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ひと 小野寺史宣 読書感想文

静かな孤独

父を亡くし、母をなくす。
お金もなく。ひとり。
そんな二十歳の青年の日常。

順番に起こる悲しい出来事。
けれど主人公「柏木聖輔」は受け入れていく。
たんたんと。
そうするしかなくて。
淡々と。

と。多めに読点を入れて気づく
この本の文体、独特
ものすごく読点が多い。
でもその読点が聖輔の淡々さをものすごく表現してる。

実際あたしもそうなってしまうのかもしれない
本当は泣き叫んで誰かに助けを求めたい
そう思っても思いつけない
多分聖輔も人に頼るのが苦手なひと
だから思い浮かぶこともない
だからって近くに居てる誰かを信頼していない訳じゃない
むしろ好き
だけど頼り方が思いつかない

1秒は誰にでも1秒で
1日は誰にでも1日
右足を出せば次は左足を出すし
そしたら体は前に進む
そうやって日常はすぎていって
365日繰り返せば一年を終える

そんな中で出会う人達
劇的に優しいとか
劇的に冷たいとかではなく
当たり前に優しく
当たり前に厳しい人
心が軽くなる日もあれば
少し呼吸するのが苦しくなる日もあって
そんな日常のお話

でもそんな聖輔が
静かな恋に落ちる瞬間
淡々をしてるからこそ
きゅん。

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