『自分だけのボードゲームを作ろう』(オライリージャパン)を読了

本書の内容について、とりとめもなく書く。感想や良かった点など。
あまり読んでもらうことを意識せず、半分自分のメモくらいの感覚なので少々雑な文章です。

メカニクスについて

「デッキ構築」や「ワーカープレイスメント」など日本でよく言われるメカニクス名での登場は少なく、あったとしてももっと抽象的な説明のなかの具体例として説明してくれていた。
この具体例が、普段はぱっと思いつかないものも紹介してくれてるので、おお!たしかにそういった方法もあるな、という気分にさせてくれた。
この説明の抽象度合いが上手で、無数にあるメカニクスをうまくまとめて紹介してくれている。
抽象化することで、具体的なメカニクスが少ないから物足りないというより、むしろマイナーなメカニクスや、多く使われていても普段目をつけていないメカニクスなど、痒いところにも手が届いている。

名前を知らないけど、よくみるアレ

「名前を知らないよくみる仕組み」をしっかり説明してくれているのでボードゲーム全体のシステムに対する解像度が上がる感覚があった。厳密には、普段は「名前を意識しない」けどよく採用されているメカニクスと言った方がいいだろうか。
例えば、ターンオーダーの仕組みで、単に時計回りに順番にターンが回ってくるパターンもあれば、ラウンドごとにランダムにダイスなどで決めるパターン、前のラウンドの成績(その時点での勝利点やコインの量に応じて変わる)パターンや、ビッドして一番高い金額を払った人が先にターンになるパターン、はたまた一部のワーカープレイスメントのようにアクションを消費して次のラウンドに最初にターンを行えるようにすることもある。
他にも、終了条件に関する内容では、最も多くわかりやすいのは勝利ポイントを最も多く集めること。しかし、ほかにも1つのマーカーを引き合って先に目標地点まで到達させる「綱引き(タグ・オブ・ウォー)」形式や、複数の種類の資産があり、各プレイヤーはそれぞれの資産の中でもっとも少ない資産の数が点数となり比較する、「最大の最小(ハイエスト・ローエスト)」と呼ばれる形式もある。これは、プレイヤーにバランスよく資産を集めさせようとしている。(「綱引き」は7ワンダーデュエルの軍事的優位が近かったかな。「最大の最小」は遊んだことはある気がするけど思いつかない)
また、終了直前に「フィナーレ」という、いわゆるゲームのメインフェイズ終了後に最終決着をつけるシステムもあった。(某マーダーミステリーシリーズの「アクションフェイズ」は完全にこれだろう。)

デザイナー向けのバイブル

そして、これらの説明をただ紹介するだけではなく、この仕組みにするとゲームにどう影響をおよぼすのか、プレイヤーにどう感じさせるのか、といったデザイナー目線で書かれているのが非常によかった。
なにか少しでも作りたいゲームの方向性がある人や既にゲーム制作をしてる人にとっても、かなり有用だろうと感じた。見逃していたヒントを得られそうな雰囲気がすごい。

ボードゲームの専門書であり、制作における教科書である

ボードゲームを嗜まない人が読んでもスムーズに読み進めるのは少々難しいと思う。専門用語の説明はしてくれていても、やはりボードゲームの用語は多い。いきなり「ドラフト」や「デッキ構築」と聞いて代表作が思い浮かぶので、愛好家は解釈がスムーズだろうが、そうでない人は想像するのが大変だ。そういった点で、この本はある種、ちゃんと「専門書」と感じた。(そもそも普段から遊ばない人は本書を読むにいたらないだろうが)
一方で、アナログゲーム制作の「教科書」だとも感じた。解説されない専門用語はほとんど登場せず、単語自体はなるべく一般的でわかりやすい言葉で説明されていた。
また、ボードゲームにかぎらず、TRPGやウォーゲームにも触れていて広い視点でゲームの作成を考えられる。

フレーバー/テーマについて制作目線で語るのは難しいのか

フレーバーに対する記載が少なかったのが少々残念。書くのはかなり難しい、というか書けることがないのはまあうなずけるが、やはりヒントはほしいと感じてしまう。というのも、漠然とボードゲームを作りたいがフレーバーにしたいものがなかったり、フレーバーをシステムに落とし込むのが苦手だったり、という人は少なからずいるのではないだろうかと思うからだ。しかし、テーマありきで上手にシステムをデザインしている例もある。『Kaiju on the Earth』シリーズなんかはいい例だろう。あれは怪獣の企画ありきで著名なデザイナーにシステムをデザインしてもらったはずだ。

辞書は『メカニクス大全』で

昨今の日本のボードゲーマーたちの会話でよく使われるメカニクス名の登場は少なかったと感じる。これは全てに触れているとキリがないので、仕方ないとも言えるし、『ゲームメカニクス大全』などの本との差別化なのだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?