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お笑いに対して痛い奴の苦悩

僕はお笑いに対して痛い奴である。

といっても高校生の頃にオリジナル漫才を作り、中庭を盛り上げたことや浪人時代の寮のクリスマス会で漫才を披露して寮をぶち上げ、大学時代にはお笑い事務所の養成所オーディションに好成績で受かるくらいの実力は兼ね備えている。今まで作ってきたネタは100近くあり、今でも面白いと思うことがあればメモ帳に書き込むほどである。そこらへんの思い出作りのためにM1に出ました!とかいう人やお笑い賞レース全部観ています!ってだけの自称お笑いファンとは一線を画している。

と、つらつら書き綴ることが出来るくらいに僕はお笑いに対して痛い。そんな痛さから生じる苦悩を今回は聞いてほしい。

普段の生活で「食べられないものある?」と聞かれたときには「あなたが食べられないものとは?」とIPPONグランプリのナレーションの声で渦巻管が響く。

よし、どうボケようか。「フライパンとかですかね?」いや、これは余りにも簡単なボケ過ぎる、、どうしよう、、

とか考えて、結局「基本何でも食べますね」なんて回答をしている。その場面を俯瞰で見ると質問に対してちょっとしたラグの後で答えているだけのコミュニケーションが苦手な奴がそこにはいる。こんな風に日常生活で勝手に変な思考回路をしてしまう。もっとお笑いスキルがあれば間髪入れずに面白い回答を出すわけだが、そこまではスキルがないどうしようもない痛い奴なのだ。
もっと深刻なのはここからで、散歩している時に「あの時どう答えたら良かったのかなぁ」なんて1人で反省会をしている。足裏のアスファルトも「やめた方が良いよ~」と言ってくれているのだが、痛い奴の耳には足元の声は聞こえない。

『食べられないものとは?』
「カビの生えた豚肉」、「賞味期限切れのジャム」、いや、インパクト弱いな、、「歯形が付いた食パン」、、これ良いじゃん!みんな理解できるし、センスも少し感じる!「歯形が付いた食パン」!これが正解だったか!
こんな風にどうでもいい思案に暮れていることがある。

大学生でも痛い奴は痛い奴のまんまである、盛り上がってるサークルメンバーを「何となくの笑いで笑うなよ」なんて冷たい気持ちで見てみたり、逆にそこでは一緒になって笑ってみて、僕も面白いと思ってるよ!なんて上から目線で迎合してみたりしていた。そんな風に立ち回りを都度都度考えている自分自身が本当に嫌いだった。そんな癖に自分がウケた時には、その時の話を遺産のように誰よりも覚えて大事に持っている。逆にあえて滑るようなことを言って、滑った時にも「よしよし、僕はこのスタイルで良いんだ」なんて思ったり、よく笑ってくれる人と仲良くしていると自分のお笑いレベルが下がってしまうから、気を付けた方が良いのではないか、とまで思う狂った人間なのである。そんなに悩むのなら思いっきりサークルのお笑いに迎合すれば良いじゃないかと思うだろう?それができないから「痛い奴」なのだ。

もう手遅れだろう!?みんな、そうは思わないか!?こんな奴が救われるには実際にお笑いの道に進んでコテンパンに殴られることしかないと思っている。でもその道も今は諸事情で通行止めになっている。もうどうしようもないんだ。今日も1人頭を抱えておしゃべりなアスファルトを足裏で味わっている。


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