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日常垢界隈って笑

Twitterで日常垢みたいなものを作っている女達が好きだ。最初は顔が好みの女を手当り次第フォローしている格好だったが、彼女たちのツイートを見ているともっと面白いものを発見してしまった。「バレンタインに彼氏とタイタニック観に行った💗レオ様が最高すぎた🥹」この女は彼氏が隣にいるにも関わらず、レオナルド・ディカプリオの顔に見蕩れていたらしい。下品な女だ。こういう女はきっと、キャメロンが自宅を売り、スタッフが阿鼻叫喚に陥ってまで撮影したタイタニックの沈没シーンなんかには目もくれず、ラストのしょうもないシーンでボロボロ泣いているのだろう。

彼女たちは別に映画に興味などなくて、「洋画なんか観ちゃってるオシャレな自分」が大好きなんだろうと心底思う。そんなやつだから誰でも知ってるような映画を観に行き、どこから探してきたのかわからない聞いた事のないイギリスのバンドをSpotifyにダウンロードしてその実、いつもはSaucy Dogしか聴かなかったりするのだ。

「人生の指標になる本でした。本当に素敵。」彼女が紹介するわけのわからない自己啓発本の著者はTwitterでたびたび的はずれな発言をして炎上している男だった。何をしているかとわからない企業の代表取締役で、真っ白いシャツにチャコールグレーのジャケットを着て、ホワイトニングで真っ白にした歯を見せて笑っている写真がプロフィール画像だった。中身のない人間が書いた、中身のない本を、中身のない女性が見て涙する。なんだか現代の日本をそのまま写しているようだった。

彼女たちが彼氏を連れてディナーに行くお店はインスタで検索をかければ何件もヒットした。「必見!都内のお洒落な隠れ家レストラン✨」そんなふうに銘打たれた似たような投稿が画面を覆い尽くした。
「買った服をおろしました!シックで素敵な黒いワンピース❤️」その服を作っている聞いたこともないブランドを検索すると、去年にできたとかいう代官山に本店がある、髭もじゃにビーニーを被った男が社長兼デザイナーを務める100%国産シルクだとかを売りにしている店だった。

どの女のどの投稿も、突き詰めれば似たような物に行き着く。みんな自分だけが変わり者にならないように足並みを揃えながら、それでも個性を出そうとしているおかしな空間だった。

「私の書いた小説が、劇の台本になるそうです😭」中身のない女第何号かが、酒とタバコとクズ彼氏とセックスしか出てこない紙クズみたいな小説を書いている。顔がいいからどこかの劇作家の七光りで、大学の劇団サークル崩れの大根役者の寄せ集めに演じてもらえるそうだ。よかったね。

小さな顔。大きな瞳。高い鼻。小さくて血色の良い唇。昔から可愛くてチヤホヤされてきた女の内面性や自己主張といったものは、スポンジがカラカラになるように周りに吸われていき、外面だけがキラキラ光り輝く素晴らしい女の子になりました。自分がゴミクズみたいに男に抱かれた経験すらも、美談になってしまう、そんな彼女たちに乾杯。

劇作家の中身のない女第何号は今年、創価大学を卒業して大阪の地元に帰る。知的でシックな女性像を演じる彼女は、最後まで自分が創価大生なのを言わなかった。
「今やるべきことにしっかり向き合いたいし、その努力を怠らずに最後まで続けることでいつか今の私が報われる、気がする。」彼女の周りにいる男たちからしか褒めしだかれなかったポエムを残して、彼女は地元企業に就職することになった。
外面ばかり気にして個性を失った彼女の、さらに外面を磨く努力は、何に対しての報いだろうか。彼女は地元できっと、東京帰りのカリスマ美人として崇拝され、ブクブクに膨れ上がった承認欲求をそれなりに満たしながら、老いて死んでいくのだろう。

チャップリンは「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」といった。彼女たちはまるきり逆だろう。周りの人間に褒めちぎられ、幸せそうな彼女たちであるが、遠くから眺めれば、何者にもなれなかった社会の一員でしかない。
悲劇を悲劇と知らず、生きていけるのはその美しい顔を持って生まれた彼女たちの特権なのかもしれない。

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