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怪談・百物語

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私の書いた百物語 Youtubeで創作配信しています。 よければ遊びに来てください。 一緒に百物語を作りましょう。
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#短編小説

怪談百物語#16 わんこ

うちの子はすごくやさしい。 その上、世界一かわいい。 自慢のわんこ。 保健所から引き取った雑種の男の子。 いつもそばに来て、撫でてって甘えてくる。 でも家族の誰かが落ち子出る時は、ペロペロして慰めてくれる。 私が子どもの時。 日課の散歩へ連れていったら派手に転んだ時だってそう。 私がびえびえ泣いていると、傷をペロペロしては「大丈夫?」と言いたげな表情でこちらを見て気遣ってくれた。 ある日父の帰りが遅くなった。 「ただいま。帰りがすごく混んでて遅くなった。どこかで事故でもあっ

怪談百物語#17 回転寿司

回転寿司に行くと珍しいメニューに出会える。 ミーオボール寿司、ハンバーグ寿司。 シイラの漬けやアン肝軍艦。 予算で握ってもらう寿司屋と違って面白い。 あっちはあっちで日によって仕入れが違うという。 しかし、「今日は良いコーンが入りました。マヨコーン軍艦です。」なんてことはないだろう。 色とりどりのネタが回るレーン。 最初は決まって赤エビ。 1貫110円の、少しお高い皿。 だからネタも大きく、そして美味い。 最高のスタートが切れる。 次は海鮮サラダ軍艦。 イカとカニカマとコリ

怪談百物語#18 習字教室

娘の通う小学校で体験した奇妙な話をここに記します。 PTAの総会の帰り道、友人から相談を受けた。 「学校の放課後、習字教室が開いてるんだけどさ。友達一人もいなくて寂しいんだよね。よかったら一緒に来てくれない?」 お願い!と頭を下げられた。 字が綺麗になるし、まあいいかな。と来週一緒に体験しに行くことにした。 午後7時。 教室に入ると懐かしい大きさの机、イス、窓からの風景が目に入る。 ノスタルジーを感じていると、先生が入ってきた。 初老で優しい雰囲気の男性。 挨拶も終わり、

怪談百物語#19 コーヒー

夕食の準備をしていると、学生時代の友人からメールが届いた。 この友人とは卒業後も頻繁に会って遊ぶ仲だ。  「またお誘いか。先週のボルダリングきつかったからなあ。」 次も体動かすのだったら断るか。 日曜に行ったボルダリング体験は、たった1時間だというのに今も背中の筋肉が突っ張っている気がする。 まあ、あいつの誘いなら何でもいいか。 長年の付き合いがある。 少しくらいの無理なら付き合おう。 ケトルからお湯を注ぐ。 できあがるのを待っている間に、届いたメールを開く。  「おつかれ