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すべての理想が詰まった夏季休暇

誰に聞かれずともこれまで一番心に残った旅行先はどこ?と挙げるとすればそれは満場一致でスペイン・マヨルカ島

マヨルカ島の位置。Google マップより引用。

誰もが一度は憧れたことのあるであろう地中海西部に浮かぶ島で、特にドイツ・イギリス・北欧の人々が太陽を求めて夏季休暇に訪れるスペイン有数の碧い海と白い砂浜に囲まれたヨーロッパでも指折りのリゾート地。一応新婚旅行という名目ではあったが、婚姻届を役所に出してから1年以上経っていたので北欧の人たちと同じようないわゆる夏季休暇の感覚で1週間、アルクディアという島の北部の小さな街に滞在した。

ノルウェーの旅行代理店の航空券と宿泊がまとまったプラン(7泊2食付きで7500クローナ)を利用して、ノルウェーからパルマ・デ・マヨルカ空港まで直行のチャーター便で3時間。
「Palma de Mallorca」と表示された搭乗口で待っている間、離陸前から我々の興奮は徐々に高度を上げていった。
3時間という絶妙に短すぎず長すぎずの飛行だが、バルセロナの市街が窓から見えた時には僅かながら機内に潮の香りがするなど、あまりの興奮に錯覚をおぼえるほどだった。

空港からアルクディアまでは旅行会社が手配したバスでホテルまで移動。ノルウェーとスペインの地形や植生、景色の色合いの違いなどを2人で存分に楽しみながらあっという間にホテルに到着。ホテルの受付ではウェルカムドリンクのシャンパンで喉を潤わせた。これから始まる1週間の休暇に我々の興奮はとうの昔に針を振り切っていた。

まず完璧だったのは滞在期間中の天候。地中海なので地中海性気候の恩恵を受けるために行ったのは当然なのだが、それは想像以上のものだった。

アルクディアの街。

1週間滞在して雨が降ったのはわずか1日、しかも明け方に如雨露で垂らした程度の雨なので誰が気に留めようか。後は写真にあるように空気中に水蒸気が存在するのか疑ってしまうほどの快晴。気温は30度を越える日もあったが、日本の夏のように湿った空気の1分子1分子が肌にまとわりつく感覚もなく、かいた汗でさえも心地よく感じた。

これだけの天候に恵まれれば、毎日自然とその脚は海へと歩みだす。目の前に広がる白い砂浜と碧い海は自分の想像がいかに枠にはめられたつまらないものであったか思い知らされた(下の写真参照)。この一点の曇りのない海の感動を言葉巧みに伝えられるほど国語の成績はよくはなかったが、写真を見ればどんな言葉さえも無意味とお分かりいただけるだろうか。これだけ透き通った海ならひょっとして塩辛くないのではと淡い期待を持ったが、それは紛れまもない海水だった(気候学的に言うと、地中海は世界の海の中でも塩分は高め)。

アルクディアの海。

旅行を彩る大切な要素である食事のことも書いておこう。食事に関してもマヨルカ島は我々の旅行を大いに楽しませてくれた。到着して最初に食べたのはホテル近くのレストランでパエリア。旅行のガイドブックに沿ったとしか思えないほど面白みに欠けているが、そんな手厳しい批評でさえもこのパエリアを前にしてはさほど気にならない。2人前で15ユーロほどと観光・リゾート地にしてはかなり良心的(パエリアなどのご飯ものは2人前以上からの注文が一般的な様子)。エビ・カニ・イカ・タコ・ムール貝など近海の海の幸が余すところなく入っており、明日からの漁が心配になる。

パエリア。

これだけのもので炊き込んだパエリアの味は海が香るどころか海そのもので、食べている間はエラ呼吸ができるようになったのではないかと思うほど。他にもいろいろなスペイン料理を味わったがもう1つ書いておきたいのは小イカの姿揚げ(スペイン語ではChipirón)。スペイン語でChilinguitoという、いわゆる海の家で前菜として食べたのだが、食べ終わったときには揚げ出し豆腐を抑えて小イカの姿揚げが個人的好きな食べ物の首位に輝いていた。これは現在でも不動である。

小イカの姿揚げ。

個人的には旅行先で売れっ子芸能人のような分刻みの日程を組むのはあまり好きでないので、砂浜で太陽を浴び、暑くなったら碧い海で泳ぎ、お腹が空いたら地中海の幸を味わうことに全力を注いでいた1週間であるが、マヨルカ島には見ておいて損のない観光名所も数多く存在する。

滞在した砂浜近くのホテルから徒歩で20分ほど行ったところにアルクディアの旧市街があるが、その旧市街はいつ建てられたかは個人的に定かでない城壁で囲まれておりその上から旧市街を見渡すことができる。旧市街の中には石造りの民家に加えカフェやレストラン、マヨルカ島の名産品店などが点在しており、街の中を歩くだけでも楽しむことができる。妻はとある洋服屋で見つけた黒とピンクの組み合わせがよく映えるビーチドレス(と言うのだろうか?)を購入し、道端で着替え始めてしまうのではないかと思うほど上機嫌だっ

アルクディア旧市街の城壁。

1つの小さな街では物足りない、そんな行動派・都会派の方には是非パルマ・デ・マヨルカへいかれることをお勧めしたい。パルマはスペインの中で8番目に人口が多い大都市であり、島のどこからでも公共の交通機関で行くことができる。アルクディアからも直通のバスで1時間ほどで行けるので途中の車窓から見えるオリーブの木を数えていればさほど長く感じない距離。

パルマ大聖堂。

マヨルカ島の中心だけあってパルマの街は大きな建物や人通りが多く、買い物が好きな方には1日では足りないかもしれない。さらに魅力のある観光場所もいろいろ。写真はパルマ大聖堂で、芸術のげの字にかすりもしない人生を送ってきた自分でさえ知っているガウディが修復計画に携わっていたらしいので、興味のある方もおられるだろう。他にもスペインの歴史に触れることのできるベルベル城やソーイェル鉄道など、この休暇中には訪れることのできなかった場所もあるのでそれらは次回以降にとっておくことにする。

そして最後にもう1点。
冒頭にも言ったようにこの旅行は新婚旅行という名目であった。2人とも高砂・金屏風の前に座っている自分を想像できないという偶然にも共通の理由でお互いの親戚に挨拶まわりをした以外、結婚式・披露宴などの類を一切行なっておらず、せめて旅行先で記念写真だけでも撮ろうということになった。衣装については自分はスーツを新調し、妻は日本からノルウェーに渡航する準備中にウェディングドレスを自製作。写真はマヨルカ島のフォトスタジオのアルゼンチン人女性カメラマンに依頼した。
ホテルで衣装に着替え、カメラマンとの待ち合わせ場所である朝方の砂浜まで歩いて行くことに。ラテンの気質に乗せられて、普段では絶対にカメラの前でしないようなポーズや仕草をしてしまった。上機嫌でホテルまで帰る途中、砂浜を散歩中のご夫婦に祝福の言葉をかけてもらい、別のホテルのレストランバーで朝日に燃える海を見ながらサン・ミゲルのビールで改めて乾杯。

という具合にマヨルカ島の1週間はこれまでのどの旅行よりも五感の全てが満足するほど充実していた。さすがにもう6年ほど前のことなので細部まで思い出すことは難しいが、写真を見るたびに太陽の熱さ、海の碧さを思い出す。今夏は息子を連れて家族3人の写真をカメラにおさめてもらうことにしよう。

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