銭湯と刺青

たとえば、郵便局の窓口なんかで、よく見る受付の人はすこし知り合いかなって思います。コンビニなんかですれ違うと、この人どっか見たことあるなあ、なんて気になります。
でも、関係はありません。
名前も人となりもわからないし、それは向こうも同じです。
袖振り合うも多生の縁ですが、窓口で受付してもただの他人です。

一回話したくらいでは、知り合いでもなければ関係も存在しません。

こないだ、仕事が終わった後、銭湯に行きました。
けっこう銭湯が好きなのですが、刺青を入れている人を見かけます。
入れててもそこまで周りの人は気にかけていません。
お客さんも見慣れてるし、向こうもわざわざインネンつけることがないので、気にすることがありません。
そんな地元の銭湯なんですが、銭湯で刺青を入れたおじさんにサウナの中で話しかけられました。

飲み屋とか、お店の人と話す感覚と大差ないので、特別変わったことがあるわけではありませんでした。
それよりも、「気のいいヤクザ」を初めて見たことに感動しました。
3、4歳の子供や親と仲良さそうに話したり、明らかに親しみやすい話し方をしていて、映画にしかそういうヤクザはいないものだと思ってた僕には新鮮でした。
人情話かコメディにしかいない存在だと思ってました。

「兄ちゃんいくつや」
「そうか、まだまだこれからやな」
「モテるやろ」

大阪の言葉も相まって、久々にその土地の人と話をした気持ちになりました。
仕事をしていると反社だなんだと、「切り捨て」を求められます。
昔はヤクザが仕事に嚙んできて本当に大変だった、街中に当たり前のようにいて大変だったという話も聞きます。
だから、ノスタルジーで包もうってのも違うとは思うのですが、がんじがらめの日常からふっとプリミティブな感覚に戻ることが出来て、とても救われました。

昔、といっても江戸時代とかですが、刺青がある人は多かったそうです。今でこそ、もろ肌脱ぎで仕事をする人は街中で見かけないので、刺青をもろに見る機会はありません。

だからでしょうか。刺青を見ると、裸を見るよりも、その人の裸を見たような気になってしまいます。見てはいけないような、それでいてその人本来の姿を見てしまったような。

ただ、サウナで隣に座っただけなのですが。

作: ナイアガラすすぎ
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