・参加能力の低下に加え,QOLの低下を招いているものと考えられ,慢性疼痛の悪循環である恐怖回避(fear-avoidance)モデルに陥っていることが伺われた.
・そこで,訪問リハでは症例の身体や痛みについての認識を聞き取り,動いてもLBPが増悪しないことを説明しながら運動療法や動作指導を進めた.
・まずベッドやソファでの起立練習を反復し,動いても痛みがないことを再認識してもらった.
・夫の過介助に対しては,更衣・入浴動作を夫の前で確認し練習することで,介助がなくとも更衣・入浴動作が可能なことを確認していった.
・リハ時間以外での活動の重要性を説明し,外出など活動量を増やすように指導し,改善点についてはフィードバックとともに称賛を与えた.
【結果】
・6ヶ月後には背臥位も可能となり,NRS:0,PCS:0点,TSK11:13点,TUGT:10.2秒,FIM:119点,J-ZBI_8:8点,FAI:20点,LSA:24点,EQ5D:0.640,FES:33点となり多くの評価項目で改善がみられた.
・症例から「動いても痛くならない,むしろ動いた方が良い」夫からは「お風呂や着替えの手伝いが要らなくなった」との発言があった.
【結論】
・本症例の生活場面で痛みと活動の関係性について症例や家族の理解を促しながら直接動作指導ができたことで, fear-avoidanceからの脱却を促すことに繋がったと考える.


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_G-98_2/_pdf/-char/ja


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