【1日1文献】ビッグデータ解析手法に基づいた変形性膝関節症患者の膝関節負荷に関連する歩行特徴の抽出#変形性膝関節症#ビッグデータ#膝関節内反モーメント

参考文献:ビッグデータ解析手法に基づいた変形性膝関節症患者の膝関節負荷に関連する歩行特徴の抽出
筆者:倉本 仁, 間野 直人, 森 公彦, 伊藤 駿, 桑原 嵩幸, 小西 隆幸, 牛久保 智宏, 金 光浩, 長谷 公隆
発行日:2022年
掲載元:運動器理学療法学 2 巻 (2022) Supplement 号
検索方法:インターネット
キーワード:変形性膝関節症、ビッグデータ、膝関節内反モーメント

【はじめに、目的】
・変形性膝関節症(KOA)患者の膝関節負荷に関連する歩行時外的膝 関節内反モーメント(KAM)の軽減は保存療法における最も重要な治 療戦略の 1 つである。
・体幹および下肢関節角度の変化に伴う KAM の 増減を管理するための最適な運動療法や歩行指導はKOA 患者自らが 選択する代償的戦略によって異なる可能性がある。
・この KOA 患者の 運動戦略を定量化する歩行解析から得られる情報量は膨大であり、潜 在的に重要な特徴を埋伏してしまう。
・したがって、歩行周期(GC)に おいて時系列性のある運動学的、運動力学的特徴を抽出し、その特徴量 の類型化を行うことは、治療方針決定に有用となる。
・本研究の目的は、ビッグデータ解析手法により KOA 患者を KAM に関連する関節運動の波形データに基づいて類型化し、特徴づけるこ とである。

【方法】
・高位脛骨骨切り術前の KOA 患者 26 名(平均年齢 61.1±7.8 歳、男性 12 名、女性 14 名、術側mechanical alignment angle:MA angle 171.7 ±3.8°)、健常者 107 名(平均年齢 55.1±20.0 歳、男性52 名、女性 55 名)に対し、3 次元動作解析装置と床反力計(ANIMA 社)を用いて、 体幹、術側下肢関節の運動学および運動力学的指標を測定した。
・各運動 学的指標を 1%GC ごとの歩行周期の波形データとして抽出し、1200 項目の中から任意の複数の項目の組み合わせで構成されるマハラノビ ス距離を、健常者データを基準として算出した。
・KAM 積分値とマハラ ノビス距離の相関係数を最大化する運動学的指標を、高次元データの 情報削減に有用なマルコフ連鎖モンテカルロ法により抽出した。
・抽出 された指標を基に k-means 法によるクラスター解析を行い、対象を 2 群に類型化した。
・KAM と抽出された指標との Spearman の順位相関係数を算出し、各 群で KAM 積分値と関連する特徴的な指標を確認した。
・群間の特性を Wilcoxon の順位和検定を用いて比較した。統計学的有意水準は 5% と した。

【結果】
・KAM 積分値に関して、16 名のクラスター 1(C1)で 44%GC の膝関 節内反角度が有意に正の相関を示し(r=0.52)、10 名のクラスター 2 (C2)では 8-12%、42%、65-68%GC の術側への体幹回旋角度が有意に 負の相関を示した(r=-0.66~-0.78)。
・C1、C2 ともに MA angle と KAM 積分値に有意な相関を認めなかった。
・C1 は C2 よりも有意に高齢で あった(64.0±6.4 歳 vs56.5±7.8 歳、p=0.03)。
・KAM 積分値、MA angle において群間で有意差を認めなかった。

【結論】
・年齢層の低い KOA 患者では、立脚期において OA 側への体幹回旋 運動により重心を OA 側下肢へ近づける代償的戦略の有無が KAM に 影響し、一方、年齢層の高い KOA 患者では、立脚中期の Lateral Thrust などの膝関節内反運動に依存して KAM が増減する可能性がある。
・したがって、KAM を軽減するために、年齢層の低い KOA 患者に対して は歩行時の体幹回旋運動を誘導させること、一方、年齢層の高い KOA 患者に対しては立脚期の膝関節内反運動を軽減させることが重要であ ると推察される。
・ビッグデータ解析を利活用し、各歩行様式によって異 なる膝関節負荷と関連する特徴量を明らかにすることは、KOA 患者に 対する層別化治療を実現するブレイクスルーとなる可能性がある。

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jofmpt/2/Supplement/2_O-104/_pdf/-char/ja

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