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私の誕生日
2月に彼女のお誕生日をお祝いした後、すぐに彼女が「次は〇〇くんのお誕生日祝いだね!」と言った。
私の誕生日は夏真っ盛りの8月。「まだ半年も先なのに気が早いよ〜」と笑いつつ、今からそのことを考えてくれていることがとても嬉しかった。
それからしばらく経ったある日、彼女が「〇〇くんのお誕生日には旅行をプレゼントしようと思うんだけど、どうかな?」と話してくれた。
また、1泊2日の旅行になるので、場所は近場で鬼怒川温泉はどうかと提案してくれた。
私は喜んで「ありがとう、楽しみにしてるね!」と彼女に伝えた。
彼女は以前少しだけ鬼怒川温泉に勤めていたことがあり、その辺りの地理も詳しそうなので、段取りは全てお任せすることにした。
そして彼女は「泊まるところは、着いてからのお楽しみね!」と私に言った。
私は嬉しくて仕方がなかった。恋人に祝ってもらう初めての誕生日が旅行だなんて、一生思い出に残る素敵なイベントになるに決まってるじゃないですか。
でも、結局それは叶わなかった。
…
明日、彼女のご両親に彼女のスマートフォンをお返しするのだが、思い出を取りこぼしたくなくて、今しがた彼女のスマートフォンの写真フォルダを覗いてみた(勝手に覗いてごめんね)。
すると、彼女が予約してくれていたであろう旅館からの予約確認メールのスクリーンショットが保存されていることに気がついた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/108569533/picture_pc_501d138411d180acbb925f0e27eeddd9.png?width=800)
そして先程、その旅館に予約の確認とキャンセルのために電話を掛けた。
予約の確認をしてもらっている間の保留音はショパンの「ノクターン(第2番)」だった。この間もピアノを弾くありし日の彼女の姿を想像して涙が止まらなかった。
やはり、スクリーンショットで見た通り、彼女の名前で8月5日から1泊2日、2名で予約が入っていた。"その他のご要望など"の欄もそのまま旅館に伝わっていた。この欄には私の誕生日に加えて司法試験のことも書いてくれており、真面目で思いやりに溢れた彼女らしい一面を感じられる文面である。
私は泣きながら担当の方にキャンセルを伝えた。恋人が予約してくれたプランを私がキャンセルするのは、なんとも言えない切なさが込み上げてくる。
なお、彼女が旅館を予約してくれていたのは3月16日、ホワイトデーのわずか2日後だった。そんなに早くから旅行のプランを考えてくれていたんだね。本当にありがとう。
お誕生日旅行は叶わなかったけど、天国でも旅行はできると思うから、僕がそちらに行ったら2人でたくさん旅をしようね。
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