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遠回りで愛知〜東京を移動②

5月の一時帰国時に実家の愛知県から学会が行われる関東まで、北陸新幹線を利用して移動。前回の記事では名古屋から敦賀まで特急しらさぎの旅程についてまとめた。

今回はこの旅行の主たる目的・北陸新幹線で敦賀〜東京間の移動について書いてみたいと思う。新幹線との連絡を円滑にするために新設された接続専用のホームにしらさぎ号が到着。新幹線ホームはこのホームの真上にあるのだが、一旦駅の改札を出ることに。

というのも名古屋から通しで敦賀経由・東京までの切符をJR東日本のえきねっとでeチケット予約しようとしたのだが、JR東海の在来線区間を含んでしまうとeチケットで予約することができず、紙の切符を予約後にえきねっと対応のJR東海の駅で発行しなければならない仕様(他にも多々の条件が)。この複雑に入り乱れた条件を1回で理解できる利用者は果たしているのだろうか。ということで、名古屋・敦賀間は予め慣れ親しんだ紙の切符をみどりの窓口で購入し、敦賀・東京間はえきねっとでeチケット予約することにした。

えきねっとへの僅かながらの不満はさておき、予約の際にeチケットをSuicaに紐付けしており、Suicaで新幹線改札口を通る。

今年の3月に開業したばかりで、構内は当然のように建物探訪で訪れたいほどの新築。昔から交通の要衝の名に恥じない非常に大きな駅で、地元の新幹線駅と比べると悲しさが込み上げてくるので、あまり考えないほうが賢明である。

敦賀駅構内

ただこの新しい敦賀駅、新幹線駅にもかかわらず思っていたよりも売店や御飯処の数が少ない。改札口に入ってしまうと飲み物の自販機しかない。駅員に尋ねると改札口外にコンビニが1店舗あるだけらしいので、(敦賀駅の弱点を見つけたと内心ほくそ笑みながら)駅員にお願いして外に出してもらい売店へ。店の外に溢れ出る行列。その多くは外国人観光客らしき人たち。その人混みの中から虎の子の駅弁を見つけ出し、再び改札口内へ。オールコートで🏀ができそうなほど広い校内の片隅にある待合室にフラッと立ち寄るも特にすることはなく、少し早めにプラットホームへ上がる。

敦賀駅のプラットホーム

敦賀駅のホームは2面4戦構造で終着駅の威厳を十分に携えたものであるが、中でも目を見張るのは木目調の床。本物の木ではなくタイルだと思うが、北欧のどこかの空港を彷彿とさせる設計。靴底で汚すのに心苦しさを感じながら自分が乗る12号車・グランクラスの乗車位置まで移動。そう、今回は財布に勇気を振り絞ってもらって国内鉄道の最高階級・グランクラスをえきねっとで予約したのだ。その額、28,220円也。自由席なら15,830円で住むのでおよそ倍額になる。どれだけの勇気と勢いが必要だったおわかりいただけただろうか。グランクラスといえば、飛行機のように客室乗務員による飲み物と軽食のサービスがあるが、今回は準急型のはくたかなのでそういったサービスは提供されない。その分少し安めの価格になっていたはず。

はくたか566号東京行きが13番線に到着すると、すぐに扉が開く。初めて足を踏み入れるグランクラスの車内はデッキからすでに雰囲気が異なる。4つ星ホテルの特別応接室へと続いていそうなデッキ通路。客室へと誘う自動ドアを開けると、そこに広がるのはため息ひとつさえ漏らすのが惜しまれるほど、上品な茶色に統一された空間。

グランクラス車内

1✖️2列の各シートは独立しており、リクライニングを倒しても後ろの乗客の伺いをたてる必要のないバックシェルで包まれている。リクライニングだけではなく、フットレストも自分の好きな角度に調整できる。各シートのメイン・サイドテーブルもありふれたプラスチック製ではなく、高級感あふれる金属製。

余裕のある脚元の空間

シートの前後間隔は脚を伸ばし切ってもまだ余裕がある。他には読書灯・電源・スリッパも完備され、自分のような庶民が勘違いして貴族にでもなった気分に浸ってしまう。先ほどの売店で買ったおつまみを引っ張り出し、自分の背丈に応じた庶民感を発車前に取り戻す。


車窓から見える日本海

敦賀からグランクラスに乗るのはどうやら自分だけらしい。先にも触れたが、はくたかは準急型でこの566号は長野までの飯山以外の各駅にとまり、その後長野・大宮・上野に停車する。所要時間はおよそ4時間。

天気にも恵まれ、北陸地方の自然・田園風景を楽しみながら福井・金沢・富山と北陸の3大都市を軽快に駆け抜ける。やはりここでも水の張られた田んぼの景色は美しい。最も楽しみにしていた車窓は富山から黒部宇奈月温泉を抜けて、糸魚川に差し掛かるところで線路に近づいてくる日本海。だったのだが思っていたよりも海岸は遠く、スマートフォンの画面に齧り付いていたら気付かずに見逃してしまうほど。それでも肉眼で水平線を確認することはできる。

糸魚川を発車すると今度は日本の屋根、長野県に向かい南下する。ここでも景色を楽しみたいところだったが、次の日に学会で発表を控えていたためにその準備に追われ、時折カメラで撮影するに留まる。やはりもっと前もって準備をしておくべきだったか。そんな後悔の念を浮かべていると列車はいつの間にか群馬県。高崎からは風景を楽しむというよりは、この快適な旅が終わってしまうという寂しさが徐々に増してくる。学会発表の準備がひと段落する頃には大宮をすぎて埼京線と並走する区間に入っており、荷物をまとめる。約4時間におよぶ最高級のグランクラスの旅もいよいよ終わり。

通常の倍の金額を払うだけの価値はあるかと問われたら、少し悩むところ。というのも、今回のグランクラスよりやや劣るかもしれないが、かなり上質なクラスをしかも通常料金にたったの1150円加えるだけ味わえる車両がある。それは近鉄・ひのとり(下の動画参照)。

もちろん今回の北陸新幹線と名阪を結ぶ近鉄を直接比較することは沿線状況が異なるためにはっきり言ってあまりにも不平等。それでも1150円だけで上質空間を堪能できることを知ってしまうと、グランクラスは少々お高く感じてします。ただ間違いなく最高級クラスの旅を味うことは可能なので、興味のある方は是非とも乗っていただきたい。

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