薬物の先に見える円の放物線
2023年12月7日 6:39
後頭部が床に落ち込んでいく
ボトルから水が抜けるように
頭の後ろから脳みそが渦巻いて出ていく
世界が回る
目を開くとなんとか回転が止まる
眠い
眠すぎて開けてられず目を閉じる
渦が今度は更に勢いを増す
消失点が遠のいていき
壁の奥行きが広がったかと思うと
回転しながら円の残像が伸びていく
頭に鉄棒を刺されて
ジェットコースターのように振り回される
乱気流の中を落とされるような気持ち悪さ
血液が頭に上り、膝が痛む
煙たい部屋でソファに寝転がり
立てていた膝を下ろした
体が動かせることを思い出す
喉が渇いたと思ったそばから
肺が焼けるように熱くなる
口の中の水分が干上がり
粘膜がくっつく
胃から食道、喉、口の中が痛くなる
何か飲みたいと言うと
水を持ってきてくれた
きっとこれは水道水だわ
わざわざペットボトルに入れてくれたが
これはナイル川の水だろう
ほら、ネスレの味がしない
もっと飲みたいが起き上がれない
体の中身がかき回され
振り回され、溶けて沈んでいく
体を動かすも重力に逆らうと
一気に頭が地面にめり込んでいく
「自然体でいろ」ということか
首を動かせば首の血の巡りが
逆流する違和感を出る
そうか、意識が向いたところが燃えるのか
頭でもなく痛みやすい腰でもなく
足なら耐えれるんじゃないか
足に意識を向けると
足を掴まれてグルグルと引き回される
胃の中の物が上がる
気持ち悪い
友達に抱えられてベッドに運ばれる
お姫様抱っこだ
しばらく真っ暗な部屋で
目を閉じたままベッドごと地中を駆け回る
トイレに行きたい
暗すぎて目を開けても回転が止まらない
なんとかトイレにたどり着いて
胃が空になるまでに吐いた
アラビア語の話し声がノートに刻まれて
次の言葉の勢いで次々に押しつぶされていく
「なんてことだ!」と笑い声が聞こえる
友達は僕を笑っているんだろうか
いや、これは僕の恐怖だ
笑われるのが怖いんだ
何も捨てきれてなんていない
少しずつ視界が晴れ
目の前がちゃんと見える
トンネルを抜けつつある
自分が抱える便器が見える
40になって友達の家で吐いて
自分に何を守るものがある
失うものなんてないじゃないか
なんとか立ち上がってベッドに戻る
朝、蚊に刺されまくって目が覚める
昨日の感覚を墓を掘り起こすようにペンを走らせる
もうそこには何もなくなっていた