金型メーカーの方の家に泊めていただいた思い出
ものづくり新聞編集長の伊藤です。
ものづくり新聞は製造業の方々向けにインタビュー記事を掲載しているWebメディアです。ソリューションやサービスの提供元へのインタビューはもちろん、実際に製品やサービスを導入した側へもインタビューしています。ものづくり企業に勤める皆さんにとって本当の意味で役に立つ情報を提供したいという思いで、ただ情報を羅列するのではなくより具体的なイメージができる情報発信を目指しています。
15年ほど前になりますが、その当時3次元CADのサポートを担当しておりました。まだソフトウェアの品質が安定しておらず、思ったような形状が作れなかったり、エラーが頻発することもありました。
茨城県にある中堅金型メーカーの会社さんがその3次元CADを導入いただいていました。その会社さんにサポートに行く、ということで私と同僚の2名で派遣されました。金型用の製品モデリングを行う作業でした。製品用モデルを金型設計用に2分割する作業です。金型はキャビティ側とコア側があり、製品モデルの面はキャビティ側かコア側のどちらかに分割する必要があります。一見簡単そうな作業ですが、当時の3次元CADの性能ではうまくいったりいかなかったりする難しい作業でした。
若い私はそれでも1日で終わると思っていたのですが、なかなか終わりません。ああでもないこうでもないと端末を操作しモデリングを続けましたが、なかなか終わりません。18時をすぎ、19時をすぎ、だんだん会社の方々もご帰宅されていきました。
理論的には問題ないはずなのですが、3次元曲面を2分割する作業が当時の3次元CADの能力では機能通りに動作しないのです。いろんな方法を試しながら試行錯誤するしかありません。今から思えば先の見えないチャレンジをお客様の先で試している感じだったと思います
そうして作業がなんとか終わったのが深夜22時。心の中ではやったー!という声が出ていましたが、もう電車はありません。東京の自宅に帰ることはできない時間になってしまいました。
そうしましたら、その金型メーカーの部長さんが工場に残っておられました。その部長さんがおもむろに「君たち、うちに泊まりなさい」と。
私たちは家に帰れないことはわかっていましたので、お言葉に甘えることにしました。車で部長さんのご自宅まで送っていただくと、晩御飯が用意されていました。さらに、座敷にはお布団が用意されていました。なんということでしょう。私たちは出入りの業者という立ち位置だと思うのですが、そんな私たちに晩御飯とお布団まで・・・・・しかも深夜23時過ぎに・・・・・
今から思えば、ご家族の方々にも大変なご迷惑をおかけしたんだろうと思います。
ただ、ひたすら一生懸命、なんとかしよう、3次元CADでなんとか成功させようとだけは思っていました。それが深夜とはいえ一応なんとかできたということに若い私は満足していました。そしてそんな私たちを部長さんも見かねて泊めていただいたんだと思います。
このときの思い出は私の中に教訓となっています。
・なんとかしようという思いは大事だ
・しかし周りの方々やご家族にまで迷惑をかけてはいけない
・一方で、そういう強い思いがあれば、支えてくれる方もいらっしゃる。諦めないでいることも大切
・22時とかになる前に、立ち止まってご相談すればよかった
あれから長い時間が経過しましたが、部長さんお元気でしょうか?おそらく私たちのことはご記憶にないと思うのですが、ご記憶でしたらご挨拶させていただきたいです。はい、インタビューもさせていただきたいです。
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