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香港のブチギレチャイルド

2023年→2024年の年越しを香港で過ごした。香港の感想としてはエスカレーターがとても早い。せっかちの僕にはお土産で持って帰りたい代物だった。

12月30日、20時前。香港の水辺で壮大な光のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」というのを見るために僕ら家族はスタンバっていた。暑いとはいえ夜は肌寒くなる香港で僕らは20時から始まるショーをどこで見ればいいかいい場所を求めてウロウロしているとこだった。

するとどこから「$%&’&%$#”!!!」と聞こえた。何を言ってるか分からないが異常であることくらいわかる。煌びやかなアミューズメントパークの前で小さな男の前にお母さんが目線を合わせてしゃがみ込んでいる。

あぁ、この子何か怒ってるな。

その親子の周りに一緒に遊びに来たであろう親子連れが何人かいた。その男の子は周りに見られていることを自覚しながらもありえない怒り方をしている。お母さんが何かしら話しかけ続けているが、男の子は泣きじゃくりながら顔を真っ赤にして怒っている。怒りすぎてチコちゃんくらい頭が大きくなっている。
買ってもらったのか何なのか、地面にガンプラの箱みたいなおもちゃらしきものが男の子の足元にあった。次の瞬間その子はストライカーばりに、そのおもちゃを蹴飛ばし3mほどおもちゃはぶっ飛んだ。

わ~お。ブチギレチャイルドやねぇ。

僕は楽しくなってきた。その子はおもちゃを蹴飛ばし、お母さんは慌ててそれを取りに行く。その場から動かないチャイルドは顔をありえないくらい真っ赤にしている。そんなに血を上らせたら、体がおかしくなるよってくらいに顔が真っ赤だ。周りの子供たちはブチギレチャイルドを静かに見つめている。中から別の生命体がはちきれて出てくるのではないかと思うくらいの顔面だった。僕はその子を見続けたかったが、ショーを見るための良い場所を陣取るためにその場を離れた。

5分後、その辺りをウロウロしながらエスカレーターに乗っていると後ろにブチギレチャイルドが泣きながら乗っていた。さっきよりはマシになったっぽいが、相変わらずブツブツ分からない言葉を発している。中国語学ぶべきだったなと2秒だけ思いつつ、エスカレーターがどことなく速いのはこの子のブチギレエネルギーかと思った。新しい再生エネルギーに思えた。本当はブチギレて、ハチきれて体を散り散りにしたいその子も周りの雰囲気に押し寄せられ、行儀良い子供に成り下がっていた。
よし。ブチギレチャイルドよ。また大きくなったら僕と会ってくれや。

香港の「シンフォニー・オブ・ライツ」はリハーサルかと思うくらい、ショボかった。
ブチギレチャイルドを宥めるように思っている以上に優しい光だった。

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