エッセイ 顔出ししない賞作家



 第171回目の直木賞を取った一穂ミチさんがマスクで登壇した。候補の中には他にもお二人顔出しNGの方がいらしたようだ。
 私は顔出ししない賛成派。作品には作者の顔出しは必要ないと考える方です。もちろん顔出しOKの方はこれからも顔出ししていただいてかまわないと思っています。私にも経験があります。「あ、この作品を書いた人はこんな顔をしているんだ」と感動したりした事。でもそれで作者と読者の距離が縮まったと考える人がいる限り私は顔出しなしに賛成し続けたいと思っています。

 私は小説作品というのは虚構を言語化したものだと思っています。だから、作品を読んで感動した、とか救われたとか、この主人公とは意見が違うとか、嫌なやつ見ちゃったなとか思って貰えたら成功なのかなとぼんやり思っています。
 作者の顔が見えたらなんだか作者の考えが勘違いされてしまうような気がして怖いんです。

 例えば嫌なやつがその作品に出てきた時、作者の一部に違いないと思われるとか。素晴らしい作品だったから作者は聖人君子に違いないとか。そんな勘違いが怖いんです。
 私はまだ未熟だからそんなふうに思われることも少ないかとは思うけど、自分に置き換えたらそんなふうに思います。

 賞を取った人にはある程度の責任がついて回るという意見もあるかもしれません。文学界って大変だなと思います。私には関係の無い話だといいなと思ったりして、でもやはり気になってこうしてエッセイを書いたりして。
 一穂さんの勇気には拍手を送ります。あるものを壊すのはとても勇気がいると思うので。

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