SSワードウルフ3-10『優しく聡明な君達へ』

『優しく聡明な君達へ』
作者名:皐月 若葉

Warning!Warning!
このゲームを遊ぶこと、それは即ちー。

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「Welcome!初めまして!ようこそ、ーーへ!この世界のルールは簡単です、赤、青、黄3つの陣営に別れて・・・」

ログインすると、赤い衣を身に纏うNPCがこの世界の説明をし始めた。
あぁ、どうやら私は今回赤の陣営となったようだ。

いくつかの絵柄で彩られたという絵札を渡される。
どうやらこれは切り札らしい。裏返すとそれは剣を振りかざす男性の姿が描かれていた。
まだこの絵札の意味はわからない。

まぁ良い。いずれわかるだろう。

赤、青、黄・・・敵は誰だ?
この世界はとても難しい。誰が味方で、誰が敵かわからないからだ。
見分けるためには、呪文を使い魔法で攻撃するしかないのだという。
今日も私は、呪文を唱える。

それが味方なのかどうかわからない。敵かもわからないなかで繰り返すしか術がないから。

それで得られるのは?
華々しい名声?富?金銭?
ふっ、と自虐的に笑みを零す。かつて切望し手に入れたいと願った輝かしい光を今さら求めて何になるというのだ?

頭を切り替えて答えの出ない袋小路から抜け出そうとした時、気づいた。

・・・「今回」私は赤の陣営となったようだ?
「かつて」切望し手に入れたいと願った輝かしい光?
今回?かつて?私は今日このゲームを遊ぶのが初めてだと言うのに?
・・・ここは何だ?
そもそも私はどうしてこの世界に招き入れられた?

・・・「Welcome!」
そう言っていた赤い衣を身に纏ったあいつは・・・
あいつはいつも赤いじゃないか。
私が例え他の陣営だった時も。

この世界はつまり・・・。

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「Welcome!初めまして!ようこそ、ーーへ!」
今日という日を楽しみにしていた。初めて遊ぶこのゲームのことを。さぁ、呪文を唱えて答えを探そう。

・・・・・・
何度も何度も繰り返される世界で気づくことは無いだろう。彼らは時には違う呪文を、時には同じ呪文を唱えていることに。

今日は運が良かった!
10人も集まってもらえたのだから!
9人では足りなかったから何度も何度も繰り返し、ようやく1人増えてくれたのだ。

赤い衣のあいつには感謝しよう。
繰り返すこの世界を作るには欠かせない存在だ。

さぁ、今日はどんな呪文を唱えてくれるのだろうか?
たとえ過去に誰かが唱えたものでも構わない。
それを覚えているのはどうせ私だけなのだから。

あぁ!今日も愉快だ!なんとfantasticな日なのだろう!

・・・ん?君は誰だ?繰り返す壊れないこの世界を覗けると、そう言うのかい?
ふふっ!私が誰かって?
さぁ?私は誰だろうね?
ヒントはそうだな。私は繰り返される世界が好きだ。
それはずっと私のものだからね。

あぁ残念。もう聞こえてないね。
私は伝えたよ?
Warning!・・・ってね。

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「Welcome!初めまして!ようこそ、ーーへ!」

そうだ、今回はどう唱えようか。
たまには愛情表現でも。
何度も何度も繰り返し遊んでくれる憐れな君達へ愛を込めて。
「優しく聡明な君達へ」

さぁ
私はだーれだ?
答えは・・・。

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