『共喰い』 人生の中間決算 START IT AGAIN 香織の場合
「今日も飲みすぎたわ、、、❤️」
明日は仕事で6時に起きないといけないのに、2人のオジサンと寿司から焼肉のダブルヘッダーをこなして、仕事終わりから寝るまでの時間を無理矢理埋めるといういつものルーティーンを終え、タクシーに乗り込む。🚕
オジサンからもらったタクシー代の余りで自宅タワマン一階のコンビニで翌朝用のサンドイッチを買うのもいつものルーティン。🥪
オジサン達と肉体関係はないので、パパ活とは違うと思ってはいるが、アラフォー港区女子活である事は否めない。🧔🏽♂️
ただ女としての魅力が、寿司と焼肉とタクシー代を生み出すことについては、年齢的に健闘しているほうだと思っている。🍽
深夜1時だというのに意識高い系VC社長風のいけすかないオトコとそのまわりに群がる虫達で賑わっているエントランスホールを抜け、優越感とともに高層階用のエレベーターに乗り込む。🌃
「37歳が37階を押します〜」と声にだして階数ボタンを押す。
来年は引っ越ししないと、このルーティーンができなくなるのが痛いところだ。🛗
玄関を開けて服を脱ぎ捨て、東京タワーが見えるリビングで昨日の飲みかけのワインを先に帰ってきているウサギ君と飲み始める。🍷
ペットとしてこの部屋の出入りを許しているひとまわり歳下の居酒屋の店長をしているウサギ君。🐰
食物連鎖の底辺にいるウサギは捕食されやすい分、性欲が強いところは満足している。
😜
エンゲル係数が高く、自分が燃費の悪いアメ車というか、管理費の高いマンションのようなオンナだという自覚はあるので、ウサギ君と結婚という将来のイメージはできない。
大妻女子短大を卒業して17年、染み付いた高コスト体質の生活習慣は簡単にはかえられない。🎓
美人、巨乳ともてはやされ、豊かな人生を送る近道を追求してきた香織からしたら普通レベルの生活や質素な生活など火星での生活と同じくらいイメージできない。👾
2年前、香織は確変大当たりを引き当てた。
歳はひとまわり上のバツイチ子持ちのパイプカット済みの薄毛の男だったが、親が不動産事業で一山当てた会社の二代目社長で、自宅近所の六本木ヒルズに買い物にいくにも運転手付きの車ででかけるプリティーウーマンのような生活を勝ち取った。🤩
ただカッとしやすい香織と酒に溺れる二代目社長は世の中の定説通り一年たたずに離婚となり、東京タワーの見える時価2億はくだらない37階の部屋は、慰謝料代わりの戦利品として奪取した。
結果として、香織にとってはある意味ムダな結婚ではなかった。💍
仕事として時給換算したらコスパはかなりいい。👩💻
離婚はそれなりなに悲しかったが、もしかしたら将来にわたって得られたはずのお金を失った悔しさという感情と悲しい感情の区別がつかなくなっていただけといえなくもない。😭
パチンコで確変に入れば、大当たりが続くが、実生活ではなかなか難しい。🎯
20歳から17年間、女として旬の時間をたっぷり使ってようやく大当たりを引き当てたわけで、それを考えると、37歳から次の大当たりを引くというのはなかなか至難の技だというのは自覚している。😓
ふと考えてみると、今の自分の歳は自分が中学受験で、親子で奮闘していたときの母と同じだ。🤰
横浜のはずれの旭区で育った香織は、教育熱心な母親の方針で中学から捜真女学校に入り、その後大妻女子短大に推薦でもぐりこむ事に成功し、なんとか港区で勝負できる学歴に仕上げてもらったことには感謝している。🙏
余命宣告受けて、ヤケになった人のように連日アルコールと焼肉と寿司三昧の毎日を過ごしてる37歳の自分とその年齢の時の母親。
時代の違いだけでは説明がつかない生活の違い。🍖
どちらが正しくてどっちが幸せかなんて比べる事はできないし、いまさら軌道修正なんてできないから、生まれてから死ねまで止まらずに泳ぎ続けるマグロと同じように生きるしかないと思っている。🐟
サンドイッチを食べて眠たい目をこすりながら朝の六本木のゴミだらけの歩道をすすみオフィスに到着。🥱
まだ昨夜の余韻が体中に残っていて股にはウサギの何かがはさまっているような感覚がある。🦵
オフィスに着くと人事課長から呼び出された。💼
雇用契約が今年の6月で終了で延長はないとの通告だった。
覚悟はしていたがいざ仕事がなくなると不安になると思ったが逆にスッキリした気分になった。😇
自分でも不思議だが次の仕事が決まってなくても自分1人くらいなんとかなるという根拠のない自信がある。😤
社交的な性格と見た目と人脈を生かして、飲食店を始めるのもよし、プロ彼女になるのもよし、後妻業もむいてるかもとどこまでもポジティブに考えるのが自分のストロングポイントだと思っている。💪
舞台を世界に移すために少し前から海外留学も考えている。🌎
この先もずっとこの高コスト生活が続けられるとは思ってはいないが、自分にあぶく銭を使ってくれる自分より歳上のオヤジはまだこの歳になっても意外にいて、さらに世界に目をむければ35億のオトコ達が自分を待っている。
ただ先日、腰痛を治そうと飲んだ薬が体にあわなかったようでアナフィラキシーで倒れたときは少し焦った。
自分が孤独死する可能性をリアルにイメージし、一瞬老後の自分を考えた。👵
老後自分が施設に入ったら、面会に来てくれる人はいるのか、、、
パジャマを届けに来てくれる人はいるのか、、、
老後の話といえば、セコイ家族持ちのオヤジほど、自分のような堅実な生活が正義だとマウントをとってきて、老後の事を真剣に考えろって説教じみた事を言ってくることが多く辟易する。👴
そういうオヤジに限って会計のときに意味不明な2,000円を請求してきたり、10,000円札をわざわざコンビニでお金をくずして「タクシー代、これで足りるでしょ?」と5,000円渡してきたり。💰
そんなオヤジは飲んだ後、家に帰って鬼嫁に浮気を疑われ、それを誤魔化すために強引に夜のお勤めをしてるに決まってる。👹
飲み過ぎて、鬼嫁の足を広げた瞬間にリバースすればいいのに。🦶
仕事を終えた夕方6時、六本木通りを運転手付きの車が走っているのを横目で見て舌打ちし、地下鉄入口の階段を降りていく。
帰宅ラッシュの日比谷線で満員電車に揉まれながら、恵比寿の『鮨結う翼』で太ったオヤジと合流し、泳ぎ続けないと死んでしまうマグロの刺身をつまみ、共喰いだなと思いつつ香織は今日も寿司と焼肉を貪り喰っている。🍣
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