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【1部 エピローグ➡2部 序章 まとめ読み】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】

【創作大賞2024参加作品】

恋愛小説部門

2部構成。全13章。13 万文字。
掲載は【連載』の各章が終わるタイミング。完結:7月20日頃を予定。
この【まとめ読み記事】は書式を一般小説に合わせています。

【本編連載】は小説の内容は一緒ですが、以下の2点が異なります。
 ・web小説にあわせ、段落や改行を多くとっています
 ・キャラクタービジュアルがあります

【1部 エピローグ➡2部 序章 まとめ読み】約3000文字

【1部  エピローグ】

西暦3229年8月2日 移民最後の地球出発の日


「ねえ、ノボー。黒色だった空がきれいな紺色に変わっていくわ」
「うん、そろそろ地球を離れる時が近づいているんだ」
「……つまり、私が止まるときが近づいているのね」
「……ねぇS・H・E」
「なに?」
「僕から、お願いがあるんだ」
「奇遇ね、私もよ」
「あのワルツを一緒に踊って欲しいんだ」
「もちろん」

《2つの足音が「コツコツコツ」と甲板に響いた。
誰もいない自然エリアに停泊してある大気圏内用シップ(※)。
世界には、その足音しか存在しないかのように静かだった。
蒼い空は少しずつ白んでいった。
夜明けはそこまで来ていた。
その静謐の中、2人は音楽が無いままに踊る。
2人の頭の中にはあのメロディが流れているのだろう》

「ありがとうS・H・E」
「こちらこそ。ねぇ、私からもお願いがあるの」
「うん」
「私の停止破棄は所有者であるあなたが行うべきだわ。時間を考えれば、今実行すべきよ」
「そのことなんだけど、考えがあるんだ」
「……なに?」
「僕は僕なりに、いろいろ調べながら考えていたんだ。コシーロ教授を通じて政府とも話し合った。どうも、政府は移動後には地球との交信をシャットアウトしたいようで、新しい星にたどり着いてしまえば、地球は完全に切り離された状態になるみたいなんだ。つまり、移民が完了すれば地球で何が起こっているか誰にもわからなくなる。そこには重大な何かがあると思うんだ。ねえ、シー。それについて、君は何か知らないかな? その理由が君にあるような気もするんだ?」
「私はそれを知っている。でもそれは、今は言うべきことではないことよ。いつかわかるかもしれないし、永遠に蓋がされるかもしれない。それでもそれは、今、私の口から話すべきことではないの」
「うん、分かった。君がそう言うのなら。それは、いつか時がくればわかることなんだね」
「ええ、いつかあなたが受け止めるべきことよ」
「ちゃんと。頭に入れておくよ」


「ねえ、シー……僕たち2人だけで生きていかないか?」
「え?」
「前に、僕に美しいものを見て衝撃を覚えたことがないかって聞いた事を覚えている?」
「知ってのとおり、私は喋ったことも見たことも聞いたことも全て記録し、そのまま保存するの。あの時の部屋の様子、温度、あなたの優しい微笑み、全て覚えているわ」
「僕が見つけた完璧な美、それは君なんだ。君の純粋な思考は美しい。君が自分を探し続けるその姿を、僕は何よりも美しいと思っている。君は僕にとっての美であり、知であり、喜びの全てなんだ。だから最後の時まで共にあって欲しいんだ」
「嬉しいわ、私には感情はわからないけれどもこれが喜びと言うことをよく理解している。でも、ダメよ。あなたは移民をしないと」
「移民はするよ。ちゃんと。そうじゃないと、この作戦は成功しない。大丈夫、何とかして戻るよ、それはこれから考える。でも1年半、3230年内に絶対に戻ってくる。だから君には準備を進めて欲しいんだ」
「準備?」
「完全停止のスタートさえ押してしまえば、政府の目を欺くことができる。そして完全停止プログラムが完了する前に、自らを3230年1月に再作動するように設定してほしい。その時、全ての記憶をもったまま君は目を覚ます。目を覚ましたら僕がリストアップしておいたものの管理をしてほしいんだ。それは戻ってきてから2人が生きていく上で必要となるものだ。僕が戻ってきたらそれらをすべて起動させるから、それまで待っててほしいんだ」
「あなたがみんなを起こすのね。なんだか朝日みたいだわ。私は夜明けに目覚めて、あなたを待つのね」
「何よりも美しいフィナーレだと思うよ」
「……うん、嬉しい。でも駄目」
「シー?」
「駄目よ、ノボー。私たちのフィナーレは太陽に焼き尽くされる時になるわ」
「そのことなんだけど。なんだかわからないけど、新しいアイデアが浮かぶ気がしてきているんだ。大丈夫、地球滅亡のこともなんとかするよ」
「……なんとかする?」
「うん、僕は。約束できるんだ」
「どうやって?」
「うん、それはまだわからない。でも大丈夫だよ。僕はちゃんとシーの言いう通り『時空短縮法』を発見した。ほら、前に言ったじゃないか。僕の『ひらめき』はシーを凌駕するって。だから大丈夫、信じて」
「あなたの中には無限の可能性があったわ。……そうね、あなたがそう思うのなら、きっとなんとかなるのね。わかった。あなたのことは全て信じるわ」
「ありがとう、シー。戻ってきたら、また一緒にワルツを踊ろう」
「ええ、もちろんよ。あなたを待ちながら、私も何度も踊るわ。夜明けから朝まで、何度も何度でも」

《風は優しく2人をなで
やがて空には光が溢れだした
太陽が力強く、太古の昔から何も変わらないように
今日も、ゆっくりと大地を照らしていった》

[1部 終]

小説内曲『Dance from daybreak to morning』
作詞・作曲:PJ

Dance 始まり求める、君たちには
Dance 終わりを求める、僕たちにも
Dance とても美しい物語さ
Dance ずっと前から決まってたこと

今日を超え 明日を超え
星を超え 時を超え
僕たちがたどり着いたのは、どこ?

過去を捨て 昨日捨て
星を捨て 時を超え
君たちが見つけ出したのは、なに?         

距離を超え 時間を変えて

Dance 始まり求める、君たちには
Dance 終わりを求める、僕たちにも
Dance とても美しいフィナーレなのさ
Dance ずっと前から決まってたこと

誰もいない地球(ほし)に1人
君の帰り待つ
鋼の身体に 優しさを教えてくれて
今日もまぶしいね 朝だね

※動画にはキャラクターイメージ画像が含まれます。

[第2部]

【序文】

《始まりの鐘を聴き、紡ぎ上げられた、Ⅾr.タカバタケと『彼女』の惑星移民」
 それは美しいフィナーレを迎えた。
 ……果たしてそうだろうか?
 彼らの物語はここで終わってしまったのか?
 否。
 物語はまだ、その本当の姿を見せてはいない。
 そこに隠された黒い闇は、まだその姿をさらしてはいない。
 人々の物語は、歴史の上に積み上げられている。

 運命の子供たちよ。
 時を前に動かせ。
 それこそが我々の使命だ。
 進化すること。
 それが、生きとし生けるものすべてに与えられた、宇宙からの祈りだ。
 地球の子らよ。
 1000年間止まった時間を今こそ前に動かすのだ。

 物語は、まだ始まったばかりだ。
 新しい未来を作れ。
 星の声を聞け。
 我々はまだ、終わりの鐘を聴いていないのだから……》


👇【6章 まとめ読み】6月14日 11:00投稿


【登場人物】

ノボー・タカバタケ

ワープ理論『時空短縮法』を発見し人類を救った天才科学者。

S.H.E(シー)

【使徒】として地球の意志を聞いたスーパーAI。

アンジョー・スナー

ノボー・タカバタケのかつての研究仲間。10年来の付き合い。

ヤマバ・ムラ

世界企業リコウ社から来た、現場引き抜きの研究員。

コシーロ・ガート

研究アカデミー世界最高峰と言われるAC.TOKYO筆頭教授。

ユミ・クラ

コシーロ研究室助教授。コシーロとは婚姻関係。

【地球-エリンセ 年表】

【語句解説】

(小説を読む中で必要な部分は、本文に記載してあります)

『地球』
Dr.タカバタケの世界は、2024年現在の私たちの時代の延長線上にある。
ヒトの身体的な進化などはなく、現在と同じ生体。一部障害を持った人が、その機能を補うために身体の機械化をおこなっているが、全世界の共通認識とまた世界条約として人体の機械化はタブー・禁止されている。クローン・人体錬成なども同様に、大きなタブーであり重い罪とされている。
変わったところがあるとしたら、平均身長が5~10センチほど小さくなった程度。

『惑星エリンセ (Elimssehs
3229年に全ての人類が、惑星移民をした移民先。
この星の1日は48時間。サイズは地球の2.5倍。
恒星は1つ、衛星は4つ。
奇跡的に星の質量や惑星・衛星の影響等で重力はほぼ地球と同等になっていた。
 環境は地球に酷似。ただ、地軸にほぼズレがないので四季はなく、エリアによって生態系が分布している。 
 気候は(エリアによるが)住居するには穏やかこの上なく、そのうえで知的生物は存在していない。
 新星1年は西暦3229年と3230年を指す。公転が2倍なので、地球の2年分。
最大の衛星:青月(あおつき)-ブルースターと恒星:望日(ぼうび)-ホープスターが24時間で入れ替わる(日照時間は12時間)。
青月は大変明るいので、人は24時間の生活サイクルを崩すことなくおくることができる。
青月の日を『青日(せいじつ)』、望日の日を『白日(はくじつ)』と呼ぶ。

『時空短縮法』
 ノボー・タカバタケが発見したワープ理論

『時空短縮装置』
惑星間移動を可能にした装置

『ネオジャパン』
2024年現在の日本とほぼ同じ領土である。国境間にパスポートが不要になったので、様々な国の人が行き来している。首都はTOKYO

『チップ(脳内チップ)』
全人類に義務づけられた、脳内に入れる機械部品。記憶の拡張や、翻訳など様々な機能がある。また、国家管理のための個人情報が収めれれている。

『クロックカレンダー』
脳内に入れられたチップにより、日にち・時間が把握できる。また、アラーム機能など様々な機能がついている。国家観を超える連絡の時に、時差の把握にも便利。

『太陽膨張』
かつて、2000年代には、太陽膨張による地球上の生物の滅亡は5億年以上先だと予想されていた、しかし3000年に入る頃には、太陽は狂ったように膨張をはじめ、3300年には人類が生存していくのが難しいと予想されている。

『AC.(アカデミア)』
各所にある研究機関。現在の大学の延長線上だが、教育よりも研究を中心に置かなっている。学位研究員としての期間は10年以内だが、状況によって延長が可能。

『人類忠心』
男女の恋愛が希薄になり、出生率が下がる2200年の少し前ごろから、人類は戦争・テロを行わなくなった(最後のテロは2189年と記録されている)。また、凶悪犯罪が急速に減少していった。同時に法整備、移動技術の進歩により、交通・移動事故による死者はほとんどいなくなった。また、医療体制も行き届き。人の死因は老衰と自己終了(尊厳死)の2つが中心となっていた。
つまり、寿命まで人は死ななくなっていた(3200年で平均寿命は160歳 ※自己終了含む)。
その一方で体力の少ない幼少期の死亡率が一定数ある事は、この時代においても無くなることのない悲劇の1つであった。
簡単に生まれなくなり簡単に死ななくなると、その1つ1つの命の価値が上がる。人が人として生き、人として死ぬ。そのことに、全人類が共通して敬意を払う。そういうことが社会通念上、当たり前の認識になっていた。

『人と自然』
人は、居住区と工場区(農業・酪農含・漁業含む)、自然区(開放区と非解放区=国定区)を分け、人の手の届く範囲とそうでないエリアを分けて生きていた。

『チルドレン(共通育成教育施設)』
出生~20歳までは一貫して、各国が管理し育成・教育をする。
施設で集団生活が原則となり親との面会は可能であったが、一緒に住むことは禁止された。
世界の合計特殊出生率(以後、出生率)は2未満であり、子は宝。相互監視と国の指導を導入し、ネグレクトや犯罪などから子供を守るよう、徹底的な管理体制が敷かれた。

『ウインドスクリーン』
モニターであり、光や熱の遮断できる窓。
透過したり、空気を通したりすることも可能。

『テキスト技術』
脳に入れられたチップを通じて情報を交換する方法。
視覚的には空中に情報が浮いているように、感覚的には脳裏に直接流れ込んでくるように感じる。
眼鏡型の外部機器で補いことも可能。
脳内チップにはキーロック機能があり、解除区画の情報のやり取りしかできないように、法令上もシステム上もしっかりとしたセキュリティの中で作動している。

『S・W・I・M (Shallow Well Interchange Meeting:表意交換会議)』
テキスト同様、脳内チップを用いて人員間でネットワークをつなぐ方法だが、テキストに比べると、より深い意識の階層に入るため、リスク分配のためオフラインでの使用は禁じられている。(S・W・I・Mにおける、オフラインの禁止)
一対一の議論に用いられることが多い。複数名での使用も可能であるが、発信者が特定しにくくなる、外部に対する意識が切り離されるので、安全な環境で行うことが義務付けられている。(S・W・I・Mにおける、外的安全の確保)
また、没頭しすぎて飲食の時間を忘れるので、一定時間がたつとオンラインアラームが鳴り、さらに過ぎると、オンラインポリスより警告が来る。(S・W・I・Mにおける、使用時間の順守)

『シップ』
地上、水上、空中を移動できる船。
自動運転のように決められた領域内を移動するだけではなく、様々なところに移動が可能。
ただし、政府の免除を必要とし、公安による管理下に置かれての航行となる。
自動運転以外にも、AI補助付きの半手動による運航も可能。
国境を超える場合は、各管轄国の承認が必要。
大気圏内用と宇宙用があり、宇宙用は主要6国の承認が必要。

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