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うさぎパン

「本なんか、ネットで買ったらええやん」 たまに、そんな事を言われる。ネットは、好きな時間にいつでも注文できて、家まで届けてくれるから便利だと思う。 でも、私は、本のタイトルや、装丁を見て、直観でピン!と来るものを選びたい。 大袈裟だと分かっていても、運命の出会いと感じてしまうから。 「運命の出会いって、本屋行く度に人生変わってるんか?」 運命を変えるほどの、大きな出来事ではないけれど 偶然が重なりあって、今、このタイミングで、この本にふれるのは 必然ではないかと思わせる

    • 夜明け前の通勤電車

      引越して二か月が過ぎた。 大阪の職場まで1時間半かかるので、夜明け前に家を出る。 通勤途中、ふと、昔のことを思い出した。 祖母が、まだ看護婦として働いていた頃 母と一緒に駅まで送って行ったことがあった。 その時も、夜明け前の暗い道だった。 祖母は、病院まで、ほぼ始発の電車に乗って通っていたらしい。 戦後の混乱を乗り越え、4人の子供を育てながら、婦長まで出世した祖母には 足元も及ばないが 真っ暗で誰もいない静かな道を歩いていると、 どことなく繋がりを感じる。 暗いと不安に

      • ピザトースト

        盆休みに実家へ帰ると、母が朝食にピザトーストを作ってくれた。 「あんたたちが、小さい頃、よく作ったんやで〜」 そうだったのか… 全然覚えていなかった。 覚えていないということは、相当チビだったんだなぁなんて考えていると 「おばあちゃんも好きやってん。 そうやって作るんか〜って、珍しそうに見てたわ。」 どうやら、まだ幼子だった私たちを連れて帰省した時に作っていたらしい。私たちにとって、祖母はとても優しい人だったが、母には、厳しい人だった。 嫁と姑。特に料理については、

        • 久々のカメラ

          関西大学で英語の試験を受けてきた。 中学英語から学び直してきたけれど 語学習得の道は、決して容易いものではないということを、ひしひしと感じる有様だった... まぁ、この一か月は仕事が忙しくて、ほとんど勉強できていなかったので、当然の結果ではあるけれど、半年ほどずーっと、テキストをめくる日々を過ごしてきたので 多少は、点数が上がっているといいなぁなんて、ちょっとだけ期待している。 受験票が届き、会場が関西大学と知った時は驚いた。前回は大和大学だったので、引き続き同じ場所にな

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          黒猫のミーちゃん

          黒猫のミーちゃんは、クリーニング屋さんにいる。通勤途中、ミーちゃんが店の前でくつろぐ姿を何回も見てきた。 毎回そばを通る度に、「可愛いなぁ~、触りたいなぁ~」と思いつつ、何もできずにいた。なぜなら、ミーちゃんは、触ろうと近寄ると、スッと逃げてしまうからだ。 そんなミーちゃんが、ミャーと鳴きながら私の元へトコトコトコっと駆け寄ってきた。ビックリした。こんなこと、今までなかったのに... ミーちゃんが、私の目の前で止まり、再びミャーと鳴くので 「もしかして?触ってもいいのか

          黒猫のミーちゃん

          また かえっておいでね

          8月に入ってすぐの頃、猫(ココ)が夢の中に出てきた。ものかげから遠慮がちに、こっそりこちらを見ていたので、気づいた私が「どうしたん?こっちへおいで〜」と近づいたら目が覚めた。 ココが旅立ってから6年の月日が流れたけど、夢の中の私は、その現実がすっぽり抜けていて、ともに暮らしていた日常が、そのまま続いている。なので、懐かしくて泣くとか、駆け寄って抱きしめることもない。「そろそろお風呂入れようか〜」とか、「ご飯の時間やな」とか考えている。そして目が覚めて、こっちの世界に戻って来

          また かえっておいでね

          ツバキ文具店

          主人公の鳩子は、鎌倉で文房具店を営むかたわら代筆業も請け負っている。 代筆業とは、依頼主にかわり手紙を書くこと。 鳩子のもとには様々な依頼が舞い込む。借金を断る手紙、絶縁状、昔好きだった人へ近況を知らせる手紙など。 どの依頼に対しても、鳩子は真摯に向き合う。依頼主の気持ちになって、その人が本当に言いたい事・伝えたい事を心の中で何度も何度も推敲する。 そして、ある瞬間にスッと言葉が下りてくる。その言葉に合わせて、筆記用具、便箋、封筒、インク、切手などあつらえていく様子も楽

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          若草物語

          最近、若草物語を読んでいます。 英語初心者向けに書かれた70ページほどの薄い冊子ですが、英語から遠ざかって久しい私には、なかなか読み応え?のあるもので、遅々として全く進みません。 学生時代、途中で終わってしまっていたこともあり、よし、これを最後まで読み切ろう!と目下の目標に掲げました。 しかしながら...英語の文章を読むというのは、やはり、ある程度学力が必要なもので、単語はそこそこ記憶しているものの、文法がさっぱりです。情けないことに、読んでいるというよりは、眺めている

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          実家にて

          GWは、実家に戻り、庭の草むしりや、買い出しの手伝いなどをして、のんびり過ごしました。 姉と姪っ子が、一泊二日で遊びにやって来て、姉がハマっているミュージシャンのライブを皆んなで観たり、姪っ子が宿題をしている時にちょっかいだしたり、和やかな時間に身を置いていると、こうして気の置けない人と、おしゃべりしながらご飯を食べるということは、とても幸せなんだなぁと思います。 実家にいて慣れてくると、今度は、ちょっとしたことで衝突して、不機嫌な空気になったりするんですが、1人の部屋に

          実家にて

          ハグとナガラ

          女ふたりの旅物語。 GW、コロナ禍以前は旅に出るのがお約束だった。この小説のように、女2人旅ではなく、1人だったけど。 自由に移動できないこんな時だから、せめて心の中で旅したいと手に取ってみたけれど、読み終えると、旅のことよりも、友達や家族のことを振り返っている自分がいた。 気の合う友、ハグとナガラは、年に4回ほど旅に出かけていた。その旅は10年ほど続く。しかし、ハグの母が認知症になったことがきっかけで、ハグは仕事と介護の両立で多忙になり、以前のように旅に出られなくなった。

          ハグとナガラ

          一本のガーベラ

          年度末から新年度への切り替わりは言うまでもなく忙しいのだけれど、今年は大異動があり、職場の雰囲気は一変。ざわざわした空気感は、まだまだ収まりそうにない。 ここ数日の記憶がポンっと飛ぶほど、自分の時間を失っていました。恐ろしいのは、そういう状況に陥っていることに全く気づいていなかったこと。 いや、本当、心を失くしてました… これはまずい。非常にまずい… 土砂振りの雨の中、スーパーへ行き、買い物カゴを置いて会計をぼんやり待っていると店員さんが何やらいつもと違うことを言ってい

          一本のガーベラ

          満月珈琲店の星詠み

          タイトルと表紙のイラストに惹かれて手に取った本。プロローグを読んだ時点で、あっという間に引き込まれてしまった。 満月珈琲店に決まった場所はなく、ある時は河原、公園、なじみのある商店街など満月の夜にだけ気まぐれに出没する。 そのお店には、偶然たどり着いたというよりも、「今」そのお店を必要としている人だけが呼び寄せられたような、そんな特別な時空が広がっている。 人は誰もみな、こんなはずではなかったとつまずくことがある。八方ふさがりでどうにもならない時、満月珈琲店のマスターが

          満月珈琲店の星詠み

          花束を君に

          今日、仕事帰りにお花を買いました。 誕生日を迎えたあなたへ おめでとう!これからも、よろしくね! 痛みから解放されたあなたへ もう大丈夫、ずっと大丈夫だよ。 だから安心してね。 私の小さな可愛いココ おでこを、そっと撫でてあげたい。 花を美しいと思うのは、 その姿に、誰かを重ねているからでしょう。想いは途絶えない。続いていくものだから。 私は、ずっとここにいるよ。寂しくなったら、いつでも会いに来てね。 心をこめて贈ります。 花束を君に。

          花束を君に

          旅先の朝食

          電車を乗り継いで、ふらっと旅に出るのが好きな私。今は我慢と思いつつ、やはり窮屈感は否めず…。 ふてくされても、しょうがないので久々に過去の写真を眺めていました。食べ物の写真が多いんですよね。機内食とか、ホテルの朝食とか何枚も撮ってます。 これは、コペンハーゲンに宿泊した時の朝食。焼きたてのクロワッサンやデニッシュがとても美味しかったです。 予算をギリギリまで切り詰めた貧乏旅行だったので、お昼は何も食べなくてもいいように、毎朝、宿泊先のホテルでたくさん食べてました。 写

          旅先の朝食

          生きているということは

          “生きているということは 誰かに借りをつくること 生きていくということは その借りを返してゆくこと” これは、永六輔さんの曲の一部で 恩師が別れる時、生徒のみんなへ贈ってくれた言葉です。 当時11才だった私には、 「生きている」と「生きていく」の違いが、よく分かりませんでした。大人になった今、この言葉を噛み締め、贈ってくれた先生に感謝しています。先生は、今は難しくとも、いずれ分かる時が来るだろう…と、未来の私達に託してくれたんですね。 今まで私は、家族や友人、会社

          生きているということは

          銀河鉄道に乗って

          郵便受けに届いた一通の手紙。 差出人は、友人のお母さんからでした。その場で…私は察知しました。 このNOTEは、主に、癌と戦う友人に宛てて書いていました。返事のいらない手紙です。毎回、友人の顔を思い浮かべながら、友人に話しかけるような思いで書いていました。 全ての用事を済ませ、部屋を整えてから、受け取った手紙の封を切り、そして、友人が旅立ったことを知りました。 察知してはいたけれど、受け止めきれなかったのか、色んな想いが渦巻いているのに、言葉にならない… いつも通り出

          銀河鉄道に乗って