PUBGm(競技シーン)におけるゲームモデルを設定する事の重要性

「ゲームモデル」という言葉を聞いた事があるでしょうか?(サッカーに興味がある方であればこの言葉を一度でも聞いた事がある人も居るかもしれません)
ゲームモデルに関して簡潔に説明すると
「自分達がやりたいゲームコンセプトをゲームの構成要素毎に分けてそれぞれでゲームコンセプトを実行する為に必要な原則を設ける事」です。
では競技シーンにゲームモデルを設定する事によってどんなメリットがあるのか書いていきます。

PUBGm競技シーンでゲームモデルを設定するメリット

ゲームモデルを設定するメリットとして
I  ゲームモデルを設定する事により事前に試合中のメンバーの考えの方向性を一致させる事が出来る。
Ⅱ ゲームモデルの設定をする事により、方向性が一致する事からそれぞれの判断の正解に共通認識が生まれる為、コミュニケーションエラーが減る。
Ⅲ ゲームモデルを選手個人が無意識下まで落とし込む事により無駄な思考過程を減らし、ゲームモデルを設定していない場合に比べて素早く判断が出来る。
Ⅳ ミスした場面から得られる反省点を曖昧にせず、その課題点を具体的に次にどういった場面で応用し活かす事が出来るかを明確にする。

といった事が挙げられると思います。
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに関してのメリットは何となくイメージが着くかもしれませんがⅣのメリットに関してはイメージがし辛いと思うので実際にゲームモデルを設定し、ゲームモデルをどのように反省に活用するのか以下に自分の考えを例にして実践していきます。

ゲームモデルの設定と活用例

ゲームモデルを反省会で活用するにはまずは「ゲームコンセプト→ゲーム要素→原則」と体系化して考えたゲームモデルを設定する必要があります。

ゲームコンセプト

まずはチームにとってどのようなゲームコンセプトを作成するかです。
ここのゲームコンセプトの設定は「選手それぞれがいかなる局面においてもゲームコンセプトを理想として判断するもの」をゲームコンセプトとして設定して下さい。
自分であれば
「不要なリスクを負わず取れるポイントの期待値が最も高い動きをする。」
といったゲームコンセプトをここでは設定するとします。
(大会の最終戦などで有れば「〇〇チームよりポイントを多く取り○位をキープする」、「極端なメタに効果的なゲームコンセプト」など状況によって異なるゲームコンセプトを建てる必要がある為、PUBGmにおけるゲームコンセプトにおいて一概にこれが正しいゲームコンセプトというものはないと思います。)

ゲーム構成要素

PUBGm(競技シーン)のゲーム要素としては
①序盤(1〜3フェーズ)、②中盤(4、5フェーズ)、③終盤(6フェーズ以降)という3つの時間的構成要素に加え、それぞれの時間的要素におけるポジションに対する攻め、守りという2つの盤面的構成要素があると考えています。

(ゲームモデルが用いられるサッカーではゲーム要素として大きく「攻め」「守り」「攻め→守り」「守り→攻め」と大きく4つ)

ここでそれぞれのゲーム構成要素について上記のゲームコンセプトを基に重要な事を順に考えていきます。
①の構成要素では
ポイントを取れる期待値が低い事が多い事から(有利なファイトの作りにくさや漁夫のリスク)②、③の要素でより有利に動く為に人数、車両、物資を欠かない事。(①の構成要素の守り)
1〜3フェーズのポジション取りで上記のリスクを負わないように情報を多く取り②、③の構成要素でより有利な状況を作る事。(①の構成要素の攻め)

②の構成要素では
壊滅チームが必ず出てくるフェーズである事から
安全地帯と自分達のポジションの位置関係から出来る盤面コントロールを活用して情報やポジションをより多く取ったり漁夫を行い③の構成要素に有利に繋げる事。(②の構成要素の攻め)
自分達のポジションを守る為に盤面コントロールを用いながらプレッシャーを掛けて敵チームを流したり、安全なクロージングを行う事。キルポイント、順位ポイントを稼ぐ事。(②の構成要素の守り)
③の構成要素では
②と非常に近しい部分がありますが6フェーズ以降の安全地帯面積的によりポイントに直結するフェーズである為
ポイントを取る為のフォーメーションや陣形設定(③の構成要素の攻め)
漁夫の形であったり敵のアクションに対してのリスクマネージメント(③の構成要素の守り)

といったゲーム構成要素を考えていきます。

原則

次に各ゲーム構成要素における重要な点を満たす為に必要な具体的な原則を考えていきます。

①のゲーム構成要素の重要な点を満たす為に必要な原則として
急な接敵トラブルでの人数欠けを防ぐ為にファーム後の移動の車間距離を150m以内に収め、ムーブ中の視野を360°取る為に3台目、4台目は前方車と別の方角を見る事。(①のゲーム構成要素の守り)
初動被りがなかった場合ファームより先に車両の確保を優先する事。
ファームを終える前に物資量のコミュニケーションをする事。
(①のゲーム構成要素を満たす為の原則は沢山ありますが書いていたらキリがないので今回は割愛します。)
②のゲーム構成要素の重要な点を満たす為に必要な原則としては
安置が切り替わってすぐにチームとしての動きのプランの意思統一(最初から1つの動きに縛る訳ではなく第1候補、第2候補…とスムーズに動く為のプラン立て)(②のゲーム構成要素の攻守)
相手チームとの距離や、人数を元にしたクロージングの役割分担(②のゲーム構成要素の守り)

(盤面コントロールの原則はこちら)

③のゲーム構成要素の重要な点を満たす為に必要な原則としては②と被る部分も多いですが、違う点を書くとすると
安全地帯内の密集度が高まる事によりタスクが増える為、タスクが多い中でスムーズなコミュニケーションを取る為に報告の原則を作る事。(ex:タスクが多い場面では敵位置の報告→詰めるか引くか投げ物使用等の自分の動きの報告といった手順で報告する事を原則とするなど)
などが挙げられると思います。

またどの要素にも共通する原則として
有利局面が作れないチームインファイトは可能な限り行わない(有利局面におけるチームファイトの原則を書いた記事はこちら)

ここまでで自分達がやりたいゲームコンセプトを基にゲーム構成要素毎に分けてそれぞれでコンセプトを実行する為に必要な原則を設けたゲームモデルを設定する事が出来ました。

ゲームモデルを活用した反省の具体例

次に上で書いたゲームコンセプト→ゲーム構成要素→原則と体系化されたゲームモデルを基にどういった反省を行うか下の具体例を用いながら書いていきます。

EX:5フェーズ目に安全地帯内にポジションを取っていて中遠距離のクロージングをする場面で1人がハードピークをして見ていた視野外から1ノックを取られた事を契機に突貫されチームが壊滅させられた


このEXにおいて出た反省点を「ハードピークをせず射線管理を意識する」という具体性のない曖昧な反省で終わらせている人も多いのではないでしょうか。

しかしこの場面でゲームモデルを活用した反省をするならば

ハードピークを何故行ったのか
      ↓
クロージングをする為にプレッシャーを掛ける必要があった為(②の守り原則)
      ↓
②の守り原則を行うのは安全なクロージングを行う為(②のゲーム構成要素の守りにおいて重要な点)
(思考放棄して意味なくハードピークしている場合を除く)

と逆算して考える事が出来ます。
この逆算から考えると単にハードピークせず射線管理を意識するという反省でなく、中盤フェーズでハードピークする射線管理で壊滅するリスクを取らずに安全なクロージングを行うにはどういった原則が出来ていないからか(or作るべきか)といった各ゲーム構成要素におけるゲームコンセプトを実行する為に必要な反省を行う方がより活かしやすい反省点を挙げる事が出来るようになると思います。
さてそうなると中盤フェーズの守りでハードピークする射線管理で壊滅するリスクを取らずに安全なクロージングを行うという反省点が挙げられたならば
・クロージングの際のピークは出来る限り1箇所だけでなく複数箇所からピークし撃ち返しでダウンを取られるリスクを減らす。
・敵の車両のタイヤが割れるタイミングがあるならば積極的に割っておく。
・クロージングの際は敵チームの人数や距離に合わせたクロージングに割く人数を決める
などなどコンセプトに合わせた次に活かせる対応策を挙げるより効果的な反省が行えるでしょう。

おわりと補足

今回は普段の戦術系のnoteとは一味違った内容について書きました。
チームのムーブの意図が分からないという選手が居るチーム、選手の判断の方向性がチームとして一致しないチーム、具体的に次に活かす反省会が出来ていないチームなどは是非試してみると良いのではないでしょうか。
また補足として今回のメリットに書いたゲームモデルを無意識下に落としこむにはどうすれば良いのかという事を思われる方も多いと思います。
そこに関しては「戦術的ピリオダイゼーション」というゲームモデルと期分け法を融合したトレーニングを積む事でゲームモデルを無意識下に落とし込む事が出来ると考えています。(簡潔に「戦術的ピリオダイゼーション」について書きましたがしっかり書くとnoteの量が凄い事になってしまう為、今回は書きませんでした。)
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