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大切な人を失うこと(3) 彼女との出会い①

彼女との出会いは、そんなにロマンチックなものではなく、いわゆるマッチングアプリを通じて知り合った。

昨年11月の頭ごろだろうか。当時すでに司法浪人生であった私は、一人でいることの寂しさから、学習へのモチベーションが下がりつつあった。
そこで、素敵なパートナーが見つかれば、少しは生きるモチベーションも上がるのではと思い、マッチングアプリを始めたのであった。

私は、大学を卒業後一度就職し、数年間働いたのちに法科大学院に入学した。大学院の卒業後は、アルバイトをしながら学習を続けていたため、マッチングアプリのプロフィール上のステータスは「30歳 アルバイト」である。
当然、そのような人物が容易にマッチするはずもなく、稀にマッチしても、数回のやり取りの後に音信不通となるのがほとんどであった。

ある日、いつものようにアプリを起動させたところ、のちに婚約者となる、いずみ(仮名)という名前の女性からの足跡があった。
足跡を追って彼女のプロフィールを覗いてみたところ、清楚で可愛らしく、上品な姿の女性が顔を覗かせた。
画面をスクロールしながら彼女の自己紹介文を見てみると、働きながら、大学の通信教育過程で法律を勉強しているとのことだった。
もう少し読み進めると、「高校は音楽科でピアノを弾いていました。事情があって高校を中途退学しましたが、好きだった勉強に没頭できて幸せです!」と元気よく書いており、私とは全く異なった、面白いバックグラウンドを持っている人なのだなと感じた。
また、趣味のことについても詳しく書かれており、簡略な自己紹介文で済ます人が多い中で、これだけしっかりとした文章を書いているならば、真剣にお相手を探しているのだろうとも感じた。
さらに、プロフィール画像には某裁判所の写真も載せていたため、きっと真剣に法律を学ぼうとしているのだなと思い、彼女に興味を持ちはじめた。

これまで中々マッチングができなかった私は、ダメ元で彼女に"いいね"をしてみた。
すると、ほどなくして彼女からも"いいね"が返ってきた。晴れてマッチ成立である。

彼女とは、初回から20行超の長文のやりとりが続き、まずは主な共通点である法律の話から始まった。マッチングアプリといえば、通常は「初めまして◯◯です。よろしくお願いします!」といった簡単なやり取りから始まる物だと思っていたから、初めから熱量が高かった彼女とのやり取りは、とても新鮮だった。
彼女とは、数十行の長い文章でも苦にならずにすらすら書くことができるぐらい、自然体でやり取りをすることができていた。また、彼女から送られてくる長文も、毎回とても読みやすくまとまっており、きっとこの人は頭が良いんだろうなと感じて、彼女にますます興味を惹かれた。

もっとも、文章で伝えられる内容や雰囲気には限りがある。数日ほど彼女とやり取りを続け、もっといろいろな話をしてみたくなった私は、「直接お会いしませんか」と彼女に打診をしてみた。

すると、彼女からも「私もお会いしてみたいです!」と快い返事をいただいた。
さらに数回のやり取りを経たのちに、12月上旬に2人で会うことが決定した。
ドキドキとワクワクの気持ちでいっぱいになった私は、その日を迎えることを心待ちにしていた。

続く

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