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agnès b.のスプリングコートが

今から半世紀前というといくらなんでもオーバー過ぎて、四半世紀前というとショートに過ぎる、20代の大学生の頃、agnès b.のスプリングコートが欲しかった。

カラーはライトネイビー。

雑誌に掲載されていた写真の印象は抑えた感じであったにもかかわらず、どこまでも輝いて見えた。眩しかった。恐ろしいほどに。

あの頃の自分にとっては、大金と呼べる金額であったが、今から冷静に考えるのならば、適正価格であると思えるほどの値頃感だ。

そのスプリングコートを着て、輝ける時間を過ごしてみたい、堪能してみたいと夢想した。

何もかもがその1枚のコートで実現するわけでもないのに、そのコートが象徴しているものに触れてみたかったのだろう。

agnès b.のスプリングコート。

何かの象徴としてのスプリングコート。

永遠に裏打ちされた一瞬としてのスプリングコート。



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