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流浪の月


少女誘拐事件の犯人と被害者が
15年後に再会する。

被害者とか加害者であるはずの二人の間にある絆は一体どう言う種類のものだったんだろう?


誘拐事件などの被害者が、犯人と長い時間を共にすることにより、犯人に過度の連帯感や好意的な感情を抱く事があるらしい

けれど文中ではそれを幾度となく否定するシーンがある
読んでいるアタシも
そんなものじゃ無ければ良いと思いながら読んでいた

けれどその反面で
「愛ではない」との説明も書かれている

『キスも抱き合う事も望まない
けれど今まで身体をつないだ誰よりも、文と一緒にいたい。
わたしと文の関係を表す適切な、世間が納得する名前はなにもない。』


そもそもの誘拐事件が起こった時に
更紗は恐怖からなのか、今までの環境のせいなのか本当に性的虐待をしていた
「犯人が従兄弟である」と言う事を言葉に出来なかった。
その一つの沈黙が
文を世間的に本当の誘拐犯にしてしまう

なぜ言わない?と
読んでいると本当にやきもきした部分で、
好きな事を口にして来たタイプ
なんなら考えずに発言してしまった後で途轍もない後悔に襲われるタイプのアタシには理解出来ない感覚だった

けれどそれが更紗で
どうしてそう言う人間になるしかなったのかは
読み進めると悲しいくらい伝わってくる

そんな更紗が
本当の気持ち
わがまま
素の自分を唯一出せる相手が他の誰でもない
世界にたった一人、文だけだった

それは「愛」で良いんじゃないかなぁ

同じように
文にとっての更紗は
一番手に入れたかった「自由」を象徴し
唯一、文自身を解放させてくれる人だった
文が憧れたものは「自由」だったから
何も望まず更紗を自分のものにしたいと言う気持ちがなく
思い続ける事が出来たのかな?

やっぱ「愛」じゃん


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